日本三大車窓の姨捨へ!酔っぱライターの信州ローカル線酒呑み旅
ローカル線は地酒と相性抜群!のんびり進む列車に乗って味わうお酒は格別です。今回は、日本三大車窓として有名な篠ノ井(しののい)線姨捨(おばすて)駅を中心に、信州の地酒を堪能してきました。長野県は新潟県に次いで酒蔵が多い酒どころ。きっとおいしいお酒に出会えるはず。いざ、出発進行!
長野駅MIDORI内で立ち飲み
北陸新幹線でJR東京駅から一路長野へ。
JR長野駅直結の駅ビルMIDORIの中には、「信州くらうど」という地酒ショップがあり、立ち飲みスペースが併設されています。
朝9時からオープンしているので、列車待ちの空き時間に気軽に立ち寄れ、週末は約150組が訪れる人気スポットです。
飲めるのは、長野県の地ビール、地ワイン、地酒。
さっそく夏の生酒セットをオーダーしてみました。
「木曽路」の特別純米生酒、「七笑」の吟醸生原酒・爽笑、「勢正宗」の純米生原酒です。
木曽郡にある「木曽路」は木曽渓谷の奥にひっそりとたたずむ女性蔵元の蔵。同じく木曽郡、木曽川沿いにある「七笑」は、特に水の良いことで知られます。中野市の「勢正宗」はもち米四段仕込みで醸され、もち米の柔らかい旨味が特徴です。
「木曽路」はしっかりしているので、ソーダ割りにしてもよさそう。
「七笑」はスッキリとして香り良し。
「勢正宗」は甘みがありコッテリ。おつまみの浸し豆も絶品です。
日本酒でテンションが上がったので、次はワイン。
塩尻市にある「井筒ワイン」のカベルネソーヴィニヨンです。
軽いタイプなので、スイスイ飲めますね。
信州産チーズの盛り合わせとピッタリです。
こうして駆けつけ4杯、ガソリンを補給した私は、篠ノ井線に乗ってJR川中島駅へ。
駅からタクシーで10分ほどで、西飯田酒造店に到着しました。
江戸末期創業の造り酒屋で、日本酒の銘柄は「積善」といいます。
お酒を造っているのは、9代目蔵元の飯田一基さん。
東京農業大学で、花からお酒の酵母を分離する「花酵母」を研究し、今は杜氏として腕を振るっています。
ここの蔵のすごいところは、すべて天然の花から分離された花酵母でお酒を造っていること。
花酵母は、東京農大で開発された新しい清酒酵母で、扱っている蔵は30軒ほどありますが、
全量花酵母の蔵は全国でここだけでしょう。
いろいろ試飲しましたが、リンゴ、サクラ、ツバキ、ツツジなどが気に入りました。
特にツバキとツツジは、キレイな酸と良い香りで素晴らしかったです。
香りも味も、従来の日本酒とは違う個性的なお酒に酔いしれました。
日本三大車窓の駅、姨捨へ
再び篠ノ井線に乗り、JR姨捨駅を目指します。
列車はどんどん急勾配を登っていき、姨捨に到着するとスイッチバックします。
スイッチバックとは、急斜面で列車が前後の向きを変え、ジグザグに上り下りすることです。
昔は傾斜地ではスイッチバックが多かったのですが、列車の性能がアップした今では、なかなか見ることができません。そういう意味でも、姨捨は貴重な駅なのです。
列車が止まる前、「乗り降りは一番前の車両です」とアナウンスが入りますから、
慌てず今まで一番後ろだった車両に移動しましょう。
スイッチバックしていることを忘れてはいけません。
私は逆の車両に行ってしまい、扉が開かなくて右往左往しました。
皆さんも気をつけてくださいね。
姨捨の駅舎は大正時代の設計。2010年にリニューアルしたあとも、古い駅舎の面影は残してあります。
ホームには展望台があり、善光寺平が一望できます。この景色が「日本三大車窓」とされるゆえんなのです。
駅を出て左方向へ歩き、2つ目の踏切を渡ると棚田の入口です。到着したときは、たくさんの観光客がいて、駅にも案内係の人がいました。そこで地図をもらい、棚田の場所がわかりましたが、基本的に姨捨は無人駅で、タクシーもいません。駅から長距離の移動をしたい場合は注意しましょう。
細い農道を下っていくと、1,500枚の棚田が広がっています。よく晴れた平日の昼過ぎだというのに、人っ子一人いません。聞こえるのは、用水路を流れるサラサラという水音だけです。この棚田を独り占め。なんという贅沢でしょう!
棚田の向こうには善光寺平が望めます。ここは夜景もきれいで、月夜には「田毎(たごと)の月」といい、水を張った棚田ひとつひとつに映る月が美しいそうです。今度は夜に来てみたいですね〜。
このあとは姨捨駅へ戻り、篠ノ井線で約1時間のJR松本駅へ。ここで1日目は終了して、駅前のホテルに宿泊しました。
松本の地酒、そしてそばを堪能!
2日目は松本散策。
駅からタクシーで10分ほどの岩波酒造へ行きました。
こちらは予約をすれば、蔵見学ができます。
蔵には、もろみを発酵させる仕込みタンクが並んでいます。「足場を上ってみますか?」と言われましたが、高所恐怖症の私は、急なハシゴと細い足場に恐れをなして、上れませんでした。蔵人さんは、こんな不安定な足場で、毎日仕込み作業をしているんですね〜。
試飲した中で秀逸だったのは、無濾過の普通酒「無濾過蔵出し岩波 零ノ参式」。搾ったまま手を加えず、加熱殺菌のみ行い、低温で熟成させたお酒です。コクと旨味が凝縮した逸品で、720ml913円という低価格も魅力。オススメの一本です。
案内してくれた杜氏の佐田直久さんは、金融関係の仕事を辞めて、20年前にこの蔵で酒造りを始めたそうです。杜氏の仕事は「きついこともあるけど、やりがいがあって楽しい!」と佐田さん。とても気さくで、お酒談義に花が咲きました。
さて、「信州に来たら、やっぱりそばを食べなくちゃ」と、タクシーで15分ほどの「こばやし」本店へ。こちらは信州の地酒が充実している、老舗のおそば屋さんです。
お酒は長野市内の尾澤酒造場が醸す「十九」に加えて、安曇野にある「大雪渓」の大吟醸2003年ものというレアなお酒をいただきました。今から15年以上前のお酒ですよね?なかなか手に入りません!飲んでみるとさすが2003年もの、なめらかでカドがなく、驚愕の旨さです。
つまみは蕗味噌、馬刺し、そして山ウドの芽の天ぷら。蕗味噌には韃靼そばの実がかかっていて香ばしい!馬刺しは熊本のニンニク醤油ではなく、生姜醤油なのが信州流。地元産の濃いくち醤油が、しっかりと馬刺しの旨味を引き出しています。山ウドの芽の天ぷらは、ちょうど山菜が終わった季節だったのですが、お店の好意で特別に出していただきました。うますぎて酒が進みます〜。
最後にもりそば。本わさびを自分ですり、つゆに溶かさないで、そばに少しつけて食べます。香り、コシ、喉ごし、パーフェクトですね!
「こばやし」から松本城までは歩いて数分。松本のシンボルを眺めつつ、旅を締めくくりました。
※紹介しているメニューは取材当時のものです。
ローカル線と絶景、そしておいしい地酒とそばのある信州。東京で疲れた身も心も、ほっこりと癒される旅でした。
掲載情報は2020年3月23日更新時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR長野駅→信州くらうど→JR川中島駅→西飯田酒造店→JR姨捨駅→棚田→JR松本駅
【2日目】岩波酒造→こばやし→松本城→JR松本駅→JR東京駅