旅行×写真はベストな組み合わせです。せっかくの撮影旅には「旅を楽しみつつも納得できる写真を撮りたい」と思いますよね。自分の体験としてだけではなく、「撮った写真はインスタグラムなどで皆と共有したい」というケースも多いかなと思います。今回はそんなSNS時代の写真好きな方を対象に、フォトジェニックなスポット盛りだくさんの房総半島へ撮影旅行に向かいました。
東京駅から出発し安房鴨川駅で降車。そのまま今回の足となるレンタカーを手配します。駅レンタカーで車を借り縦横無尽に房総半島をめぐります。
安房鴨川駅から車を走らせること50分。まず向かったのは、観光スポットとして見どころの多い鋸山(のこぎりやま)。
車で山頂へ行くこともできますが、遠方に広がる南房総の景色を楽しめるロープウェーも快適です。標高329.4mの頂上に近い「ロープウェー山頂駅」までは5分程度の乗車時間です。山頂展望台からは、晴れていれば富士山や東京スカイツリーを見ることもできます。
旅先では、シャッターチャンスがいっぱい。撮影する上で最も重要な要素が光です。光線状態(光の強さや向き)は、写真の出来映えに大きな影響を与えます。海や空の青い色をしっかり出したい時には、太陽を背にして撮影してみましょう。これを「順光」といい、被写体と背景のどちらも、パンチの効いた鮮やかな色に仕上がります。
鋸山の西口管理所から入り、百尺観音に向かう道中では、垂直に切り出された石の通路が見えてきます。鋸山は、房州石(ぼうしゅういし)の産地として知られています。日本の近代化を支えた房州石は、1982年頃まで、交通インフラや建築面で活用されてきた歴史を持つそうです。
古代遺跡のような石壁を抜けると、石を切り出した壁面に掘られた100尺(30m)の大観音石像が見えてきます。1966年に完成した百尺観音は、交通の安全を守る本尊として崇められています。とても神秘的で、大きな労力をかけられた創作物であったことが、ひしひしと伝わってきます。
さぁ、次はお待ちかねの房総の大自然との対面です。
こちらは、突き出た崖の先端から真下を眺める地獄のぞき。断崖から突き出し、下に向かって前傾しているため、実際にその場へ行くとゾクゾクしてきます。地上からの高さはおよそ100m。この地獄のぞきは、鋸山を訪れて、立ち寄らない人はいないくらい有名な人気スポットとなっています。高所恐怖症の人は、先端から足元を見降ろせば、恐ろしさのあまり、血の気が引いてしまうことでしょう。
この1枚は、地獄のぞきのすぐ手前にある、瑠璃光展望台から撮影しています。
ここは1,553体の石仏が並ぶ千五百羅漢道。羅漢とは、仏教の世界の尊敬や施しを受けるにふさわしい聖者の意味を表すそうです。丹念に心を込めて彫られた羅漢像は、バラエティに富んだ表情で、訪れる者を楽しませてくれます。
よく観察してみると、ところどころに首や胴体のない羅漢を見かけます。これは、明治維新後の神仏分離令によって起こった廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の影響と伝えられています。実際に目の当たりにすると、教科書だけではなかなかイメージできない歴史の流れを感じますね。
友人に誘われ、付き合いでゲイバーによく行っていた頃、ママから「夜は錯覚の世界よ、だからワタシたちは夜が勝負なのよ!」と教わったことを思い出しました。たしかに人の表情や雰囲気は、顔に落とされる「光と影」によって変貌します。そのママは街の光と夜の闇を駆使し、最大限に魅力的な自分を演出しているのでしょう。特に斜光(横からの光)は顔の立体感や陰影がきれいに出ます。物憂げな表情であれば、寂しげにならないどころか、艶まで加わったように感じられます。魅力的な自分を写真で演出したいなら、これからのプロフィール画像は斜め or 横顔に斜光で決まりです。これはゲイバーのママと羅漢様の教え。ありがたや。
撮影を始めたばかりの方でも薄暗い場所でも写真を上手く撮る方法。それは、3つあります。
ただし、撮影旅で、毎回三脚を出すことは難しかったりしますよね。その際には、「1」と「2」を活用してみてください。
大仏広場では、白梅や紅梅が見頃を迎えていました。草花を魅力的に撮影するためには、背景に気を配るとよいです。梅の枝を全部写して華やかに表現するのもアリですし、シンプルにひとつの枝に注目するのも、もちろんアリです。
カメラが決めた適正露出を変更して「露出補正」を行えるようになると、写真を自由に明るくしたり暗くしたりすることができます。白梅のような白い被写体には、+1~2の補正をかけると、灰色ではなく自然な白色を出すことができます。草花の撮影では、よく使う撮影テクニックです。ぜひ、覚えておいてくださいね。
鋸山で3時間のトレッキングをしたあとに向かったのは、海に延びる木製の桟橋が珍しい原岡海岸。晴れた日には、東京湾越しに見える富士山をバックに撮影できる、フォトジェニックスポットです。
原岡海岸でのおすすめの撮影時間帯は、早朝や夕方から夜にかけて。このように幻想的なショットが望めます。長時間露光(カメラのシャッターが開いている時間を長く設定する)の技術を使うと、通常のフィルムやセンサーでは捉えられない被写体の動きや、光の軌跡などを、カメラに収めることができます。
夕景や夜景は、長時間露光の最も代表的な被写体です。題材としては手軽ですが、カメラを固定する三脚がないと、ブレてしまいがちです。旅行によって記憶にも記録にも残る写真を美しく撮りたい時は、三脚を活用しましょう。三脚は、カメラとレンズの重さに耐えられるものを用意してください。
良い1枚を撮るためには、自分自身のコンディションを整えることも重要ですね。こちらは鴨川市の海岸に立つ、鴨川グランドホテル。
案内されたのは、目の前には広大な海が広がる、オーシャンビューの部屋。絶好のロケーションを楽しめるリゾートホテルです。この日の夕食は、地元で取れた海、山の恵みを堪能。ゆったりとした部屋で、房総・鴨川の景色とグルメを堪能し、翌日のために疲れた体を癒やします。
房総半島のフォトジェニックスポットめぐり2日目。この日は、幻想的な秘境の濃溝(のうみぞ)の滝へ向かいます。
晴れた日の朝6時半から7時半頃が、朝日が差し込む撮影の絶好のチャンスです。
その絶好のチャンスを逃すまいと、6時から11時まで川辺で粘ります。
しかし、ベストシーズンは3月と9月。上空は曇り、太陽が上がっても、角度の問題か、光が溢れることはありませんでした。
個人的な撮影であれば何度も訪れることができますが、今回は一発勝負です。写真は、その日の天候や光源状態に大きく左右されます。
与えられた条件で、その時できることを最大限に考えます。朝日は差しませんでしたが、ネットで一度も見たことのない構図と、厳かな雰囲気を出したことが、せめてものプライドでした。次の機会には、朝日が差し込むベストシーズンを楽しみたいなと思います。
房総半島の先端に位置する、南房総エリア。目の前には、まるで南国リゾートを訪れたかのような白いビーチ、透き通る青い海、どこか懐かしい原風景。東京からわずか2時間の距離とは思えない、スケールの大きなゆったりとした時間が流れています。どのスポットも魅力に溢れ、訪れる人を魅了します。まさに、旅×撮影にはもってこいです。自分だけの1枚を求める方はぜひ、ごゆるりと楽しんでみてくださいね。
掲載情報は2020年5月18日更新時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
濃溝の滝
住所:千葉県君津市笹1954-16
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR安房鴨川駅→鋸山→原岡海岸→鴨川グランドホテル
【2日目】鴨川グランドホテル→濃溝の滝→JR安房鴨川駅