青天の霹靂(せいてんのへきれき)というお米がある。青森県が2015年から販売している、お米の味を評価する食味ランキングで、特Aを獲得しているお米だ。つまり、最高においしいお米。このお米は非常にさっぱりとしていて、海鮮丼などに合う。
そして、青森県を思い浮かべてほしい。四方ではないけれど、三方が海なのだ。海産物がジャンジャンバリバリなのだ。ということは、最高のお米「青天の霹靂」と最高の海産物で、最高の海鮮丼ができるのではないだろうか。
海鮮丼というものがある。ご飯の上に新鮮な海産物が乗ったものだ。マグロもイクラもホタテものっている。誰もが好きなのではないだろうか。これを書いている私も大好きだ。海鮮丼のお風呂があれば、私は間違いなく長湯をする。大好きだからだ。
基本的に、どの海鮮丼もおいしい。ただ、もっと高みを目指したい。そこでいろいろ分析した結果、青森県が海鮮丼に適していると発見した。海に囲まれているし、青森のお米「青天の霹靂」はさっぱりしていて、海鮮丼に最適。青森は海鮮丼県なのだ。
最高の海鮮丼を求めて、新青森駅にやってきた。JR東京駅から東北新幹線でビューンだ。3時間ほどで着いちゃうのだ。青森は、マグロ、ホタテ、カレイなど海産物の宝庫。絶対においしいのだ。そして、海鮮丼は海鮮ばかりに気を取られがちだけれど、米の存在を忘れてはならない。
海鮮丼はお米なのだ。米がまずければ、海鮮が死ぬ。その逆もしかりだけれど、とにかく米が大切なのだ。そこで、食味ランキングで青森県が初めて特Aを獲得した「青天の霹靂」なのだ。コシヒカリのような甘みの強さがなく、さっぱりしている。つまり海鮮に合うのだ。
ちなみに食味ランキングは1位2位というランキングではなく、そのお米の絶対評価が特A〜B’で表される。今まで東北では唯一、青森県だけが特Aを獲得していなかった。
前田さんは「青天の霹靂」の生みの親のひとりだ。青森県の念願だった特Aのお米を作り出したのだ。
青森県といえば「つがるロマン」や「まっしぐら」という品種が有名だ。ただ残念なことに、この二つは特Aという称号を獲得するには至らなかった。現在も、共にAという評価。1989年に特Aという評価が生まれたけれど、青森だけはそれを取れなかったのだ。
東北では唯一青森だけが、特Aが取れない状態が長く続いた。青森にしても「うちは寒いから無理なのかも」と思い始めていた。ただ事件が起きる。北海道が2010年に「ななつぼし」、2011年に「ゆめぴりか」で特Aを取るのだ。青森より寒いはずの北海道が。
これで「寒さ」という言い訳ができなくなった青森は、青天の霹靂を生み出すわけだ。生み出すといっても、ずっと研究していたのだ。10年も20年もかけて。品種を作るのは時間がかかる。毎年150組以上を掛け合わせて、新たな品種を作る試験をしている。
青天の霹靂のすごいところは、品種としての素晴らしさだけではない。作る時に人工衛星による画像を利用してお米のタンパク質含有量を推定したり、最適な刈り取り時期を推定したりしている。さらに、作付け地域や出荷基準も厳しく定めてある。そりゃ、おいしいはずだ。
青天の霹靂の誕生により、青森県の米作りのレベルが底上げされ、まっしぐらのランキングは「A’」だったけれど、「A」に変わった(食味ランキングは毎年変わります)。今、青森のお米が熱いのだ。
……という話を、前田さんからお聞きした。本当はもっと詳しく聞いたのだけれど、ダイジェストにすると、このような感じになる。つまり、青天の霹靂は最高ということだ。そんなお米を手に入れた。あとは海鮮である。これは青森なので間違いないだろう。
海鮮は自分で調達しようと思っている。自分で釣って、自分でさばいて、海鮮丼にするのだ。自分で釣った魚を食べるのが夢だったのだ。しかも、青森だ。おいしくないはずがないのだ。青森駅周辺のホテルに宿泊し、明日は朝一で釣りをしようではないか。晴れ渡る空の下で大物を釣るのだ。
朝起きたら雨だった。すっごい雨だった。ワイパーがヘビメタバンドのヘドバンくらい激しく動いた。だって雨だから。勝手に晴れると思って、雨具を持ってこなかった。本気の雨具がないと濡れるレベルだけど、雨具がないのだ。高い竿を買ったから、雨具を買うお金がない。
ただよく考えると、青森のおいしいものは、青森のいろいろなところで売っている。スーパーでもいい、市場でもいい、道の駅でもいい。青森はおいしいもの宝庫。いくらでも簡単に手に入るのだ。切り替えていこう。
旅に出かけたら、スーパーに行ってほしい。地元の人が食べているものがあるからだ。旅に出ると観光地に行きがちだけれど、もし自分がここに住んだら、と考えてスーパーに行ったりすると楽しい。そして、買っちゃうのだ。旅先で調理しちゃうのだ。
青森駅から近い、県民福祉プラザの調理室を借りた。一般の利用者でも、1時間530円で借りることができる。旅先で料理するのは面倒と考えてしまうけれど、海鮮丼はお店で食べると高い。マグロやイクラをふんだんに使うと、2,000円は軽く超えてくる。自分で作った方が安いのだ。
青森のお米と青森の海鮮を使い、青森で海鮮丼を作る。青森丼と言ってもいいかもしれない。炊き上がった青天の霹靂を、思わず食べてしまった。とてもおいしかった。これに酢を混ぜて、海鮮丼を完成させる。
海鮮丼が完成した。1時間ほどの作業だ。正直な話、ひとりでこれをやると高い。ただ家族連れなど4人くらいで作れば、ひとり1,000円ほどでこの海鮮丼を食べることができるのだ。マグロなんて青森のもので中トロだよ。それでこの値段。
筋子を贅沢にのせた。イクラより安い筋子だけれど、海鮮丼に醤油の代わりにかけるのだ。これがおすすめ。筋子の塩気と味わいが海鮮丼全体に広がり、醤油よりおいしいのだ。こんな贅沢な使い方は、自分で作らないとできない。
おいしい。口の中ですべてが絡み合い、溶けていく。青天の霹靂のキレが、海鮮のおいしさを増幅させる。筋子を醤油代わりという私の発想も最高だ。海鮮に妥協がない味がする。カレイもアイナメもホタテも、すべて申し分ないのだ。最高なのだ。強いて問題を挙げれば……
海鮮丼はお店で食べるものだと思いがちだけれど、旅先でも作っちゃえばいいのだ。キッチン付きのホテルなども、今は珍しくない。そして、お米にこだわることが重要だ。海鮮は新鮮なら大体おいしい。新鮮な素材に出会えるか否かが重要だけど。お米がおいしければ、その海鮮が数倍のおいしさになる。もう青森は、海鮮丼に適しすぎた場所なのだ。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR新青森駅→青森県産業技術センター→JR青森駅
【2日目】青森港→カブセンター西青森店→アウガ新鮮市場→道の駅 ゆ~さ浅虫→県民福祉プラザ→JR青森駅→JR新青森駅→JR東京駅