東大生が教える夏休みの自由研究|キャベツで塩原温泉の泉質を調査!
夏休み後半、忘れちゃいけない自由研究!
楽しい夏休み、悩みの種になるのが「自由研究」ですよね。現役東大生である東大温泉サークルOKRメンバーも、ネタ探しに苦労した思い出が……。
今回は、上山(理系)と菊池(文系)が、家族旅行のついでにできる一石二鳥な自由研究のネタをご紹介します!
塩原温泉で泉質調査!
今回の目的地・塩原温泉郷は、6種類の温泉に恵まれた、さながら温泉博物館で、開湯1200年の歴史を誇ります。ひとつのエリアでさまざまな泉質を堪能できるという特徴を生かして、pH(ペーハー)という観点で泉質調査をしてみましょう。
pHとは水溶液の性質を表す単位です。小学校や中学校の理科の実験でリトマス試験紙を使って、酸性やアルカリ性などを調べたことがあると思います。温泉もさまざまな成分が溶け込んだ水溶液なので、それぞれpHが異なるのです。今回は、手軽に作れる「紫キャベツ液」を使ってpHを調べてみます。
なぜ紫キャベツで泉質がわかるの?
「そもそもなんで紫キャベツで泉質の調査ができるの?」
「紫キャベツに含まれる色素『アントシアニン』が、酸性とアルカリ性に反応するから。酸性の水溶液は赤色に、アルカリ性は緑色に変化するんだよ」
ここで、今回の実験に欠かせない「紫キャベツ液」の作り方をご紹介します。
<紫キャベツ液の作り方>
【材料】
・紫キャベツ 1/4個
【工程】
① 紫キャベツをざく切りにします。
② 容器に入れ、30分ほど冷凍します。冷凍することによって、色が出やすくなります。
③ 紫キャベツが漬かるぐらいの水を入れ、電子レンジで10分ほど温めます。
④ 色を確認します。薄ければ、さらに加熱します。
開放的な那須野が原がお出迎え
自作した紫キャベツ液を携え、那須塩原駅へ。東京駅からは新幹線でわずか70分と、あっという間。都心付近での渋滞に巻き込まれたりする心配もないのがうれしいですね。
駅でレンタカーを借り、車もまばらな高原の、ゆったりとした幅と規格の道路を悠々とドライブ。快適です。那須野が原は那須疏水(飲料・農業用の用水路)が作られてから開発された地域が多く、車窓を開けると感じる牧場の匂いが、この地とその開拓者たちを思わせてくれます。
塩原あかつきの湯へ
那須塩原駅から車を走らせること25分、最初の目的地である「塩原あかつきの湯」が見えました。
清潔な建物で、靴箱・脱衣所共に100円返却式ロッカーを備えています。浴場は、源泉がドバドバと勢いよく掛け流し。お湯に浸かってしばらくすると、体全体がヌルヌルとした感触に包まれます。アルカリ性の湯はpHが高く、せっけんのような感触になることが多いのです。
さっそく実験用として、ペットボトルにお湯を採取しました。
※今回の実験は、すべて施設の許可を得て行っております。お湯を採取する場合は、施設の方に声をかけてから行いましょう。
入浴後、さっと身支度を整えて、再びレンタカーに乗り込み、20分ほどの塩原温泉郷へ。国道から一気に蛇行する山道になり、ハンドルを握る手も慎重になります。
「もみじ谷大吊橋」や「竜化(りゅうか)の滝」などの観光名所を通り抜け、流されるように箒川(ほうきがわ)に沿って進みます。福渡(ふくわた)温泉を越えて細い道を抜ければ、川沿いに旅館が数軒だけ立っています。
明賀屋本館には、最高の景色が待っていた
今回宿泊する「明賀屋本館」に到着。
浴衣に着替えて、さっそく温泉へ。塩の湯温泉というだけあって、塩分の量は塩原一。塩分が体にまとわりつくため、保温効果があります。もう一方の湯は東日本大震災で湧きだしたという新源泉で、黒い単純温泉です。
続いて、メインの露天風呂へ。
88段もある木造の急な階段を、音を立てながら降りていきます。浴場は混浴(女性専用もあり)ですが、脱衣所は分かれています。
目の前に広がるのは、まさに絶景。浴槽からあふれたお湯が、目の前の鹿股川にドバドバと流れていきます。四つの浴槽ごとに温度が違うので交互浴も楽しめ、時間も忘れて入浴してしまいました。最後は忘れずに、実験用のお湯を採取。
紫キャベツ液を使って、pHを調査!
ひと風呂浴びた後は、紫キャベツ液でpHを調べてみます。紫キャベツ液を注いでみると、泉質の違いは一目瞭然。昼に行ったあかつきの湯は、青く染まったためアルカリ性。明賀屋本館の湯は、紫色のままなので中性を表しています。
「アルカリ性の水溶液の特徴は、せっけん水のような、ぬるぬるした感触と苦み。まさにあかつきの湯で感じたものだ」
「中性の明賀屋本館の温泉は刺激が少なく、優しく包まれるような感触だったよね。塩分を多く含んでいるから、しょっぱくて湯上がりがポカポカしたのも特徴だ」
無事、実験結果を得られたため、ぐっすりと就寝しました。
新湯温泉の中の湯で実験!
翌日は、明賀屋本館から車で15分ほどの新湯温泉へ。目当ての「むじなの湯」へは、階段を何十段か降りねばなりません。
浴槽に手を入れてみると、かなり熱めです。かけ湯を入念にし、息を吐きながら入っては我慢できずに出る。次は長めに入って、きつくなったら浴槽の外でのぼせた体を冷ましつつ、あふれる湯を味わう……。
じっくり入浴を堪能した後は、階段を上がり、大通りの反対側にある「中の湯」へ向かいます。
「中の湯」は比較的小さな共同浴場で、浴槽は4人も入ればいっぱいですが、その分、人がいる確率も低いので、ねらい目です(この時も、客は我々だけでした)。
先客が水を足したのでしょう、最初は少しぬるめに冷えていましたが、熱めの源泉を入れて微調整。白い湯に心まで溶けていきます。
満を持して採取したお湯を、その場で紫キャベツ液に入れてみると……弱い酸性を示す、うすい赤色に変化しました。お湯をなめてみると、酸性の湯の特徴であるレモンのような酸っぱさと、金属成分が原因の苦みを感じました。酸性の湯は、殺菌作用や、角質をはがす「ピーリング効果」が期待でき、湯上がりは肌がつるつるになります。
新湯温泉には共同浴場が3つあり、残りのひとつは混浴の「寺の湯」。その裏には噴煙が上がる「硫黄山」(硫黄が湧くところ)があり、迫力がありました。
再びレンタカーを走らせ、50分ほどで那須塩原駅に到着。帰りの新幹線を待つあいだ、駅構内で、おいしいパーコー麺を食べてのんびり。
●●結果発表●●
「温泉サークルのメンバーとしてさまざまな温泉を訪れているけど、泉質調査をしながらの旅は初めてで面白かったね。実験結果については、どういうふうにまとめられるかな?」
「pHが高いアルカリ性の温泉からpHが低い酸性の温泉と、塩原にはさまざまな泉質の温泉があると実験上でもわかったね。化学的な値であるpHと温泉で感じた手触りや肌の感覚、味や匂いなどの五感を結び付けることができたのがよかったと思う」
「そうだね。そもそも塩原温泉郷には、なぜさまざまな泉質が存在しているんだろう?」
「あくまでも仮説だけど、僕の考えはこう。塩原温泉郷の南には高原山という活火山があるんだ。むじなの湯や中の湯は高原山に近く標高が高いので、火山の硫黄などの成分が上がってきてpHの低い硫黄泉になった。明賀屋本館はそれらよりも低い場所にあって川に近く、地中の塩分や水分を含むことで硫黄などが薄くなるから、pHも中性寄りなんじゃないかな」
温泉旅行のついでに手軽にできる泉質調査実験いかがでしたか?
今年の夏の自由研究の題材として参考になれば幸いです。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR那須塩原駅→塩原あかつきの湯→明賀屋本館
【2日目】明賀屋本館→むじなの湯→中の湯→JR那須塩原駅→JR東京駅