中央線沿線 ひたすら純喫茶を巡る東京の旅
純喫茶の雰囲気とおいしいコーヒーに惹かれて、日々、純喫茶巡りの記録をブログ「純喫茶コレクション」につづっている難波里奈です。
「純喫茶がたくさんある地域はどこですか?」という質問を受けることがしばしばあります。そんな時に思いつくのは「中央線沿線」。浅草や新宿などの繁華街、学生街の神保町や早稲田などにも素敵な純喫茶が多数あって、1つのエリアでたくさん巡れるのはとてもありがたいのですが、続けて訪れると、すぐにコーヒーや甘いものなどで満腹になってしまうのが悩みです。
そこで今回は、この日の宿がある東京駅へ向かう途中に散歩や買い物などを挟みつつ、好きな時にふらりと寄れる「中央線沿線の魅力的な純喫茶」についてお話しします。
【八王子】22種類のコーヒーが自慢の「憩」
まずは、来年で創業50年となる、八王子の「憩」へ。初代マスターであるおじいさまとおばあさま、二代目マスター夫婦の家族で営業しているため、あたたかな雰囲気が特徴です。
コーヒー専門店とうたっているようにメニューは豊富で、ストレートコーヒーだけでも常時22種類揃っていて、ネルドリップかサイフォン、お好みで抽出方法を選べるのもうれしいサービスです。
「コーヒー以外の飲み物も充実しているので、苦手な方は遠慮なく、お好きなものを飲んでくださいね」と二代目マスターの河野さん。古き良きものを守りつつ新しい挑戦を怠らず、夏頃からは「コーヒーの飲み比べセット」なども始める予定とのこと。
「喫茶店文化を色濃く残す店内で、忙しい日常の喧騒を忘れて、ほっとした気持ちで過ごしてもらえたら。好きな本を読むなど、とにかくのんびりと過ごしてほしい。コーヒーについて気になることがあったら、気軽に話しかけてくださいね」とコーヒーを淹れている時には真剣な面持ちのマスターが、穏やかな笑顔でお話ししてくれます。
この日は「モカクロ・ゼリー」を注文。程良いかたさが絶妙なゼリーは小さくカットされ、その上にはコーヒー味のアイスクリームにアイスコーヒーとチョコレートソースを混ぜたものがのせられていて、一緒に食べると絶品です。
【国分寺】クラシックで優雅な午後のひと時「でんえん」
「憩」でのひと時を堪能していたら、あっという間に午後になったので、少しゆっくりしたいところです。
ちょうど好きな喫茶店が近くにあるのを思い出したので、国分寺で途中下車。多くの文化人たちが今も足を運ぶ「名曲喫茶でんえん」へ。1957年創業、今年で60年目を迎える老舗です。
「昔は常に満席で、美人喫茶と呼ばれたこともあったほどウェイトレスもたくさんいてね、3人も常連さんと結婚したのよ。今はのんびりと営業できるようになったけれど、人前に出ることが健康の秘訣。色々な人とお話しすると、刺激をもらえるの」と素敵な花柄のベレー帽をかぶった上品なママ、新井さんがお話ししてくださいました。
名曲喫茶、と聞くと構えてしまう方も多いのではないかと思いますが、こちらではリクエストをしなくても、いらしたお客様の雰囲気に合った曲を流してくれます。新井さん自身もクラシックだけにはこだわらず、「誰もいない時は、明るい曲を聴いたりもするわね」と気さくな一言。
香りの良いコーヒーと合う自家製チーズケーキが人気メニューです。ほかにもファンが多いというミルクセーキは、L玉の卵黄を使用しているため、濃厚な味で美味しい。
「プライベートでは、嫌なことははっきり断って、友人と美味しいものを食べる時間が楽しいわね。今は英語の勉強もしているのよ」と新井さん。何歳になっても色々なことに積極的で、自分のポリシーをきちんと守って過ごすことの大切さを改めて教えてもらいました。
この日は開店前にお邪魔させていただいたのですが、営業開始の13時を過ぎるとひっきりなしに扉が開き、新井さんとお話しする常連の方たちが皆とても良い表情をされているのが印象的でした。
【三鷹】ランチタイム以外もOK! お得なランチボックス「リスボン」
散策していたら、少し小腹がすきました。次は三鷹で途中下車。ここには、マスターの心遣いがうれしいランチボックスがあるのです。
「この間、お客さんに『グッドモーニングください!』って言われて、一瞬目が点になったんだけど、意味がわかって笑顔になったよ。うちのモーニングセットはね、バタートーストとホットドッグが選べるんだけど、ホットドッグモーニングを注文したかったんだね」
カウンター席に座った直後から楽しい話を聞かせてくれるマスター、武内さんと会えるのは三鷹の「珈琲リスボン」。「普段は物静か。休日は誰とも話さないくらい」という言葉が信じられないほど、おしゃべり上手で明るい雰囲気が漂います。
こちらの人気メニューはランチバスケット。「ランチ」とありますが、一日中注文することができ、かわいらしいバスケットの中には、日替わりのサンドイッチとトーストが2切れずつ、手作りサラダ、季節の果物にヨーグルトと、ボリュームや栄養バランスもばっちりです。添えられている果物は缶詰ではなく、その季節のおいしいものを選んでいるところにも感動。
「価格では大手チェーン店にはかなわないし、地下にあるわかりにくい店に足を運んでくれた人には、せめてできる限りのわがままに応えたい。自分自身 “こういう場所があってほしいな”と思える店でいたいから。訪れた人にわずかな時間でも、ここで楽しく過ごしてもらえたら」と笑った目の奥には真剣な思いを感じるのでした。
東京駅まで途中下車して立ち寄ってみませんか?
三鷹から再び中央線に乗って、気になった駅で降りてみるのはいかがでしょうか? たとえばほかにも、こんなに素敵な純喫茶がたくさんあります。
吉祥寺:まるで洞窟のような空間で美味しいコーヒーとカレーを頂ける「くぐつ草」、スパイスの効いたこだわりのカレーが人気の「武蔵野茶房」、夜0時までの営業がありがたい「ゆりあぺむぺる」、2階席から窓の外を見下ろせる「武蔵野文庫」、大きな窓から差し込む日差しがまぶしい「シェモア」……。
西荻窪:手作りケーキも美味しい「POT」、山小屋風で禁煙がうれしい「DANTE」、多数飾られたアンティークの柱時計に時間を忘れる「物豆奇(ものずき)」、思わずお土産に買って帰りたくなるどんぐりクッキーがある「どんぐり舎」、冷たい飲み物を注文するとついてくるコースターが可愛い「こけし屋」……。
阿佐ヶ谷:ブランコに揺られながらコーヒーがいただける「gion」、おいしいカレーと花の名前がついたコーヒーを楽しめる「対山館」、映画のロケにもしばしば使用されるクラシック喫茶「ヴィオロン」、そのほかにも「エル」「ポトロ」……。
高円寺:美しいマダムに気分もほぐれる「ネルケン」、かつて中野にあった今はなき伝説の喫茶「クラシック」の家具や想いを引き継いだ「ルネッサンス」、紫色のランプが夜に映える「ブーケ」、にこやかな夫婦が出迎えてくれる「高円寺茶房」、驚くほど豪華なランチセットが食べられる「あろうむ」、ふわふわのタマゴサンドが絶品の「BONY」、まるで蒸しパンのような厚みが癖になるホットケーキのある「コーラル」……。
代々木:「ジジロア」というおもしろいネーミングのメニューがある「珈琲専門店TOM」。
さて、何軒の純喫茶を訪れることができそうですか? あくまでもご自分のペースで、気になる店を巡って楽しんでいただけたらと思います。純喫茶巡りの一日を終えた後は、東京駅舎内にある豪華でクラシカルな空間を備えた東京ステーションホテルに泊まって、疲れを癒やすのはいかがでしょうか?
スポット情報
憩
住所:東京都八王子市三崎町2-10
電話:042-625-2055
スポット情報
でんえん
住所:東京都国分寺市本町2-8-7
電話:042-321-2431
スポット情報
リスボン
住所:東京都三鷹市下連雀3-27-9 ニューエミネンス B1
電話:0422-47-1427
今回の旅の行程
【1日目】JR八王子駅→憩→JR国分寺駅→でんえん→JR三鷹駅→リスボン→JR東京駅→東京ステーションホテル