鉄道は、地域によってその良さが異なるから面白い。ローカル線にはローカル線の良さがあり、山岳鉄道には山岳鉄道の良さがある。でも東京の面白さは独特だと思うのである。
ひとことでいえば迫力。
路線がいくつもあり、一編成が10両以上の長い電車が多く、それがひっきりなしに走っているのである。
今までカメラを持って都内を歩き回った経験から、東京ならではの電車の迫力を、最短の移動時間、最高のバリエーションで味わえるよう組んでみた。
まずは東京駅からスタートだ。
東京駅から京浜東北線に乗って王子駅へ。1883年開業の古い駅だが、停まるのは京浜東北線のみなので要注意。
目指すは王子駅北口から徒歩2分の、北区の施設「北とぴあ(ほくとぴあ)」だ。ここの17階展望ロビーからの眺めが絶品なのである。
展望ロビーに出ると、眼下には新幹線、京浜東北線、東北本線などの線路が全部で8本。いきなり電車ビュー。
右手に見えるこんもりした丘は飛鳥山。都内でも有数の桜の名所だ。さらに飛鳥山に上るためのモノレール、あすかパークレール「アスカルゴ」や、明治通り沿いに飛鳥山をぐるっと回ってJRの高架をくぐる都電荒川線も一望できる。
これだけでも飽きないのだが、遠くには無数の車両がびっしりと詰まったJR東日本の尾久車両センターも見える。望遠レンズは必須だが、車両センターまで一望できるのは北とぴあならではだ。
でも本当のおすすめは、さらに奥にある北向き展望室からの眺め。
順光なので見やすいし、線路のカーブが美しいのだ。
ときどき在来線特急が見つかるとうれしい。この真っ赤な車両は「日光・きぬがわ」ですね。
ここは空調も効いていて落ち着ける。
おかげで新幹線と在来線を一緒に撮りたいと粘り、なんとか京浜東北線とE7系とE2系が同時に現れる瞬間に出会えた。
ただ長居しすぎると他のスポットを回る時間が減っちゃうので注意。
次のおすすめビューポイントへ移動しよう。
それは王子駅南口である。高いところから線路や電車を一望する楽しさの北とぴあに対し、超至近距離で迫力を楽しめるのが王子駅南口なのだ。
ここへは飛鳥山経由で行くのがおすすめ。飛鳥山に登ってそのまま南へ200m ほど、木々の間から見え隠れする電車を見ながら歩く。
やがて崖下へ下りる階段が見えてくるので、それを駅方面へと下り、王子駅南口へと向かう。
高架下にある南口改札は地味なのだが、陸橋で東北本線の上を渡り、東北本線と京浜東北線の隙間を下って、改札口に向かうこのルートが実に良いのだ。
言葉では説明しづらいが、線路のすぐ脇を通るので、こんな迫力ある光景に出会えるのである。
ここはけっこう穴場なので、間近で電車を味わいたいときはぜひ。
次に向かうは西日暮里駅。
1971年開業の、山手線で一番新しい駅(品川の新駅ができるまでだが)だ。
この駅は道路の上にプラットホームがある。それだけなら珍しくないが、両側が崖になっている谷に電車の浮かんでいる風景が良いのである。個人的に、この眺めは好き。
右手に見える公園には、この写真を撮った歩道橋からそのままつながっているので、そちらへと向かおう。公園を出ると左手に諏方神社が現れる。鎌倉時代創建と伝わる古社だ。
その境内に、電車ビュースポットがあるのである。
ちょうどE5系の東北新幹線がやってきたので撮影。
江戸時代の人はここからの眺望を楽しんだそうだが、現代人は電車を眺望するのである。
ここから日暮里駅まではほんの300〜400mなので歩こう。途中、キジトラの猫と出会う。散歩中に出会う猫は、なごみますな。
さて、わざわざ日暮里まで歩いたのには訳がある。
日暮里駅北改札の陸橋からの眺めが素晴らしいのである。
ここの圧巻は幅広さ。山手線&京浜東北線、新幹線、東北本線、常磐線、さらに京成本線が並行している。
カメラを構えたら東北新幹線と常磐線特急ひたち(あるいはときわ)が同時に走ってきたので思わず撮影。このずらっと並んだ線路は迫力満点だ。
この線路すべてに電車がいる瞬間を撮りたいといつも思っているのだが、そんなことを考えていると日が暮れるので、山手線、京浜東北線と、E7系の北陸新幹線の3本同時撮影で我慢するとしよう。
そろそろランチタイム。目指すは飯田橋のカナルカフェ。
山手線か京浜東北線で秋葉原。中央・総武線に乗り換えて飯田橋駅へ。窓から外を見ていると、すぐ目の前を川が流れている。この水の上から電車を見たら楽しかろう、と思いますよね、思ってください。
飯田橋駅を神楽坂方面の西口から出たら、外堀の外側を少し下る。すると、階段下の外堀の中に「カナルカフェ」がある。ここが水と電車のビューカフェなのである。
電車を見ながらランチを食べたら、腹ごなしのボートに乗ろう。
カナルカフェは、もともと「東京水上倶楽部」という外堀を使ったボート場。創業は1918年。東京では最初にできたボート場で、今でも貸しボートがある。
料金は1艘3名までで30分1,000~1,200円。しかもボート上での飲食も可能なのでデザートとドリンクを買って乗り込むのがおすすめ。
いきなりこんな光景を楽しめるのだ。
都心ではここだけの、ボートから見る、外堀沿いを走る中央線と高層ビルである。
この日は風が強くて、ひとりでボートをこぎながら撮るには苛酷な状況だったが、がんばった。
都心で舟遊びをしつつ電車も楽しめるのは、ここだけ。撮影に夢中になってボートから落ちたり、カメラを落としたりしないよう注意すべし。
総武線で秋葉原駅を経由し、山手線か京浜東北線で東京駅へ戻ろう。
そうしたら東京駅丸の内南口前のKITTEヘ。ここは1931年に建てられた東京中央郵便局が、当時からのモダンな外観を残しつつ、商業施設併設のスポットに生まれ変わったもの。ここの屋上庭園「KITTEガーデン」が、電車ビュースポットなのである。
東京駅に出入りする各新幹線や在来線を一望できて楽しい。
東京駅の赤レンガの駅舎越しに電車を眺めることができて、とても良いスポットである。
1日電車ビューを楽しんだらホテルへ。
宿泊は「ホテルメトロポリタン丸の内」。
東京駅日本橋口にある高層ホテルだ。27階以上がホテルなので、どの部屋も高層である。
27階のロビーには、東京の名所をうまく配した鉄道模型が飾られているのも、鉄道好きにはたまらない点だ。
可能なら予約時や当日に空きがあれば、「南側の部屋」をリクエストすること。 そうすると東京駅ビューを楽しめるのだ。
ここの眺めは絶品。
何しろ、カーテンを開けたらいきなりこれである。
真下に見えるのが、左から新幹線のホーム。右が在来線。そして東京駅の赤レンガ駅舎。右奥には、さっきまでいたKITTEの屋上庭園も。
部屋の明かりを消し(そうすると室内の明かりがガラスに映らないので、夜景がきれいに見える)、ぼーっと外を見ているだけで飽きない。いつまでたってもベッドに入れない始末。
あまりに美しいので三脚を立てて、気合を入れて撮影してしまった。
このビューを楽しめるのは、立地的にここだけである。
電車好きなら、無理をしてでも一度は泊まりたい。
でも、やがて電車の本数は減り、終電を迎えるのであった。
おやすみなさい。
そしておはようございます。
翌朝、東京の中心駅ならではのすごい風景を目の当たりにして戦慄。東海道新幹線、東海道本線や京浜東北線の上りと下り、山手線の内回りと外回りなどがひっきりなしに行き交っているのである。
東京おそるべし、おそるべし東京。
というわけで、翌朝まで東京の鉄道を堪能してみた。
東京駅と飯田橋、王子駅の間しか移動していないにもかかわらず、これだけいろいろな楽しみ方ができる。
全部を回るのは大変だけど、好みに合ったスポットが見つかったら、ぜひ楽しんでみていただきたい。子どもが電車好きな年頃になった親御さんにもおすすめだ。
この記事の内容は2019年3月20日現在の情報です。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR王子駅→北とぴあ→飛鳥山→JR王子駅南口→JR西日暮里駅→JR日暮里駅→JR飯田橋駅→カナルカフェ→JR東京駅→KITTEガーデン→ホテルメトロポリタン丸の内