♪鳥くんと巡るラムサール条約登録湿地 バードウォッチング旅
とりース! プロバードウォッチャー♪鳥くんです。宮城県にある伊豆沼、蕪栗(かぶくり)沼と周辺の農耕地といえば、バードウォッチャーの聖地のひとつ。天然記念物の数万羽のマガンが越冬する国内屈指のバードウォッチングスポットで、豊かな自然環境の中、多数の野鳥が生息しています。特に冬は木々の葉が少ないので、大型の水鳥や猛禽類ウォッチングは、初心者にもオススメ。マガンのために街灯がほとんどない里山の原風景は、見ているだけで心が癒やされます。今回は、のんびり気楽に楽しめるラムサール条約登録湿地の沼巡りバードウォッチングにご案内します。
あっという間に宮城県
JR東京駅から東北新幹線に乗り、約2時間でJR古川駅(はやぶさ、はやて1時間55分、やまびこ2時間12分)。駅弁を食べて、居眠りしていたら、あっという間に到着。駅レンタカーに行き、配車してもらったら、防寒具や、バードウォッチングの観察、撮影機材を積み込み、行き先のカーナビ設定など、しっかり準備をして、いざ、出発。
沼巡り。切伏沼~蕪栗沼~伊豆沼
JR古川駅から北東に約20km。伊豆沼の南側、切伏(きりふせ)沼あたりから、メイン道路を外れて農道に入り、バードウォッチング開始。早速、農耕地の片隅のため池に婚姻色のアオサギを発見。
農耕地でのバードウォッチングでは、水のある場所に鳥が集まっていることが多いので、用水路沿いや、ため池は要チェックだ。車内からだと、車を降りて近づくよりも鳥の警戒心が緩むので、近距離で観察、撮影できる。鳥を見つけたら、大声を出さず、派手な動作をせずに、静かに見るのがコツ。
※婚姻色(こんいんしょく):鳥たちの恋の季節、冬の終わりや春になると、くちばしや足の色が色づく。
ため池の対岸の浅瀬には、少し歩いては立ち止まることを繰り返す「ちどり足」の鳥を発見。双眼鏡で確認すると、見る機会が少ないイカルチドリだ。日々バードウォッチングをしていても、特殊な環境のみに生息するため、年に数回くらいしか見ることがない種類。
「ちどり足」は、酔っ払いの代名詞になっているが、ふらふらと歩くのではなく、少し歩いては立ち止まる「チドリ類」の歩き方を酔っ払いに当てはめたもの。その歩き方を知れば、遠くにいても、チドリ類がいるとわかる。想定外の思わぬ出会いにバードレナリンが、どばどバード!
ため池を後にして、切伏沼の周囲をゆっくり走りながら野鳥を探す。切伏沼の南側にある駐車場あたりは、特に鳥が多い。
ほかにもダイサギ、ツグミやシメなどたくさんの種類を見ることができて、バードレナリンは出っぱなし。
マガンの大群を見ることができる場所は、国内でわずか数カ所
切伏沼から蕪栗沼方面に進む。このあたりに来ると、周囲の農耕地のあちこちにマガンの群れが見える。近距離で車を止めると飛び去ってしまうので、鳥が首を上げていたら、少し離れた場所に停車して観察する。首を上げずに、下を向いて採食していたら、マガンたちが安心をしている証拠だ。
伊豆沼、蕪栗沼をねぐらとして利用するマガンは約10万羽もいるので、ここでは普通に見ることができるが、ここ以外では、秋田県や新潟県などに、より小規模の群れが渡来するだけの貴重な鳥だ。
マガンの群れの中には、珍しいシジュウカラガンやハクガン、カリガネなどの「珍ガン」が混ざっていることがあるので、それらを確認する。しかしマガン数千羽に1羽ほどの珍ガンは、なかなか見つからない。
野鳥の宝庫、蕪栗沼の美しい景色
蕪栗沼に到着。北側の駐車場に車を停めて、反時計まわりに周遊散策路を歩く。足元は、天然の腐葉土のようになっているため、ふかふかしていて、それだけで自然が豊かな場所だとわかる。
今回は宿泊地と天候、時期により紹介できないのが残念だが、11月末くらいから2月初旬あたりの朝夕に、数万羽のマガンの大群が一斉に飛び立ち採食に出かける様子は、伊豆沼と共に蕪栗沼の名物のひとつ。数万羽が同時に飛び立つ瞬間には「どっ!」と他では聞けないすごい羽音がして、鳴き声が響き渡る。人生で一度は体験してほしい、すばらしい瞬間だ。
珍鳥ソデグロヅルに遭遇
蕪栗沼の散策路をしばらく歩くと、バードウォッチャーが集まっている一角があった。「何がいるんですか?」と尋ねると、日本では、年に数羽が渡来するだけの珍鳥=ソデグロヅルが対岸の葦原(あしはら)の中にいるとのこと。教えてもらった方向を双眼鏡で見ると、葦原(あしはら)の中に白い姿が見える。ソデグロヅル狙いのバードウォッチャーは、その全身や飛翔をきれいに撮影するために長時間待っているそうだ。バードウォッチャーに出会ったら、挨拶をして、情報を聞くのがオススメ。もしカメラのファインダーをのぞいていたり、双眼鏡で見ていたりするときは、それが終わってから声をかけましょう。
散策路を半周ほどして引き返し、蕪栗沼周辺を車でうろうろ。たくさんの野鳥がいて、うれしい。
ノスリが、農道脇の杭上に止まっていたので、車で近づいて撮影。不用意に近づくと逃げられてしまうから、時間をかけてゆっくり近付くこと。鳥は首を上げたら警戒している証拠。ウンチをしたら体が軽くなるので、今から飛び立つ証拠など、VS野鳥との駆け引きが必要。それがわかってくると、ますますバードウォッチングが楽しくなります。
珍ガン探し
蕪栗沼から伊豆沼に向かう途中も、めずらしいガンを探して、マガンの群れの中をしつこくチェックしていると、ついに、目の周囲が金色のカリガネを発見! マガンそっくりだけど別の種類で、マガン数千羽に対して1羽くらいの確率。こうして、天然のウォーリーをさがせ!ができるのも、バードウォッチングの醍醐味のひとつ。時間がかかった分だけ、バードレナリンがどばどバード!
伊豆沼周辺のふるさと産品グルメなら「くんぺる」。超ジューシーな赤豚とんかつ
朝からあちこちを巡って、ちょうど昼食時間。グッドタイミングで、ふるさと産品を多数取りそろえた「登米地域農家レストラン・くんぺる」に到着。ここで食べるなら、一番オススメなのが、肉汁がジューシーすぎる赤豚のトンカツセット。口に含んだら、ジューシーな肉汁がじゅわーっと広がる。これほどジューシーなトンカツは、ほかにはないと言い切れるほど。セットには伊豆沼ハムのサラダがついてくる。ほかにも、ヒレカツやしゃぶしゃぶなど、赤豚や伊豆沼ハムを使った色々なメニューがある。自家製パンやジェラートも販売していて、さまざまなふるさと産品を楽しめる。
人気の観光スポット・伊豆沼野鳥観察館
くんぺるから歩いて1分で、伊豆沼野鳥観察館。多くの人が訪れるため、オナガガモだけでなく、オオバンやハクチョウ、カモメも人なれしていて間近で見ることができる。「くんぺる」で食事やお茶を楽しんで、伊豆沼野鳥観察館に立ち寄るのが、伊豆沼の定番オススメコース。
雨の2日目・郷土料理・はっと汁を有名店で
2日目はのんびりと、農耕地で珍ガン探しの続きや、蕪栗沼でソデグロヅルを再度見たり、まだ見ていないオジロワシを待ってみようと思ったが、あいにくの雨。天候に左右されるバードウォッチングあるある。「野鳥は見られるうちに見る」だ。念のため蕪栗沼、伊豆沼を回ってみたが、雨が激しく、めぼしい収穫はなかった。
この日の一番の目的は、伊豆沼から10kmほど東に位置する老舗「味処あらい」で「はっと汁」を食べること。愛想のいい、やさしい笑顔の店員さんと、郷土玩具が並ぶお座敷席の店内は、やけに落ち着く。早速「はっと(汁)」を注文。はっと(汁)は、注文されてから作るので時間がかかると言われたが、10分もしないうちに出てきた。はっとのもちもち感、汁のおいしさ。これまで食べたどのはっと汁よりもおいしかった。冷えた体も温まった。はっと入りのあんこ=「あずきはっと」もおいしかった。
初・化女沼
化女(けじょ)沼もラムサール条約登録湿地だが、ダム湖であり、実際には鳥が少ないようで、バードウォッチャーの話題には上らない。それよりも、化女沼レジャーランド跡地ということでの訪問者が多いらしい。
最後にここへに立ち寄ってみたが、水面に水鳥は皆無。雨だったせいもあり、林の小鳥類もほとんどいなかった。レジャーランド跡地は怪しげな風情があり、見たことがない異空間の景色だった。
化女沼を1周して、古川駅に戻りレンタカーを返却し、宮城在住の知り合いにすすめられた「あん・さぶれ」を食べながら東京に戻った。今回の総走行距離は、約120km。
最後に、この旅で出会うことができた鳥たちをおさらいしてみよう。
トビ、ノスリ、チュウヒ、キジバト、ドバト、ハシボソガラス、ハシブトガラス、カワウ、アオサギ、ダイサギ、ソデグロヅル、マガン、カリガネ、オオハクチョウ、カルガモ、マガモ、コガモ、オナガガモ、ホシハジロ、ミコアイサ、イカルチドリ、タシギ、イソシギ、カモメ、モズ、ヒヨドリ、ムクドリ、ツグミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、シジュウカラ、エナガ、ウグイス、スズメ、シメ、カワラヒワ、オオジュリン、カシラダカ、ホオジロ、アオジ
鳴き声を聞いただけのものを含め、約40種もの鳥たちを観察することができました。宮城バードウォッチング旅、みなさんもぜひ!
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR古川駅→切伏沼→蕪栗沼→登米地域農家レストラン・くんぺる→伊豆沼野鳥観察館
【2日目】伊豆沼野鳥観察館→蕪栗沼→郷土料理 はっと専門店・味処あらい→化女沼