函館で北海道ワインを存分に飲み歩く旅
ワイン業界やワイン好きの間で注目されている、北海道ワイン。ここ数年、道内ではワイナリーが続々と増え続け、現在製造免許の交付を待つ醸造家も数人いるそうだ。いずれも小規模でユニークな造り手であることも特徴的。さらに2017年1月には、フランス・ブルゴーニュの老舗ワイナリー、ドメーヌ・ド・モンティーユが、日本で初めてのワイン造りを函館で計画中という大きなニュースが流れた。ワイン好きにとって大いに期待がふくらむ函館の街で、ひたすらワインを飲み歩き!
新オープンの商業施設のフードマーケットへ
JR東京駅から北海道新幹線でJR新函館北斗駅へ。はこだてライナーに乗り換えJR函館駅に到着したら、早速街中を走る路面電車「函館市電」に乗り「五稜郭公園前」で降りると、新しい商業施設ができていた。
「シエスタハコダテ」の地階には、「DEAN & DELUCA」が監修したフードマーケット「シエスタキッチン」が、ばーんと広がっている。パン、コーヒーから寿司、アジア料理まで、幅広いジャンルの飲食店や食料品店が並ぶ。店内中央には大きなテーブル席があり、各店を自由に行き来しながら、ドリンクやフードなど、その場で購入したものをいただくことができる。
その中にある「酒ブティック越前屋 シエスタハコダテ店」は、海外のナチュラルワインと北海道ワインを150種類ほど扱う。店長が愛情を持ってワインをセレクトし、初心者にも買いやすく、ワインへの興味の入り口となってもらえるような店を目指しているそう。日替わりで8種類くらい、グラスワインの提供も行っている(有料)。
※ナチュラルワイン…化学肥料不使用、有機栽培等、限りなく自然な農法で栽培されたブドウで造るワイン。自然を尊重し、その土地や造り手の個性が表れる。自然派ワイン、ビオワインとも呼ばれる。
この日は北海道三笠市にあるTAKIZAWA WINERYの「旅路ロゼ2016[スパークリング]」がグラス提供されていた。旅路とは北海道固有のブドウ品種。優しく繊細な泡で、酸のしっかりした、爽やかな果実味の感じられるワインだった。
ワインに関して、頼もしいスタッフが相談に乗ってくれるので安心。昼飲みもできるし、待ち合わせにも便利。カジュアルで多目的に楽しめる場所だと思う。
北海道食材たっぷりのイタリア料理をワインと一緒に
さて、夕食に訪ねたのはシエスタハコダテから歩いてすぐのイタリア料理レストラン「Colz(コルツ)」。店内は温かみのある木の家具が配置され、ホッとくつろげる雰囲気で居心地がいい。おひとり様でも気楽に食べられるカウンター席もあり。おいしいものを味わう時間を、リラックスした空間で心から楽しんでほしいという、シェフ・佐藤雄也さんの心遣いが感じられる。
ここでは、フランス産を中心にナチュラルワインを各種そろえており、北海道のものもいくつか扱っている。いずれも少量生産で決して在庫は多くないため、何があるかは行ってのお楽しみ。
この日いただいた道産のグラスワインは写真の3つ。
真ん中のものは函館で醸造されており、ミュラー・トゥルガウ(ドイツ系ブドウ品種)で造られた、飲食店限定の白ワイン。家族で造る小さなワイナリーなので、函館でもまだ飲めるところは限られているし、必ず在庫があるかどうかはわからない。ワイナリーに人が殺到すると困るので、名前をここに書くことはできないが、気になる人はお店で聞いてみて。
料理はお任せコースを。訪ねた時はまだ春が始まったばかりだったので、全体的に芽吹きを感じさせるほろ苦さと甘みが複雑に絡み合った、優しく繊細な味わいの料理だった。無農薬のふわふわな菜の花、旨味が凝縮したアスパラのムース、穏やかに香るブドウの新芽のフライなど、春の恵みがふんだんに使われ、さらにエゾジカのコンソメジュレやヤギのチーズ、七飯町で作られる肉厚の「王様しいたけ」、完全放牧野生牛「ジビーフ」など、興味深い素材も多かった。ワインも料理も「北海道の自然」を満喫させるもので、また別の季節に訪ねてみたいと思う店だった。
食後はオーセンティックなワインバーへ
さらにもう一軒、3分ほど歩いて、落ち着いた雰囲気のワインバー「シャトー・ド・ラ・ポンプ」へ。ソムリエの久保有一さんは優しい笑顔の紳士。北海道は昨年ブドウが不作だったせいもあり、道産ワインは実は全体的に品薄だそうだが、函館のワイナリーで造られたシードルを飲むことができた。七飯町や余市町のりんごを使用し、野生酵母で醸したすっきり辛口のフルーティーなシードル。サラサラと飲めてしまう。
さらに増毛町で造られる「ポム・スクレ」に遭遇。地元で採れたりんごの果汁を氷結し、低温でゆっくりと発酵。りんごの旨味がぎゅっと詰まった、甘く濃厚なデザートワインで、こちらはチビチビと少しずつ味わった。
一緒に出てきたのは、七飯町にある「山田農場」のハードタイプチーズ「ガロ」。山田農場は、山の中で在来草を食べるヤギや羊を育て、循環型農業を実践している。久保さんも今後目が離せないという生産者である。季節によって動物たちの食べるものが変わるため、チーズの味にもその違いが表れるそう。
シャトー・ド・ラ・ポンプでは、毎月特定地域のワイン特集を行っており、珍しいワインと出会えることも多い。久保さんはワインがまだ日本でそれほど飲まれていなかった時代からこの仕事に就く、根っからのワイン好き。マスターソムリエの資格を持ち、豊富な知識が湧き水のように流れ出てくる。店名はフランス語で「水道水」という意味で、水のように自然に、日常としてワインを楽しんでほしいという思いが込められている。いい感じに酔いも回ったところで函館駅前のホテルに戻り、ばったり熟睡。
お土産探しに酒店めぐり
次の日は函館駅からタクシーで7~8分の「酒ブティック越前屋」本店を訪ねた。シエスタハコダテ店が初心者向けとしたら、こちらはより本格的な品ぞろえ。かつては福井県からお酒を運び、函館に卸していたという古い酒店で、現在の店主は4代目。2020年には100周年だそう! 店のすぐ裏には今もJRの線路が走っているが、昔は店まで引き込み線があったという。
こちらで扱っているのも、基本はナチュラルワイン。北海道らしい、土地の自然や風土を感じてもらえたら、とのこと。
最後のお楽しみは、2017年3月にJR新函館北斗駅前にオープンした「北斗市観光交流センター別館『ほっくる』」の中にある酒店「NORTH SAKE&WINE 酒舗 稲村屋」。
北海道および東北のお酒を中心にそろえ、店主の稲村博大さんが現地を訪ね歩いたというこだわりのセレクト。イタリア製サーバーで、ワインの試飲もできる(有料)。すべて北海道産で、赤、白各8種類くらいずつ用意。ここでお土産を探し、一杯やってから新幹線に乗るのが、あるべき飲兵衛の姿!? ただし稲村さんの熱意あるワイン談義に引き込まれて、うっかり電車に乗り遅れないように。
帰りは、念願だった新幹線の特別車両「グランクラス」に乗車。函館から東京まで約4時間、飲み放題だということはご存じだろうか? ワイン、ビール、日本酒、シードルなど各種あり、つまみ(と呼びたくなる軽食)とお菓子もついてくる。東京まで長い道のりと思いきや、居酒屋で4時間と思えば、あっという間。広くゆったりした座席で、リクライニングも深く快適。東京に着くのが惜しいくらいだった。
函館というと、刺身や海鮮丼など魚介につい目が行きがちだけれど、おいしいワインやチーズ、洋食の店も多々ある。これからどんどん面白くなっていきそうな北海道ワイン。ワイン好きなら、函館は今後も注目の街! ぜひ行ってみて!
スポット情報
Colz
住所:北海道函館市本町4-10
電話:0138-55-5000
営業時間:12:00~13:30(L.O)、18:00~21:30(L.O)
定休日:月曜日、日曜日ディナータイム
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR新函館北斗駅→JR函館駅→酒ブティック越前屋 シエスタハコダテ店→Colz→シャトー・ド・ラ・ポンプ
【2日目】酒ブティック越前屋 本店→JR函館駅→JR新函館北斗駅→NORTH SAKE&WINE 酒舗 稲村屋→JR東京駅