日本三大車窓の姨捨へ! 酔っぱライターの信州ローカル線酒呑み旅 甲信越

日本三大車窓の姨捨へ!酔っぱライターの信州ローカル線酒呑み旅 

2017.07.25 甲信越長野
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ローカル線は地酒と相性抜群!のんびり進む列車に乗って味わうお酒は格別です。今回は、日本三大車窓として有名な篠ノ井(しののい)線姨捨(おばすて)駅を中心に、信州の地酒を堪能してきました。長野県は新潟県に次いで酒蔵が多い酒どころ。きっとおいしいお酒に出会えるはず。いざ、出発進行!

長野駅MIDORI内で立ち飲み

北陸新幹線でJR東京駅から一路長野へ。
JR長野駅直結の駅ビルMIDORIの中には、「信州くらうど」という地酒ショップがあり、立ち飲みスペースが併設されています。
朝9時からオープンしているので、列車待ちの空き時間に気軽に立ち寄れ、週末は約150組が訪れる人気スポットです。

地酒ショップ「くらうど」

飲めるのは、長野県の地ビール、地ワイン、地酒。
さっそく夏の生酒セットをオーダーしてみました。
木曽路」の特別純米生酒、「七笑」の吟醸生原酒・爽笑、「勢正宗」の純米生原酒です。
木曽郡にある「木曽路」は木曽渓谷の奥にひっそりとたたずむ女性蔵元の蔵。同じく木曽郡、木曽川沿いにある「七笑」は、特に水の良いことで知られます。中野市の「勢正宗」はもち米四段仕込みで醸され、もち米の柔らかい旨味が特徴です。

夏の生酒セット

「木曽路」はしっかりしているので、ソーダ割りにしてもよさそう。
「七笑」はスッキリとして香り良し。
「勢正宗」は甘みがありコッテリ。おつまみの浸し豆も絶品です。

日本酒でテンションが上がったので、次はワイン。
塩尻市にある「井筒ワイン」のカベルネソーヴィニヨンです。
軽いタイプなので、スイスイ飲めますね。
信州産チーズの盛り合わせとピッタリです。

井筒ワイン「カベルネソーヴィニヨン」

こうして駆けつけ4杯、ガソリンを補給した私は、篠ノ井線に乗ってJR川中島駅へ。
駅からタクシーで10分ほどで、西飯田酒造店に到着しました。
江戸末期創業の造り酒屋で、日本酒の銘柄は「積善」といいます。

西飯田酒造店 外観

お酒を造っているのは、9代目蔵元の飯田一基さん。
東京農業大学で、花からお酒の酵母を分離する「花酵母」を研究し、今は杜氏として腕を振るっています。

西飯田酒造店9代目 飯田一基さん

ここの蔵のすごいところは、すべて天然の花から分離された花酵母でお酒を造っていること。
花酵母は、東京農大で開発された新しい清酒酵母で、扱っている蔵は30軒ほどありますが、
全量花酵母の蔵は全国でここだけでしょう。
いろいろ試飲しましたが、リンゴ、サクラ、ツバキ、ツツジなどが気に入りました。
特にツバキとツツジは、キレイな酸と良い香りで素晴らしかったです。
香りも味も、従来の日本酒とは違う個性的なお酒に酔いしれました。

西飯田酒造店 ラインナップ

日本三大車窓の駅、姨捨へ

再び篠ノ井線に乗り、JR姨捨駅を目指します。
列車はどんどん急勾配を登っていき、姨捨に到着するとスイッチバックします。
スイッチバックとは、急斜面で列車が前後の向きを変え、ジグザグに上り下りすることです。
昔は傾斜地ではスイッチバックが多かったのですが、列車の性能がアップした今では、なかなか見ることができません。そういう意味でも、姨捨は貴重な駅なのです。

姨捨駅 スイッチバック

列車が止まる前、「乗り降りは一番前の車両です」とアナウンスが入りますから、
慌てず今まで一番後ろだった車両に移動しましょう。
スイッチバックしていることを忘れてはいけません。
私は逆の車両に行ってしまい、扉が開かなくて右往左往しました。
皆さんも気をつけてくださいね。

姨捨の駅舎は大正時代の設計。2010年にリニューアルしたあとも、古い駅舎の面影は残してあります。

姨捨駅 駅舎

ホームには展望台があり、善光寺平が一望できます。この景色が「日本三大車窓」とされるゆえんなのです。

姨捨駅 展望台からの風景

駅を出て左方向へ歩き、2つ目の踏切を渡ると棚田の入口です。到着したときは、たくさんの観光客がいて、駅にも案内係の人がいました。そこで地図をもらい、棚田の場所がわかりましたが、基本的に姨捨は無人駅で、タクシーもいません。駅から長距離の移動をしたい場合は注意しましょう。

姨捨 棚田案内板

細い農道を下っていくと、1,500枚の棚田が広がっています。よく晴れた平日の昼過ぎだというのに、人っ子一人いません。聞こえるのは、用水路を流れるサラサラという水音だけです。この棚田を独り占め。なんという贅沢でしょう!

姨捨 棚田

棚田の向こうには善光寺平が望めます。ここは夜景もきれいで、月夜には「田毎(たごと)の月」といい、水を張った棚田ひとつひとつに映る月が美しいそうです。今度は夜に来てみたいですね〜。
このあとは姨捨駅へ戻り、篠ノ井線で約1時間のJR松本駅へ。ここで1日目は終了して、駅前のホテルに宿泊しました。

姨捨 棚田

松本の地酒、そしてそばを堪能!

2日目は松本散策。
駅からタクシーで10分ほどの岩波酒造へ行きました。

岩波酒造 外観

こちらは予約をすれば、蔵見学ができます。
蔵には、もろみを発酵させる仕込みタンクが並んでいます。「足場を上ってみますか?」と言われましたが、高所恐怖症の私は、急なハシゴと細い足場に恐れをなして、上れませんでした。蔵人さんは、こんな不安定な足場で、毎日仕込み作業をしているんですね〜。

岩波酒造 仕込みタンク

試飲した中で秀逸だったのは、無濾過の普通酒「無濾過蔵出し岩波 零ノ参式」。搾ったまま手を加えず、加熱殺菌のみ行い、低温で熟成させたお酒です。コクと旨味が凝縮した逸品で、720ml913円という低価格も魅力。オススメの一本です。

岩波酒造 ラインナップ

案内してくれた杜氏の佐田直久さんは、金融関係の仕事を辞めて、20年前にこの蔵で酒造りを始めたそうです。杜氏の仕事は「きついこともあるけど、やりがいがあって楽しい!」と佐田さん。とても気さくで、お酒談義に花が咲きました。

岩波酒造 杜氏 佐田直久さん

さて、「信州に来たら、やっぱりそばを食べなくちゃ」と、タクシーで15分ほどの「こばやし」本店へ。こちらは信州の地酒が充実している、老舗のおそば屋さんです。

こばやし 外観

お酒は長野市内の尾澤酒造場が醸す「十九」に加えて、安曇野にある「大雪渓」の大吟醸2003年ものというレアなお酒をいただきました。今から15年以上前のお酒ですよね?なかなか手に入りません!飲んでみるとさすが2003年もの、なめらかでカドがなく、驚愕の旨さです。

大雪渓の大吟醸2003年

つまみは蕗味噌、馬刺し、そして山ウドの芽の天ぷら。蕗味噌には韃靼そばの実がかかっていて香ばしい!馬刺しは熊本のニンニク醤油ではなく、生姜醤油なのが信州流。地元産の濃いくち醤油が、しっかりと馬刺しの旨味を引き出しています。山ウドの芽の天ぷらは、ちょうど山菜が終わった季節だったのですが、お店の好意で特別に出していただきました。うますぎて酒が進みます〜。

蕗味噌

馬刺し

山ウドの芽の天ぷら

最後にもりそば。本わさびを自分ですり、つゆに溶かさないで、そばに少しつけて食べます。香り、コシ、喉ごし、パーフェクトですね!

もりそば

「こばやし」から松本城までは歩いて数分。松本のシンボルを眺めつつ、旅を締めくくりました。

※紹介しているメニューは取材当時のものです。

松本城

ローカル線と絶景、そしておいしい地酒とそばのある信州。東京で疲れた身も心も、ほっこりと癒される旅でした。

掲載情報は2020年3月23日更新時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

 

今回の旅の行程

【1日目】JR東京駅→JR長野駅→信州くらうど→JR川中島駅→西飯田酒造店→JR姨捨駅→棚田→JR松本駅

【2日目】岩波酒造→こばやし→松本城→JR松本駅→JR東京駅

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この記事を書いた人

江口まゆみ

酒紀行家。1995年より「酔っぱライター」として、世界の地酒を飲み歩く旅をライフワークとし、酒飲みの視点から、酒、食、旅に関するルポやエッセイを手がける。世界中の知られざる地酒を飲み歩き、国内においても日本酒、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーなどのつくり手を訪ねる。酒を求めて旅した国は20ヶ国以上、訪ねた酒づくりの現場はのべ300カ所以上。 テレビ・ラジオ出演、新聞・雑誌連載、著書多数。 SSI認定利酒師、JCBA認定ビアテイスター、JSA認定ワインエキスパート。東京ウイスキー&スピリッツコンペティション公式審査員。

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