春は山歩きを始めるのに適した季節。新緑や花木を愛でながらの低山ハイキングは心地よいものです。
山で見られる花木のなかでも人気が高いのが桜。低山ハイキングのガイドブックの著作も多く、四季を通じて山歩きを楽しんでいる私、山岳ライターの西野淑子が、山を歩き慣れていない初心者でも楽しめる、とっておきの「桜のお花見山」をご紹介。家族で、あるいはお友達どうしで、のんびりと桜のお花見を楽しんでみませんか?
都心からのアクセスがよく、ケーブルカーやリフトを利用すれば短時間で山頂に立てることから、1年を通じて多くの登山者に親しまれている、東京都のオアシス・高尾山。登山ルートの豊富さ、植生の豊かさも魅力です。
高尾山の広々とした山頂にはソメイヨシノが植えられていて、4月上旬に見頃を迎えます。天気に恵まれれば雪をかぶった富士山が眺められるのも嬉しい限りです。
桜の時期は高尾山の山頂から小仏城山へ向かう縦走路を歩いてみましょう。道沿いにソメイヨシノやヤマザクラが植栽されています。とくに本数が多い一丁平のあたりでは、桜のトンネルの中を歩くことができます。桜と時を同じくして咲くのが赤紫色のミツバツツジ。濃淡のピンクが山を染めています。
アクセス:京王高尾線 高尾山口駅下車
おすすめルート:高尾山口駅→清滝駅→ケーブルカー→高尾山駅→高尾山山頂→一丁平→高尾山山頂→高尾山駅
歩行時間:3時間
標高:599m
難易度:★★☆
スポット情報
高尾ビジターセンター
URL:https://www.ces-net.jp/takaovc/
埼玉県秩父市と皆野町の境にそびえる簑山。山頂一帯が「美の山公園」として整備されていて、山頂まで車でアクセスできるのですが、秩父鉄道の駅を起点に歩きやすいハイキングコースも整備されています。
この山は「関東の吉野山」とも称される、埼玉県を代表する桜の名所。山全体で約8,000本の桜が植栽されています。山頂の広場に咲いているのはソメイヨシノ。広々とした芝生の広場で、桜を眺めながらゆっくり過ごしたいものです。山頂の展望台に登れば秩父の名峰・武甲山(ぶこうさん)と両神山(りょうかみさん)が見渡せ、眼下には斜面一帯を桜が覆い尽くしているのが見えます。
桜の種類も豊富で、山頂の広場の一角にはヤエザクラ、オオヤマザクラなどさまざまな桜が次々に咲きます。桜の見頃は4月半ばから5月上旬にかけて。ゴールデンウイーク近くになると、山頂近くのヤマツツジも見頃を迎えて彩りが鮮やかになります。
アクセス:秩父鉄道 親鼻駅下車
おすすめルート:親鼻駅→みはらし園地→簑山→和同開珎の碑→和銅黒谷駅
歩行時間:3時間
標高:582m
難易度:★★☆
スポット情報
美の山公園
URL:https://www.pref.saitama.lg.jp/b0504/minoyamakouen-top/
大山や塔ノ岳など険しい山々がそびえる神奈川県西部、丹沢山塊の南端に位置する弘法山。お隣の権現山も含めた一帯が弘法山公園として整備されています。秦野駅から権現山、弘法山、吾妻山へと続く縦走路は、駅から近いにもかかわらず豊かな自然を満喫できる人気のハイキングコースです。
権現山は桜の名所としても人気が高く、広い芝生の広場の山頂を囲むようにソメイヨシノが植栽されています。山頂の展望台に登れば、桜の花の向こうに富士山や箱根の山々が一望できて気分爽快。例年の桜の見頃は山麓の街とそれほど変わらず、3月下旬〜4月上旬です。
権現山から弘法山に向かう途中、広々とした馬場道には、道の両側に桜が植えられ、桜並木をのんびりと歩くことができます。桜が見頃の時期にはライトアップされ、美しさが増します。
アクセス:小田原線 秦野駅下車
おすすめルート:秦野駅→権現山→弘法山→吾妻山→鶴巻温泉駅
歩行時間:3時間
標高:237m
難易度:★★☆
スポット情報
弘法山公園・吾妻山コース (秦野市観光協会)
URL:https://www.kankou-hadano.org/hadano_hiking/hiking_ka.html
中央本線や中央自動車道から眺められる、つるりとした岩の壁がよく目立つ岩殿山(いわどのさん)。戦国時代には山頂に山城が建てられていました。当時の建物も石組みなどは残っていませんが、城の跡を示す看板があちこちに立てられています。山梨県大月市が選定した、富士見の山「秀麗富嶽十二景」のひとつにも数えられており、山頂から眺める富士山の美しさに定評があります。
山頂の展望ポイントにはソメイヨシノが植栽されていて、満開の桜と白く雪を被った堂々とした富士山の姿が青空に映えて魅力的です。眼下に広がっているのは大月の街並です。山頂一帯にはヤマザクラが見られ、城跡をめぐりながらのお花見散策も楽しみのひとつです。岩殿城を模して造られた岩殿山ふれあいの館周辺も桜が多く、山頂とお城の建物、桜の景観が楽しめます。
※大月駅から最短で登頂できる強瀬ルートは2020年1月現在、岩殿山ふれあいの館〜山頂の区間が通行止め。途中のふれあいの館までは通行可。
アクセス:JR大月駅下車
おすすめルート:大月駅→畑倉登山口→岩殿山→往路を戻る→大月駅
歩行時間:3時間
標高:634m
難易度:★★★
スポット情報
岩殿山
URL:https://otsuki-kanko.info/category/content-page/view/188
花木を栽培する農家が敷地内の山に植え、その花の美しさが評判を呼び、花の見頃の季節になると敷地を一般開放している花見山公園。山の中には散策路が整備され、入口から30分〜1時間程度で周遊することができます。開花期間中は交通規制があり、マイカーの場合は臨時駐車場から、シャトルバスでのアクセスとなります。園内にはソメイヨシノをはじめ数種類の桜が咲き、さらには梅、レンギョウ、ボケ、ハナモモなどの花木も咲き誇ります。濃淡のピンクや白、黄色、朱色、さまざまな色が段だら模様に山の斜面を埋めるさまはまさに「桃源郷」の趣。
山頂展望場からは、桜の花の向こうに雪を被った吾妻連峰が眺められます。シャトルバス乗り場から花見山公園に向かう道中には菜の花畑が広がり、その向こうに花木に彩られた丘が広がっています。
アクセス:JR福島駅からバスで15分※桜の見頃に合わせて福島駅東口から花見山公園行きの臨時バス運行
おすすめルート:シャトルバス乗り場→花見山周遊→シャトルバス乗り場
歩行時間:1時間30分
標高:180m
難易度:★☆☆
スポット情報
花見山公園
URL:http://www.hanamiyamakoen.jp/
公園で見られる花は美しいですが、過酷な環境のなか、春を待ちかねて咲く山の花は、可憐さの中に力強さ、命のきらめきを感じます。桜の咲く時期、山はまだ肌寒いです。薄手のダウンジャケットやウールの手袋、帽子などの防寒具をお持ちください。温かい飲み物があれば身体の中から温まりますよ。
天気のよい日、ぜひ山の花に会いにいってみてください。よい山行を。
掲載情報は2020年2月27日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。