寝ても覚めても、おいしい料理とお酒のことばかり考えている編集者・【庄内グルメ旅】庄内野菜と旨い酒を、ツレヅレハナコがご案内!ツレヅレハナコさんによる「東日本のおいしいお酒と食べ物探しの旅」連載、第2弾! 山形県の中でも「おいしいものが集まる」といわれる、酒田市・鶴岡市=庄内エリアを訪れます。海と山に囲まれた庄内エリアは、日本海ならではの魚介はもちろん、昔ながらの在来野菜や果物が味わえる豊かな土地。「去年、酒蔵巡りに行ってから庄内にハマった!」というツレヅレハナコさん。お酒はもちろん、よりディープな美味食材を求めて庄内へ出かけました!
【行程】
庄内へ行くには、まずJR東京駅から上越新幹線で2時間ほどのJR新潟駅へ。そこから特急いなほに乗り換え、さらに2時間ほどでJR酒田駅に到着します。いなほの車窓からの眺めは、米どころらしいのどかな田園風景! のんびり缶ビールでも飲みながら、旅情を楽しみたい時間です。
酒田駅に到着! まずは古くから酒田を代表する老舗「川柳」へ、ワンタンメンを食べに行きましょうー。ん? しかし外観は、おそば屋さんっぽいような……。ほのかな疑問を抱きつつ店内へ!
店内のメニューには、中華そばと並んで、そばやうどんもズラリ。実は山形は、中華麺消費量全国第1位を誇る県。おそば屋さんでも普通に中華そばを食べる文化があるのだそう。というわけで、こちらの名物は、おそば屋さんだけれどワンタンメン! へー、おもしろいねえ。
「ワンタンメンください!」と元気よくお願いしつつご主人に話を伺うと、酒田はワンタンメンの専門店も多数存在する、ワンタンメン文化が根付いた土地とのこと。「うちは専門店じゃないけど、一番人気はワンタンメン。火が付いたのは、作家の椎名誠さんが気に入って紹介してくれたからかなあ」。そう聞いて壁を見れば、確かに椎名さんの色紙が! 私もファンなので「椎名さんのお墨付き!」とテンションも上がります。
さー、来ました。ワンタンメン! なんたる心躍るビジュアル! まずはひとくちスープをいただけば、煮干しの効いた濃厚だしが口中に広がります。細打ちの麺もふわふわのワンタンの皮も手打ちだそうで、「毎朝、地下で打ってるよ」って、ステキー。椎名さんが「雲にのるようなワンタンメン」と評したの、わかる気がしますわ。
おなかがいっぱいになったので、「かんぽの宿酒田」へ。宿泊も日帰りもできる温泉施設で、温泉地でもある庄内のお湯を堪能できます。今日は日帰り入浴を楽しませていただき、ゆっくりお風呂につかった後はマッサージチェアーへ。ああ、疲れもとれたし、小腹もすいてきたぞ(早い)。
※編集部注:「かんぽの宿酒田」は2020年3月に閉館しました
宿に荷物を置いたら、日も暮れる時間。さて、いよいよ本日のメインイベント! 寿司「鈴政」へお邪魔しますよ!
地物のネタをたっぷり楽しめるお寿司屋さんといったら、断然コチラ! 実は3度目なので、いそいそとカウンターに失礼いたします。最初にお酒とつまみを楽しんでから握ってもらうスタイルがいいなあ。今日は、何がオススメですか?
「今なら岩牡蠣だね。最高のが入ってるよ!」だそうなので、もちろんそれで! 「岩牡蠣は夏とともに終わり。でも秋なら秋、冬なら冬で、別に食べてほしいものがそろうよ」という言葉通り、いつ行ってもおいしいものがあるのがすごいよな~。
出てきたのは、特大の岩牡蠣! うわー、これひと口じゃ食べられないでしょ……。大きさだけでなく分厚さもすごいし、なにより食べて悶絶。なんじゃ、このミルキー具合! はー、確かにこれはすごい。ソッコーでお酒くださーい!
米どころの庄内は、もちろん地酒も豊富。酒田の「菊勇」の吟醸酒をいただきます。キリッと辛口で濃厚な牡蠣にはぴったり。
「うちに来たなら、ぜひこれを食べてほしい」と話すのが、のどぐろの塩焼き。えっ。のどぐろといえば、泣く子も黙る高級食材ですよね……(ゴクリ)。聞くと、高級だけに切り身でちまちま出す店も多い中、こちらでは一尾丸ごと。皆さんに食べてほしいから、お値段も手ごろに設定した、気合の入った一品なのだそう。
そこまで言われたら食べるでしょう! というわけで、一尾ドーン! 品のいい脂が乗りまくったトロトロの身は、のどぐろならでは。あー、これだけで3合くらい飲めちゃいそう……。
続きまして、テレビで紹介されてすっかり有名になった酒田の名物「むきそば」。皮をむいたそばの実をゆでたものに冷たいだし汁をかけて食べる郷土料理で、昔は畑仕事の合間の食事として重宝されたそう。「米だとふやけちゃうけど、そばはふやけない。冷たいだし汁だから、本来は夏の食べ物だね」。
今日はトロロと焼きのりが乗っていますが、葉ワサビやシイタケの煮物などをのせることもあるらしい。プチプチの食感と冷たいだし汁がよく合って、たしかにこれは夏にサラサラいきたい!
そろそろ握ってもらおうかなーというわけで、まずはキスから。夏を代表する魚で、皮目だけあぶってあります。さっぱりした白身で一貫目にぴったり!
お次はアカメフグ。庄内でよくとれるフグで、本当に目が赤いのが特徴。もみじおろしとポン酢で、こちらもサッパリ。
少しクセのあるスズキは、特製のごま醤油で食べるのが鈴政流。たしかに、スズキならではの香りが全く気にならない! さらに食べるぞー!
散々食べて、最後はふわふわの穴子でシメ。「これから秋や冬になると、日本海の本領発揮。脂の乗った濃厚でおいしい魚が出るから、また食べに来てね!」。はーい、次は真冬に来たいぞ!
あー、おなかいっぱい……だけどもう少し飲みたい。そこで訪れたのが、鈴政からタクシーで5分ほどの場所にあるワインバー「ラヴィ」。寿司からのワイン! 望むところだ!
階段を上がると、程よい照明で落ち着くわー。カウンターで、オススメのワインをいただきます。よいチーズもそろっているとのことなので、少しずつ盛っていただきました。濃厚な羊乳のチーズ、シェーブルはワインが進みます。
ワインは、山形・蔵王のワイナリー「ウッディファーム」のメルローを。上山市で育った自社ぶどう100%なんですって。そうだ、山形はワインも有名だよねー。チャーミングな果実味で、今夜もゆるゆると気持ちよくシメられそう。
カウンター内の女性店員さんとおしゃべりしてから、大満足して本日の宿、ホテルイン酒田駅前へ。はー、初日からよく飲んで食べたな……明日も飲み食いがんばるぞー(!)。
2日目は、またしても酒田駅から特急いなほに乗って、JR鶴岡駅へ。特急なら18分で到着です。
鶴岡駅から徒歩10分ほどの場所にある産地直売所が「JA鶴岡 ファーマーズマーケット もんとあ~る駅前店」。お土産を買うためにゴーゴー!
店内の一角に人だかりができてるな……と思ったら、ちょうど「だだちゃ豆」シーズン! この時期だけの枝豆で、生産者ごとに味見ができるよう並べられています。それぞれ味が全然違うので、自分好みの生産者のものを買うんですって。なるほどー。
庄内は在来種と呼ばれる、珍しい品種の野菜が豊富な土地。ここにも、聞いたことのない種類のなすが何種類も! これは買ってみたくなるなあ。
お昼は、鶴岡駅からタクシーで10分ほど移動し、庄内野菜をたっぷり食べられるというイタリアン「ベッダシチリア」へ。
※編集部注:「ベッダシチリア」は2022年11月に閉店しました
大きなガラス窓の目の前は一面の畑! わー、これは気持ちがいいシチュエーションだなあ。ランチは、前菜ビュッフェにパスタとデザートが付くコースにしてみました。肉や魚が付くコースなどもあるので、そのときのおなか具合で決めるといいかも。
なんといっても特徴は前菜ビュッフェ! 庄内野菜をたっぷり使った前菜が大皿に盛られ、棚にズラリと並んでいます。これだけでも充分ランチになりそうー。
舟形マッシュルームのオイル煮、焼きトマトのマリネ、ベーコンと小松菜のフリッタータ(卵料理)、なすのシチリア風マリネ、遊佐パプリカのペペロナータ(蒸し煮)、かぼちゃのアグロドルチェ(煮物)……。焼きたてのフォカッチャ(パン)は、じゃがいもキタアカリ入り。はー、どれも野菜の味が濃厚でおいしいなあ。
さらにランチには、お得な「昼飲みセット」なるものが付けられるのです。生ビールorワイン+生ハムで500円! これはもう、頼むしかない!
パスタは2種から選べますが、「揚げなすとサルシッチャのトマトソース」を。トマトソースに揚げなすがよくなじんで、めちゃうま……。目の前に広がる風景が、さらに幸せランチを盛り上げます。
前菜ビュッフェとパスタのコースは、コーヒーとデザートも付いて1500円とお得。「コーヒー風味のパンナコッタ」をいただきつつ、ホットコーヒーを。なんて満足度の高いランチ! 家の近くに本気で欲しい~。
大満足でランチを終えたら、タクシーで鶴岡駅に戻り、列車に乗って隣駅のJR羽前大山駅へ。こちらには、山形の在来野菜を使った老舗の漬物店「本長」があります。
まずは売店で、めくるめく漬物をチェック。こちらは酒粕を使った粕漬けや旬野菜の浅漬けなど、さまざまなお漬物を購入することができるのです。予約をすれば漬物蔵のご案内をしてもらえるので、さっそく見学へ!
人間が入れるほど大きな漬物樽がズラリと並ぶ蔵内。中には1798年(約220年前!)に作られた木桶が現役で使われていたりして、なんとも壮観~。
山形には160種以上の在来野菜が存在し、中でも庄内では数多くの品種が今でも生産されているそう。「周りを山に囲まれていたおかげで、外来品種が侵入もせず、出ても行きづらかったんですねー」と、ご担当者。こちらの会社では「藤沢カブ」「民田(みんでん)なす」など18種の在来野菜を漬物にしているのだとか。品種改良を繰り返して食べやすく育てやすくされているのが現在の野菜だけれど、本来はこんな感じだったのかと感慨深い!
お土産をどっさり買ったら、本長から徒歩5分ほどの「出羽ノ雪酒造資料館」へ。こちらは古くからの蔵が丸ごと見学コースになっており、大山の酒造りの歴史を見ることができます。
今は四蔵になった大山の酒蔵ですが、江戸時代には40以上の蔵がひしめくエリアだったそう。毎年2月には「大山新酒・酒蔵まつり」が開かれ、全国から多くの日本酒ファンが詰めかける人気イベントとなっています。私もお邪魔したことがあるのですが、新酒を飲みながら酒蔵を巡って、本当に楽しかった! 来年も参加してみたいなあ。
恒例の試飲をしてから、やはりお酒もお土産に。蔵を訪れると、お酒がさらにおいしく感じられちゃうわー。帰ったら漬物をつまみながら一杯やろうっと。
そんなことを考えながら、鶴岡駅へ。一路、新潟経由で東京へ戻る、おいしいものづくしの庄内旅なのでした。おなかをすかせて、また来るぞー!
おまけ。
鶴岡のJAで買ったパプリカは、自宅でマリネにしてワインのおつまみに。
たっぷり作って、残りはクリームチーズ、ジェノベーゼソースと一緒に、マフィンサンドにしました!
【全5回 連載】ツレヅレハナコの酒とグルメ旅
第1回:絶対に外さない秋田の名店酒場へ
第2回:庄内野菜と旨い酒を、ツレヅレハナコがご案内!
第3回:金目鯛&地酒…ツレヅレハナコ流伊豆の楽しみ方
第4回:【群馬グルメ旅】下仁田ネギの洋食&豚肉すき焼きに大満足!
第5回:【松本グルメ旅】そば屋呑み&クラフトビール&ウイスキー蒸留所を満喫
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR新潟駅→JR酒田駅→川柳→かんぽの宿酒田→鈴政→ラヴィ→ホテルイン酒田駅前
【2日目】JR酒田駅→JR鶴岡駅→JA鶴岡 ファーマーズマーケット もんとあ~る駅前店→ベッダシチリア→JR鶴岡駅→JR羽前大山駅→本長→出羽ノ雪酒造資料館→JR鶴岡駅→JR新潟駅→JR東京駅