いぶりがっこ尽くしの秋田グルメ旅。スモーキーさがクセになる!
皆さん、秋田の漬け物「いぶりがっこ」はお好きですか? 燻製を思わせるスモーキーな香りがお酒のお供にもピッタリな「燻製たくあん」、最近は関東圏のスーパーで見かけることも多く、すっかり“定番漬け物”の仲間入りをしつつあります。
今回は、現地のプロダクションClover+の藤田さち子さんに「いぶりがっこ」スポットを厳選していただきました。いざ「いぶりがっこ尽くしの旅」に出発!
東京駅から約3時間。赤い車体の秋田新幹線が滑り込んだ大曲駅を降りると、まだ雪の残る街が広がっていました。「いぶりがっこ」をめぐる冒険、いよいよスタートです。
改札を出てすぐの場所にある「駅レンタカー」でクルマを借り、秋田自動車道を南下して湯沢市へ。最初の目的地は「いぶりがっこ」の元祖といわれる、「雄勝野(おがちの)きむらや」さんです。
もしかしたら消えていたかもしれない伝統の味
秋田自動車道と横手ジャンクションで接続する、湯沢横手道路の雄勝こまちICを出てから走ること数分。「いぶりがっこ本舗 雄勝野きむらや」さんに到着しました。ここで今回のいぶりがっこツアーをコーディネートしてくれたClover+の藤田さんと合流。迎えてくれたのは、社長の木村吉伸さんです。
まずは素朴なギモンからぶつけてみました。たくあんを燻製したような独特の味わいは、どのようにして生まれたのでしょうか?
「いぶりがっこの元祖は、昭和30年代以前、秋田で作られていた漬け物です。本来であれば通常のたくあんのように、大根を外に干してから漬けたいところなのですが、秋田は雪が多く、仕方なく屋内に干していました。天井近くに干していた大根が、囲炉裏の煙で燻(いぶ)され、それを漬け込んだことから、燻製のような香りがついた大根漬けができました」(木村さん)
これは、かなり意外でした。意図して燻したわけではなく、仕方なくそうなってしまっていたわけです。しかもその後、昭和30年代に入って各家庭から囲炉裏が姿を消すと、燻されることはなくなり、その味わいは一時消えかけて幻の味になっていたんだとか。
誰も作る人がいなくなった「燻された大根漬け」。それを復活させたのが、木村さんの先々代でした。
「『昔の大根漬けを、また食べてみたい』そんな思いで昔ながらの味の復活を思い立った祖父が、大根を生の状態で燻製小屋で燻してから漬け込んだんです。最初は『焚き木干したくあん』『いぶり漬け』などと言っていましたが、秋田の言葉で漬け物を意味する『がっこ』と組み合わせて『いぶりがっこ』として商品化しました」
燻製に使う木材は、ナラをベースにサクラやケヤキをブレンドしたオリジナル。現在では1年に50万本以上の大根を漬け込む規模になり、関東圏でも人気が高まっています。
秋田の風土と偶然から生まれた「燻された味わい」。そして一度は消えかけた味。いぶりがっこ製造の裏には、想像以上にドラマティックなストーリーがありました。
「いぶりんピック」開催地で一期一会の味に出会う!
秋田自動車道を横手まで折り返し、岩手県北上市と横手市を結ぶ平和街道を少し進むと「道の駅さんない」があります。ここは、横手市内在住の方の「自慢のいぶりがっこ」が出品されていることで話題のスポット。今年も2017年度いぶりんピックが2月に行われたばかりです。
店内に入ると、このとおり! 横手市内のお母さん、お父さんたちの「名札付き」で、数多くのいぶりがっこが並んでいます。どれにしようか迷ってしまいます……。
ほとんどのいぶりがっこが試食OKなのがすばらしい! スモーキーさ、塩気、甘さなど、さまざまなバリエーションの中から、好みの味に出会えます。
漬け物だけでなく、関連アイテムも発見! 「いぶりがっこのタルタルソース」は、刻んだいぶりがっこと燻製たまごによるこだわりの一品。
「いぶりがっこ塩」は、いぶりがっこの塩分を抽出したような、深い味わいが特徴。天ぷらの付け塩や、サラダのアクセントにも面白そうです。
いぶりがっこと日本酒のマリアージュ。秋田の全37蔵の美酒が集結
横手をあとにして、次は秋田自動車道を北上。この日のお宿がある秋田駅周辺でレンタカーを返却したら、コーディネーターの藤田さんが「地元でも注目のお店です!」と太鼓判を押す「松下酒房」へ向かいます。
秋田駅から徒歩10分ほど、秋田藩20万石佐竹氏の居城であった久保田城跡である千秋(せんしゅう)公園へ。お堀を渡り、秋田中心部を見下ろす小高い丘を登っていきます。
目の前に現れたのは黒塗りの板塀が美しい建物は、かつて料亭として使われていた「旧割烹松下」をリノベーションしたもの。2016年の6月に、秋田の文化に触れる複合施設として生まれ変わりました。
目指す「松下酒房」は、その1階。玄関で靴を脱ぎ、料亭の風情を感じながら進むと、温かい光のあふれる一室がありました。
立ち飲み形式で地酒が楽しめる店内では、県内にある37軒の酒蔵の厳選した地酒を存分に味わうことができます。
おつまみのいぶりがっこチーズは、この日の朝お邪魔した雄勝野きむらやのいぶりがっこに、クリームチーズを挟んだもの。濃厚なチーズとさっぱりスモーキーないぶりがっこは、まさにテッパンの美味しさ!
このいぶりがっこチーズに合わせた「地酒三種飲み比べ」を、酒房マネージャーの荻原さんに選んでいただきました。
舞鶴酒造「純米酒 田从」(横手市)、出羽鶴酒造「生酛仕込み 純米酒」(大仙市)、秋田酒造「特別純米酒 ふうわり百壷天」(秋田市)。
スッキリ系の辛口から、まろやかな甘口・フルーティなものまで、幅広く楽しめました。そして、どんな味にも、いぶりがっこチーズが合う!
いぶりがっこ尽くしの旅、まさに1日目の締めにぴったりな注目店です。とはいえ、立ち飲みで酔いやすいため、飲み過ぎには注意! 気持ちのいい夜風に吹かれて、秋田駅前のホテルに向かいました。
秋田市で見つけた! いぶりがっこスイーツ
翌朝、ホテルをチェックアウトして向かったのは、前日足を運んだ千秋公園近くの秋田市通町商店街。通りをしばらく進んでいくと、いぶりがっこを使った創作和菓子で知られる川口屋さんが見えてきます。
こちらのいぶりがっこスイーツ、まずはその名前がおもしろい!
ずばりその名は、「け」。秋田弁で「け」とは、「食え」つまり「お召し上がりください」の意味。それを「け」の一文字で表現してしまうというわけです。
こちらはチーズクリームに刻んだいぶりがっこを忍ばせた「いぶりがっこちーず『け』」。チーズ餡は甘すぎず、お茶請けというよりも、お酒に合わせたい雰囲気です。燻製のスモーキーな香りが、けっこう効いてます!
一方こちらは、あきたこまちを使ったお餅の中に、いぶりがっこ入りの味噌餡を入れた「もちがっこ『け』」。甘めの味噌といぶりがっこの塩気が、絶妙なコントラストです。
スイーツまで制覇した「いぶりがっこ尽くしの旅」。秋田に別れを告げ、このあとはクライマックスの地・角館に向かいます!
がっこ(=漬け物)尽くしでフィニッシュ!角館で味わう「がっこ懐石」とは
秋田駅からはJR奥羽本線とJR田沢湖線を乗り継いで、のんびりと1時間半ほどの列車旅で、みちのくの小京都・角館に着きます。駅と武家屋敷が集まるエリアの中間に位置する「食堂いなほ」は、この地で歴史ある「料亭 稲穂」の姉妹店。こちらでランチメニューとして出されているのが、「がっこ懐石」です。
手前は「いぶりがっこの卵とじ丼」。卵といぶりがっこだけのシンプルな素材が、深みのあるだしでとじられ、少ししんなりしたいぶりがっこの食感が新鮮です。
新鮮な食材と上品な味付けは、さすが料亭の姉妹店。「がっこ懐石」は10年以上前から続く、人気の定番メニューだそうです。
お客さんからは「全部『いぶりがっこ』だと思った」と言われることも多いそうですが、「がっこ」は秋田で「漬け物」の意味。燻した漬け物だから「いぶりがっこ」なのです。つまり、この懐石はいぶりがっこだけでなく、秋田のさまざまなお漬け物が楽しめる懐石になっているというわけ。ベジタリアンの方にもおすすめの、ボリューム満点ランチです。
中でもいぶりがっこを使ったものは、「いぶりがっこの甘露煮」「角館納豆といぶりがっこ」「いぶりがっこの天ぷら」の三品。
最大のヒットは、この「いぶりがっこの天ぷら」! シンプルな味わいのいぶりがっこと油の相性が素晴らしく、これは天ぷらの定番になってほしいです!
いぶりがっこをめぐる、秋田での冒険。この味に秘められた伝統とドラマ、調味料やスイーツにまで広がる守備範囲の広さには、新鮮な驚きがありました。
しこたま買い込んだ「いぶりがっこ」。これを食べ尽くしたら、また秋田を訪れたくなる……そんな旅でした!
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR大曲駅→雄勝野きむらや→道の駅さんない→松下酒房
【2日目】川口屋→JR秋田駅→JR角館駅 →食堂いなほ →JR角館駅 →JR東京駅
秋田市内JR+宿泊 ANAクラウンプラザホテル秋田
1泊2日/東京駅⇒大曲駅・角館駅⇒東京駅
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