東大生を中心に、温泉好きな大学生が集まる「東大温泉サークルOKR(おける)」。温泉のためならどこへだって飛んで行く。今回レポートする女子メンバー2人は、珍しい温泉を求めて上越新幹線に揺られていた。
石油生産量が日本一という新潟県では、石油の採掘中に発見された温泉が多数あり、中には変わった温泉もあるのだとか。
日本一まずい温泉!? 油のにおいのする温泉!?
気になるこれらの温泉を、ばっちりレポートしよう。
JR東京駅を出た上越新幹線は、2時間ほどで新潟に到着。そこからさらに1時間弱、JR白新線、JR羽越本線と乗り継いでJR月岡駅へ。
月岡駅からは宿泊先のバスに送迎してもらい、月岡温泉街に到着。
ここ月岡温泉は100年以上の歴史を持つ、新潟県を代表する温泉地。美肌効果があるとされ、女性人気が高い。
硫黄含有量が全国第2位ということもあり、車を降りた途端、硫黄臭がむっと立ち込める。これぞ温泉街! という感じでうれしくなる。
まずは「日本一まずい温泉」を飲みに行く。
情緒あふれる街並みの中、メインストリート沿いを少し歩くと、温泉が湧く「源泉の杜」に到着。
飲泉できる硫黄泉は、全国でも珍しいのだとか。
においは硫黄特有の「ゆで卵のにおい」そのもの。
おそるおそる口に含む……お、意外といける? 確かにえぐみはあるが、飲めないほどではない。
しかし油断して口に含んだまま味わっていると、ぶわっと渋みが一気に口に広がった。
「うっ」
卵くささが口に立ち込めてきたので、あわてて飲み込んだ。う~む、なるほど。
例えて言うなら、「時間が経って風味が落ちたゆで卵をいっぱい口に詰め込んだ」という味。味わいながら飲むのは、かなりきついかもしれない。
適応症としては、肥満症や慢性消化器病などが挙げられていた。
良薬は口に苦しともいうし、これはかなり効いてくれそうだ。
月岡温泉街はメインストリート沿いにお店が集結しているので、散策しやすい。端から端まで、ゆっくり歩いても15分程度。団子屋さんや食事処などが連なり、湯上がりのゆるゆる散歩にぴったり。
散歩の途中で目に入った、しゃれた外観の「新潟地酒premium SAKE 蔵」に入ってみた。
おちょこ3杯600円で試飲ができる、日本酒好きにはたまらないお店。
ほかにも、新潟自慢の米菓を集めた店「田」や、コーヒーやワインなど新潟の香り豊かな飲み物をそろえた「香」、ご飯を片手に漬物や味噌を試食しながら買い物ができる「旨」と、近隣には「新潟地酒premium SAKE 蔵」の特徴ある姉妹店がそろっていて、巡るのが楽しい。
さて、温泉街に来たからには、おまんじゅうも食べなくては。
米製品おいしい! さすが新潟。
お米の性質かしら、ふんわり軽い口当たりで何個でも食べられる。
そして、メイン通りから足を延ばすこと約1分。「あしゆ 湯足美(ゆたび)」へ。
お湯は、やや熱め。
すぐに体中がぽかぽかに。疲れが癒やされる。
気づけば日が暮れていて、そろそろ宿へ向かう時間。
宿泊するのは「ホテル清風苑」。温泉街から徒歩すぐなのでありがたい。
さっそく温泉に向かうと……
美人の湯として名高い月岡温泉に入ってみて一番に感じたのは、硫黄の香りの強さ。硫黄が多く含まれている温泉には、血管を拡張して巡りを良くしてくれるという特徴がある。そのほかにも美白効果が期待できるといわれており、まさに美肌の湯といえるだろう。湯触りとしてはまろやかで、ほっこり落ち着く。
硫黄のにおいになじみのある私たちは平気だったが、中にはにおいが気になるという方もいるかもしれない。その場合も、温泉を使用していない大浴場があり、ジャクジーやサウナなど、さまざまな形でお風呂を楽しめる。
夕食は、お部屋食。
見よ、こんなに豪華なのだ。
そして!! デザートがこちら!!
どれも凝っていておいしい! 幸せ!
おなかも心も満足だ。
温泉の効果で、全身すべすべ。
丸一日、新潟の恵みに満たされて、気持ちよく目を閉じた。
翌朝、朝食のあとは、ホテルから歩いてすぐの「月岡温泉共同浴場 美人の泉」へ。
ロッカーに荷物を預け、さっそく浴場へ。
浴場に足を踏み入れると、目の前に広がる美しい色の温泉……!
月岡温泉のような硫黄泉は、空気と混ざることで、入浴剤と勘違いするほどの鮮やかなエメラルドグリーンに変わっていくそうだ。
さらにこの温泉、その日によって少しずつ違った色を見せてくれるとか。大自然の神秘を感じる。
お湯に入ってまず感じたのは、やはり硫黄臭。ホテルのお湯でも十分に感じられた「硫黄感」がぎゅっと凝縮されたような、濃い香りだ。噂に聞いていた油臭は、それほど感じられない。硫黄のインパクトが強すぎたのだろうか。
泉質は、含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。硫黄の効果はもちろんのこと、含まれた塩がベールのようにお肌を包み込んでくれるため、保温・保湿効果が長時間持続するのが特徴だ。
入ってすぐに血液の巡りが良くなり、ぽかぽかしてくるのが感じられた。
そして湯上がりに気づいたのが、「お肌がすべすべになってる……!」ということ。実は月岡温泉のお湯、余分な角質を取り除いてくれる作用まであるんだとか。これは、毎日通えば、とてつもない美容効果があるのでは……!?
お話を伺うと、美容にはもちろんのこと、適応症として慢性皮膚病が挙げられるなどお肌の健康にも良く、足しげく通う常連さんも多いとのこと。
広々とした休憩室まで完備され、あらゆるスペースがゆったりと使えるのも、とても魅力的。
身も心も癒やされて、湯美人に一歩近づけた気がする。
月岡を満喫した後は、羽越本線で約20分のJR新津駅へ。
新津駅で降りて、15分ほど歩いた先に……あった、「新津温泉」!
新津は歴史ある油田の町であり、石油の掘削時に温泉が湧き出してきたのだそう。油田が閉鎖されたあとも、油臭のする温泉を楽しむことができるのだ。
ここでついに、噂の温泉とご対面……!
さっそく脱衣所に足を踏み入れると、ほんのり香る油のにおい。これは期待が高まる。
ガラガラッと浴場の扉を開けてみると……「ああ、これだ!」。
油臭の温泉初体験でも、なるほど、と納得してしまう石油のにおい。大きく息を吸うと、鼻にツーンとくる。
これだけインパクトのあるにおいということは……お湯も刺激的なのかな……?
若干の懸念を抱きながらもお湯に触れてみると……
「このお湯……なんて優しいんだ……!」
意識よりも先に肌が叫びだすような、そんな感覚。
トロリとした肌触りで、とにかくマイルド。優しく肌を包み込んでくれるような、そんなお湯だ。これはいい意味で、期待を裏切られた……!
お湯の温度はそれほど熱めではなく、いつまでも入っていられる。独特なにおいも、むしろ心地よく感じられる。
これまで全国のさまざまな温泉を巡ってきたが、個性はピカイチかも。
この油臭、地下の奥深くからちょっとずつ染み出してくる石油成分によるものだそう。それが、この強烈なにおいを放つまでになるとは……。
泉質は、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。炭酸水素塩泉には古い角質を溶かして取り去ってくれる効果がある。ヌルッとした感触は、泉質と関係しているのだろうか。
入って感じた通り、お肌に優しく、アトピー治療にも効果が期待できるとか。実際に通われている方もいらっしゃるそうだ。
「油臭のする温泉」というと珍しくてディープなイメージだが、その強烈なにおいとは対照的な優しい湯触りなので、意外と入りやすい。温泉をある程度巡られた方はもちろん、温泉初心者にもぜひ入ってもらいたい、個性派の温泉だった。
お湯の素晴らしさ、そしてアットホームな空間への名残を惜しみつつも新津駅へ戻り、新潟駅から新幹線で東京へ。
飲んでびっくり、入って美肌効果バツグンの月岡温泉、一度入ればやみつき、油臭の新津温泉。家に帰り着いてからも、肌に触れるたびに、そのつるすべ感に頬がゆるんでしまった。また行きたい、何度でも行きたいと思える湯巡りの聖地・新潟を、ぜひ訪れていただきたい。
この記事の内容は2019年8月9日現在の情報です。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR新潟駅→JR月岡駅→源泉の杜→新潟地酒premium SAKE 蔵→元祖 月岡屋→結城堂串だんご→あしゆ 湯足美→ホテル清風苑
【2日目】ホテル清風苑→月岡温泉共同浴場 美人の泉→JR新津駅→新津温泉→JR新潟駅→JR東京駅