こんにちは! 旅ライター・フォトグラファーの伊佐知美です。これからの暮らしを考えるウェブメディア、『灯台もと暮らし』編集部員として日本各地の取材を始めて、はや4年。さまざまな地域を訪れる中で、「新潟の沼垂(ぬったり)エリアが面白い」という噂を聞いたのは、一度や二度ではありません。
沼垂は、日本酒蔵や味噌蔵、麹屋が集まる「沼垂醸(かも)す地区」や、シャッター商店街が生まれ変わって「町が発酵してきた」と称される「沼垂テラス商店街」など、近年地域復興のモデルケースとして紹介されることが多い、注目の地域。
JR東京駅からJR新潟駅は、上越新幹線で最短2時間弱と、非常に近い! さらに、新潟駅から沼垂へは、徒歩20分ほどというアクセスの良さ。
今回は、そんな「発酵」がキーワードの新潟県・沼垂に、1泊2日でお出かけします。私の地元の新潟県に取材に行けるなんて、すっごく楽しみ!
【行程】
新潟駅から歩いていくと、まず待っているのが「沼垂醸す地区」。
そこは、日本酒の酒蔵「今代司(いまよつかさ)酒造」、味噌蔵の「峰村醸造」、そして麹ドリンクが人気の「古町糀(ふるまちこうじ)製造所・蔵座敷店」などからなる、「THE・発酵地区」ともいえる場所。
今は随分と数が減ってしまったそうですが、昔は「蔵」が40以上集まる発酵エリアとして名をはせていました。「沼垂醸す地区」は、当時の面影を残す貴重な蔵群として、国内外から観光客が集まる人気スポットとなっているのです。
最初にお邪魔したのは「今代司酒造」。1767年創業の老舗で、新潟駅から徒歩15分ほどの日本酒蔵です。
無料の酒蔵見学が人気。毎日催行、7名以下は予約不要という気軽さで(※)、しかも9時~16時の1時間ごとの開催なので、旅のスケジュールに合わせて自由に参加時間をアレンジできます(団体の場合は要予約)。
※編集部注:2024年7月現在は、1名~予約制となっています
日本酒造りには寒い季節が適しているそうで、ピークは大体11月から3月末まで。私が訪れた3月末は、そろそろ今期の日本酒造りが終わりに近づいている時期でしたが、それでも蔵の中は麹や日本酒の良い香りでいっぱいで、歩くたびになんだか幸せな気持ちになりました。
40分ほどの酒蔵見学の後は、日本酒と甘酒の試飲会場へ。
造った現場を見学した後の甘酒と日本酒は、造り手の想いや背景が感じられて、格別においしく深い味わいがしました。
次に向かうは、今代司酒造から徒歩5分ほどの場所に位置する、「峰村醸造」と「古町糀製造所・蔵座敷店」。この2軒は隣り合っているので、一緒に見学できます。
今代司酒造と同じく、峰村醸造も味噌見学ツアーを催行しています。こちらの催行スケジュールは、開催日の11:00からと14:00からの1日2回。(※)
日本語ツアーですが、海外の方が参加されることも多いようで、この日はオーストラリアから遊びにきた家族が一緒でした。
※編集部注:2024年7月現在は、毎週金曜日(祝日除く)、午前11:00~の1日1回制となっています
15〜20分ほどの見学ツアーのあとは、試食ができる物販コーナーで休憩。ここでは、峰村醸造で製造・販売している「越後赤味噌」「越後白味噌」の2種類の味噌と、3種のだし「贅沢だし」「贅沢だし野菜味」「贅沢だし煮干し味」を自由に組み合わせた味噌汁を作って味わう、という試食が楽しめました。
とくに私が好きだったのは、贅沢だし野菜味に、赤味噌と白味噌の両方を混ぜた、深い味わいの味噌汁。そのおいしさは、「こんなお味噌汁が毎日自宅で飲めたら、QOL(クオリティオブライフ)爆上がりだ……!」と思わずつぶやいてしまうほど(笑)。味噌がおいしいって、幸せなんですね〜。
峰村醸造のすぐ隣の古町糀製造所・蔵座敷店では、女性に人気の麹・甘酒ドリンクやデザートがいただけます。店内は、蔵を改装した木のぬくもりが感じられる、あたたかな印象で、なんだかいつまでも座っていたくなる雰囲気。
※編集部注:「古町糀製造所・蔵座敷店」は2020年4月に閉店しました
季節の「麹ドリンク・桜(税別350円)」と、「麹アイス(税別430円)」をオーダー。ほんのりピンク色の麹ドリンク・桜は、見ているだけで明るい気分になる色合い。味わいは、飲みやすい甘酒といった感じで、ゴクゴクと飲んでしまいました。
麹アイスは、なんだか体によさそうで、もっと食べたかった〜……! 見た目もかわいいので、気分が上がります。
「沼垂醸す地区」をゆっくりと歩いていたら、日が暮れてきました。この日の最後に向かったのは、「沼垂醸す地区」から徒歩10分ほどの場所にある「沼垂テラス商店街」内の酒場「大佐渡たむら」。
地元の人はもちろん、観光客にも愛される居酒屋だそうで、まだ暗くなりきっていないうちから、店内にはお客様がいっぱい!
「どこから来たの?」「新潟は好き?」なんて声をかけてもらいながら、地ビール「沼垂ビール」と刺し盛りをいただく夜は、「最高」のひと言……!
新鮮な素材をていねいに料理してくれる大佐渡たむら。魚介の旨味に舌鼓を打ちながら、隣の人と盃を交わします。自分が頼んだ分だけじゃなくて、隣の人がオーダーしたイカの丸焼きやあさりの酒蒸しもご好意でつまませていただきながら、ほろ酔い気分の楽しい時間を過ごせました。
本日は、新潟駅近くのホテルに宿泊です。
2日目の朝は、ゆっくり起きて、再び「沼垂テラス商店街」へ戻っておさんぽ。
沼垂テラス商店街は、もともと市場としてにぎわった長屋群でしたが、時代の移り変わりとともにシャッター通りとなってしまったそう。
そこを、昨日訪れた「大佐渡たむら」の二代目が中心となって、さまざまなお店が集まる「商店街」としてプロデュース。結果、近年新たな観光スポットとして注目されるエリアに急成長した場所です。
現在は25店舗の小さなお店が並び、そのラインナップはカフェやデリ、雑貨店をはじめ、生花店、ジュエリーショップ、陶芸・ガラス工房や古書店など、本当に多種多様。
地元の方に、「沼垂は工場の煙突が見えるのが特徴で、愛らしくてね」「この町は、運がよければ、かわいい猫ちゃんにたくさん会えるのよ」などと教えてもらいながら、町歩きを堪能します。
私は陶磁器工房・陶芸教室「青人窯(あおとがま)」や、観葉植物のショップ兼建築事務所「Ploot」のセンスが大好きでした。
約200メートル続く沼垂テラス商店街の通り以外にも、周辺には地ビールが楽しめる「沼垂ビアパブ」や、写真集を中心にした新刊・古書を扱う書店「BOOKS f3(ブックスエフサン)」(※)などの素敵なお店が並んでいました。
※編集部注:「BOOKS f3(ブックスエフサン)」は2021年6月に閉店しました
沼垂では、「沼垂テラス商店街に限らず、このエリア一帯のお店の力を合わせて、みんなで沼垂エリアを盛り上げていこう!」という動きがあるそうなので、時間があれば、ぜひ周囲もおさんぽしてみてください。
地域に根付いた、バリエーション豊かなお店がたくさんあって、散策がとても楽しかったです。
さて。そんなふうに時間を気にせず、ぶらり旅を体験した1泊2日の旅も終焉へ。
もちろん、帰りも上越新幹線に乗車します。車内では、JR新潟駅構内の売店で購入したあまざけと、新潟限定のビール「風味爽快ニシテ」、そして沼垂テラス商店街で買った「沼ネコ焼」をいただいていたので、2時間弱の道のりはあっという間。
新幹線の旅って、どうしてこんなに至福なんだろう……!
本当に、沼垂は「地域の魅力に少し触れたい、気軽に旅気分を味わいたい」そんな時にぴったりの場所でした。気軽に出かけられる新潟・沼垂へ、次の週末にでも、ぜひ出かけてみませんか?
今回の旅の行程
【1日目】東京駅→新潟駅→今代司酒造→峰村醸造→古町糀製造所・蔵座敷店→大佐渡たむら→新潟駅(宿)
【2日目】新潟駅(宿)→沼垂テラス商店街→青人窯→Ploot→新潟駅→東京駅