私は旅の経験値が低い。
家でダラダラするのが好きで、運動神経がなくスポーツ・レジャーとは無縁。更にモデルとライターという完全歩合制な職に就いてしまったせいで、そもそも休暇を取るのが苦手だ。
旅に不向きな条件がそろいすぎている。
おかげで28歳にして旅行経験は片手で収まる程度。都内から一歩出れば、右も左もわからない赤ん坊だ。
旅をあまりしたことがない、スキーは小学校以来、そんな私が、福島県・裏磐梯エリアへ。初体験だらけの冬リゾートに出かけます。
東京駅から、東北新幹線やまびこに乗り福島県・郡山へ。
郡山駅からは無料のシャトルバスを乗り継ぎ、裏磐梯へと向かいます。
郡山駅前は都会的ですが、車で1時間ほど進めばあっという間に雪景色。
まずはグランデコスノーリゾートで、いきなり冬レジャーの大定番、スキーに挑戦です!
グランデコは緩やかな傾斜のコースが多く、小さな子ども連れや私のような初心者にもオススメのスキー場。この日も多くの人々で賑わっていました。
しかしいくら初心者向きとはいえ、こちらは15年ぶり2度目のスキー。ウェアの着方すらままならぬ状態です。一人スキーはさすがに不安なので、マンツーマンで教えてくれるスキー教室に参加することにしました。
教えてくださる先生は、口数は多くはないけど優しく頼れる紳士。私があまりにも怖がるもんだから、まっっっ平な場所まで私のスキー板を担いで運んでくれ、それでもおびえまくっていると先を歩いて雪道をならしてくれました。ポンコツ生徒で申し訳ない。
ようやくスキー板を装着するのですが、この時点で、ビビりまくる私を見かねた先生から「板は八の字」「足元ではなく遠くを見る」という二つの教えをすでに300回ほど叩き込まれています。転びたくない一心でその教えを必死に守る私。
すると、なんということでしょう。
意外とできちゃった。
カメラ目線を送る余裕っぷり。
わずか1時間のレッスンでしたが、ポイントを丁寧に教えてくださったおかげで初心者コース程度であればあっという間に滑れるようになりました。
どうせできるわけないから、山のふもとで雪だるまでも作ってやり過ごしてやる……と思っていたのに、終わる頃には「まだ滑り足りない!」と感じるほど夢中に。スキー最高。
グランデコから再び無料シャトルバスで、本日のお宿「裏磐梯レイクリゾート」へ。
どこへ行くにもシャトルバスが出ているので旅初心者の私でも安心して移動することができます。エリア一帯がリゾート地だからこそのうれしいポイントです。
ペンションの並ぶ雪道を進み、雄大な桧原湖を眺めていると突如現れるホテルは、圧倒的なオーラとラスボス感。
チェックインをしているそばから目に入ってくるのは、このド迫力ののれん。
こちらなんと温泉の入り口。スキーで冷えた体を温めるべく、おしゃれすぎるのれんをくぐり、さっそくお風呂をいただきます。
桧原湖を眼下に望む露天風呂「ひばらみの湯」は圧巻。先ほどバス車内の少し離れた所から眺めていた湖が目の前に広がるさまは、まさに「本命登場」といった感じ。この日は夕方ごろの入浴でしたが、春夏秋冬・朝昼晩、どんなシチュエーションでも絶景間違いなしなので、全てをこの目で確かめたくなります。
さらにお湯は天然の保湿成分、メタケイ酸が多く含まれていて美肌効果も期待大。湯上りにはしっとりモチモチ、ボディクリームいらずのお肌に感動!
夕食はホテル内の「ヒバラダイニング」で、地元の名産品もたっぷりいただける豪華なビュッフェ。
なかでも会津みそ入りチーズフォンデュは、濃厚なチーズのあとに広がる、みその甘みが絶品でした。
ビュッフェ形式の食事は、性格上、食べたいものよりも彩りのバランスを重視してしまうけど、選んだものがどれも本当においしくて「これこれ!これが食べたかったぁ!」と思えたのでよかったです。
※バイキングのメニューは日によって変わります。
売店……と呼ぶのはなんだかふさわしくない気がする、そんなスタイリッシュなショップでお土産選び。
会津の地酒や野菜といった特産品はもちろん、パッケージがかわいいお土産品の多さに驚きました。会津野菜のピクルスに自家製サングリアの素……とにかく、やたらしゃれている。
部屋飲み用にと購入した、福島県二本松市の地酒「人気一Rice Magic」もパッケージがかわいい。ナチュラルな甘みと酸味のスパークリング日本酒です。
ガブガブ飲み干しコテッと寝落ち。最後まで欲望のまま、幸せすぎる1日目が終了。
2日目は少し早起きして、ホテル内を散策。レイクリゾート内にはアミューズメントゾーンやアート展示などさまざまな施設があり、そのなかでも気になった展望ラウンジへ行ってみることに。
大きな窓から一望できる桧原湖。朝早かったこともあり貸し切り状態で、桧原湖ひとりじめという贅沢体験をすることができました。静寂に包まれた世界に、チェックアウトの時間も忘れうっとり。
アクティビティも充実のレイクリゾート、今回は会津・猪苗代の名所を巡る「白鳥と歴史に出会う旅」に参加します。(※アクティビティは取材日の内容です。最新情報はこちらでご確認ください)
まず訪れたのは二代将軍徳川秀忠の隠し子で初代会津藩主の「保科正之公」が祀られている土津(はにつ)神社。珍しい白い鳥居からは、異様なまでの存在感と厳かな雰囲気が漂っています。
神社の裏話や保科正之公の功績など、さまざまなお話を聞きながら境内を巡ります。
ガイドをしてくれたのは、物腰柔らかな青年、ツチヤさん(28歳)。2011年の震災以降、減ってしまった福島へ旅行に来る人が、最近かなり戻ってきたことを受けて「せっかく旅行に来てくれたのだから、ただ「復興のため」ではなく、心から福島を楽しんで、好きになってほしい」という思いからガイドの職に就いたんだそうです。
なんてこった、私、同じ年なのに。人間としての完成度の違いに愕然。正直、神社の歴史よりもツチヤさんの人生に興味が湧き、インタビュー取材ばりに、あれこれお話を伺ってしまいました。
昼食は「蕎麦の里猪苗代 いわはし館」で会津の郷土料理、「祝言(しゅうげん)そば」をいただきます。祝言(しゅうげん)とは、この地域の言葉で結婚式を指し、祝いの席で食べるおめでたいお蕎麦。
セットでついてくる「こづゆ」も、同じく正月や祝い事で必ず作られる会津の郷土料理だそう。
ちなみにガイドのツチヤさんも、ご自身の結婚式では自家製の祝言そばを食べたそうですよ!って、同じ年なのにつくづくしっかりしてるな……あぁ、それに比べて私は……。
鶏とゴボウのだしが、落ち込んだ心と冷えた体にやさしく染み渡ります。
食後はいよいよ、白鳥が集まるという湖へと向かいます。が、この日はまだ暖かかったため姿を見ることはできず。
しょうがないからツチヤさんのインタビューを再開するか……と諦めかけていたら、田んぼで休んでいるのを発見! 思いがけず、磐梯山と白鳥という素敵な一枚を収めることができました。
ツチヤさんも、いろんな意味でホッとしているようでした。
この旅、出会う人がみな口々に「すみません、今日は暖かくて……」と申し訳なさそうにおっしゃってくださるのがとても印象的。
東京と比べれば、この雪景色と白鳥が見られるだけで十分すぎるほど異空間なので、そんなに謝らなくていいんですよ。っていうか、暖かいとはいえ5℃だし。寒いし。みなさんのお心遣いにほっこりです。
アクティビティを終え、最後に立ち寄ったのは猪苗代にある「はじまりの美術館」。
2014年6月に開館したこちらは、築120年の蔵を改築した小さな美術館。
当初旅の予定にはなかったのですが、先ほどのアクティビティのガイド・ツチヤさんにおすすめされ、気になったので急きょ立ち寄ることに。
現在は「たべるとくらす」という、食に関わる作品の展示を開催中。(2017年2月20日まで)
昨日ビュッフェで食べた会津野菜や、昼食にいただいた伝統料理。この旅で出会った食べ物が絵画や写真などで展示されていて、なんだかうれしくなります。
足元の木レンガの心地よさ、歴史を感じられる天井や柱……静かな空間で地元の人々の思いに思いをはせながら、じっくりと作品を楽しむことができます。旅の最後にふさわしい、穏やかでのんびりとした空間でした。
壮大な景色の中で、遊んだり、考えたり、ぼーっとしたりと、思いのままに過ごす贅沢な2日間。南国へ行くよりも断然こっちだな。
寒い季節に寒い場所へ行く「リゾート」もあるなんて……と、うれしい新発見ができた旅でした。
掲載情報は2019年10月18日更新時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】東京駅→郡山駅→グランデコスノーリゾート→裏磐梯レイクリゾート
【2日目】裏磐梯レイクリゾート→アクティビティ「白鳥と歴史に出会う旅」→土津神社→蕎麦の里猪苗代 いわはし館→はじまりの美術館→猪苗代駅→郡山駅→東京駅