【松本グルメ旅】そば屋呑み&クラフトビール&ウイスキー蒸溜所を満喫
食と酒と旅を愛する編集者・ツレヅレハナコさんの連載第5回目は、長野県松本市。信州ならではの美味を堪能します。
「そば、ジビエ、地酒、そして全国的に話題のクラフトビールやジャパニーズウイスキーも! 信州は昼も夜もおいしいものだらけで目移りしちゃいそう」と、ワクワクが止まらないハナコさん。特急あずさに乗って、いざ松本へ!
【行程】
- 特急あずさで、あっという間に松本へ
- 漬物や佃煮を肴に、そば屋で昼から酒を飲む
- 地元のそば粉を使った日本そばをシメに
- 信州の地酒が大集合! 人気の郷土料理居酒屋
- 信州名物「山賊焼」を地酒とともに
- 絶品の「松本一本ねぎ」と銘酒「大信州」
- 個性豊かな松本産クラフトビールを飲み歩き
- 松本ブルワリー直営店で、本日シメの一杯を
- 店主もハンター! 信州ジビエを堪能
- 理想の水から生まれた「森の蒸溜所」へ
- お待ちかねの試飲。原酒と白州の飲み比べ
特急あずさで、あっという間に松本へ
「特急あずさ」と聞いただけで「♪8時ちょうどのぉ~」と脳内狩人が熱唱し始めるのは私だけではないはず……。今まさに「特急あずさ」で松本方面に向かっていますよ!(注:歌の時代とは、運行ダイヤとかいろいろ変わっております)
JR新宿駅から特急あずさに乗れば、2時間50分ほどでJR松本駅に到着。「意外と近いんだなあ」と思いつつ、まずはランチへ向かいます。長野といえば、もちろん、そば!
漬物や佃煮を肴に、そば屋で昼から酒を飲む
何軒ものおそば屋さんが目に入る中、週末の昼どきは行列も覚悟の人気店! 「野麦」へ。長野県・辰野町産の粉を使ったそばは、「もり」と「かけ」のみ(しかも夏季は、「もり」一択になるそう)という硬派っぷり……かっこいい! 「でもちょっと怖い店なのかしら」とドキドキしつつ、席に着きます。
「そば屋=昼からお酒を飲んでつまみ、シメにもりそば」派なので、まずはお酒から。
ニコニコ接客してくれるご主人(怖くなくてよかった!)によると、お酒を1杯頼むと、おつまみがひとつ付いてくるシステムだそう。「3杯飲みます!」と言ったらおつまみ全種を出していただけました。わーい。
1杯目は、地元で人気のクラフトビール「松本ブルワリー」の「セッションIPA」をいただきます。さわやかな苦みにフルーティーな香りで、1杯目にぴったり!
2杯目は、そば屋さんといえばの「そば湯割り」。とろりとした濃厚な湯と香ばしい風味がたまりません! あったまる~。
おいしいなあとしみじみしていると、ふと壁のメニューが目に入った。「稲刻菜(いねこきな)の漬物」って? 聞くと信州松本に伝わる葉もの野菜の漬物で、葉よりも茎がおいしい漬物だそう。ご主人いわく、「野沢菜に押されちゃってるけど、おいしいからね。自家製で毎年漬けているんです」。へー、食べてみたい!
こちらが「稲刻菜の漬物」。アドバイス通り茎から食べてみれば、確かにコリコリとうまい! 乳酸発酵していて、酸っぱさが良いアクセントになっています。
3杯目は、諏訪のお酒「すっぴん太一」の無濾過生酒を。まろやかな口当たりだけどキレも良くて、延々と飲み続けられそう……。
地元のそば粉を使った日本そばをシメに
いつまでも飲んでいられそうだけれど、ここはそば屋! もちろん「もり」でお願いします。見るからにシャキッと感がわかる質感で、かなりの細さ! 石臼で挽いたそば粉を使った9割そばなのだそう。まずは、つゆをつけずにそのままひと口。しっかりとしたコシに、そば粉の香りがふわっと広がります。
添えられるそばつゆには、生わさびと辛味大根。2種付くのおもしろいねえ。まずはつゆだけで味わい、徐々に薬味を足していくのが最大限に楽しむポイント。
はー、昼からのんびり飲んで食べて大満足!
信州の地酒が大集合! 人気の郷土料理居酒屋
駅前の中町通りをぶらぶらしたりしていると、あっという間に日が暮れる。じゃあ、そろそろ飲みに行こうかしら。ぐふふ。目指すは地元の人気店「しんざん」!
カウンターのほか、座敷も広々とした大箱店。カウンターに陣取り、メニューを見て目移りします。だって、おつまみはもちろん、日本酒の品ぞろえがすごい!
「夜明け前」のにごり酒でスタート。とろりとした飲み口だけど後味スッキリ。メニューを熟読して、今夜のアテを決めます。
まずは「わさびの花」。冬の時期が旬だそうで、おひたしに。葉っぱなのに、食べるとピリッとわさびの風味と辛味!
信州名物「山賊焼」を地酒とともに
信州に来たなら食べたい、名物「山賊焼」も。地域によって表現に「焼き」「揚げ」などがあるようですが、松本は「焼き」! 鶏もも肉に、おろしにんにくをすり込んで下味をつけたものを豪快に揚げた料理です。名前の由来は「鶏揚げる」⇒「取り上げる」⇒「山賊」になったとか?
きゃー、サックサクの衣にジューシーな鶏肉! にんにくのパンチが効いていて、ボリュームがあるのにペロリと食べられちゃう。これは、うまーい!
ご主人にオススメの地酒を聞くと「上田市の酒蔵『信州亀齢』から出ている『小堺屋平助』を飲んでみて。なかなか飲めないお酒だから!」とのこと。地元民のオススメに間違いなし! 飲んでみればキリッと辛口で、山賊焼で盛り上がっていた口の中をクールダウンさせてくれるかのよう。うーん、リセットされちゃったから、まだまだいける!
絶品の「松本一本ねぎ」と銘酒「大信州」
メニューを見ると「松本一本ねぎ」なるものが。「ただ焼くだけでもおいしいよ。蒸して酢味噌もいいし、天ぷらにすると甘くなる」って、香味野菜好きなら頼まずにいられません。これはもう、ビギナーだから塩焼きだな! 網焼きすることで、ねぎのゼラチン質部分のとろっと度がアップ。うわー、これはたまらん。旬の地元ねぎ最強。
「松本に来たなら、これを飲まなきゃ」だそうな、きました「大信州」! いろいろな県外の人から「大信州、おいしいよ~」と聞いて楽しみにしていたのです。しかも純米吟醸の「番外品」なる、酒の澱(おり)を残した「おりがらみ」のまま瓶詰めされたスペシャルバージョン。あえて残された雑味が深い味わいになり、まったく飲み飽きない……あまりのおいしさに、同じものをおかわりしたくなったほど。
「信州は、イワナも刺し身で食べられるんだよ」とのことで、お刺身も。まったくくさみがなくて、コリコリとした食感が楽しい~。やー、食べた食べた。ごちそうさまでした!
個性豊かな松本産クラフトビールを飲み歩き
そこそこ飲んではいるものの、まだ宿には帰れません! なぜなら松本の夜は長い……地元「松本ブルワリー」の生ビールを出す店がたくさんあるそうなので、立ち寄ってみることにしました。まずはアイリッシュパブ「OLD ROCK」へ。
アイリッシュパブなので「ギネス」などもあるのですが、あえてクラフトビールを。この日は「トラディショナルビター」と「セッティングサン」のダブル開栓だそうなので、もちろん両方飲みますよ。
「セッティングサン」は、やわらかいけどしっかりとした苦み。これは、ぐいぐい飲めちゃうなあ。日本酒からのビール戻り、意外といいかも~。
「トラディショナルビター」は、英国で最も愛されているビールの醸造法だそう(だから、こちらの店で出しているのか!)。豊かな香りとほどよい苦みで、麦感がすごい!
2種類飲んだら、さらに興味がわいてきてしまった私。「もっといろいろな種類が飲めるところはないのかしら」と思ったら、すぐ近所にあるそう。えー! それなら、シメに寄るでしょう。
松本ブルワリー直営店で、本日シメの一杯を
というわけで、やってきました「松本ブルワリータップルーム 本町店」。
先ほどのバーから徒歩5分ほどの信毎メディアガーデン3階にある、カフェ風のお店です。直営店だけあって、松本ブルワリーの商品がズラリ!
迷った末に、この日の特別ラインナップ「ナイトロキャッスルスタウト」を。コーヒーやチョコレートのようなモルト由来の香りもしつつ、柑橘系なビターオレンジ風味も。クリーミーでシメの一杯にぴったりだー。日中なら眺めも良さそうなフロアでのんびり飲んだ後は、松本駅近くのホテルにて爆睡の1日目なのでした。
店主もハンター! 信州ジビエを堪能
2日目は、松本駅からスーパーあずさで30分ほどのJR茅野駅へ。そこからJR中央本線に乗り換えて、5分ほどでJR青柳駅へ。山に囲まれた信州が誇る、ジビエ(猟で捕獲した野生動物肉)料理のお店があると聞き、本日のランチにいざ!
青柳駅から徒歩10分ほどで「カントリーレストラン匠亭」に到着。ログハウス風の建物で、たしかにカントリー度が高い!
こちらのご主人は、ご自身も猟をするハンターでありシェフ。「諏訪エリアは、信州の中でも昔から狩猟が盛んな土地。地元のハンターは野生肉の処理方法を熟知しているので、くさみがなく、やわらかい鹿肉が手に入ります。メインは鹿肉ですが、イノシシ肉なども人気がありますよ」
鹿肉を使ったカレーやハンバーグなどもあるのですが、鹿肉自体を味わうなら「鹿肉のハンターステーキ」。ひとくち食べてみれば、確かにまったくくさみがなくてやわらかい……それでも肉自体の味は濃厚なのが野生肉ならでは。ほどよい赤身でサッパリしているのも、ぺろりと食べられてしまうポイントかも。
理想の水から生まれた「森の蒸溜所」へ
おなかがいっぱいになったところで、再びJR中央本線に15分ほど乗ってJR小淵沢駅へ。向かうのは、駅からタクシーで15分ほどの「サントリー白州蒸溜所」! 大人気のシングルモルトウイスキー「白州」の蒸溜所見学におじゃまするのです。3月下旬から12月までの土日祝は、小淵沢駅からシャトルバスが出ているので、要チェック。
「森の蒸溜所」と呼ばれる通り、緑豊かな木々に囲まれた広大な敷地の施設。うーん、なんて気持ちがいいところなのかしら……。サントリー2代目社長の佐治敬三氏は、新たな蒸溜所をつくるにあたって日本中の土地を探して回り、「ウイスキーづくりに欠かせない理想の水があるのはこの土地だ!」と建設を決めたのだそう。たしかに、とてもきれいな水が流れていそう。
予約をしていた「白州蒸溜所ツアー」は、定員25人という少人数での見学。ウイスキーのことをまったく知らない人でも楽しめる、充実した80分!
原料についての、丁寧な解説からスタート! 麦芽の香りをかいだり、ウイスキーならではの薫香をつける「ピート」も、実際に触ったりすることができます。
実際に材料を混ぜ合わせるタンクや、発酵させる木桶発酵槽も見学。こちらでは、すべての発酵を木製の桶で行っているのだそう。自然な素材でできているからこそ、周囲の森からの乳酸菌などの微生物も作用し、この場所ならではの味わいのウイスキーになるってロマンチックだわあ。蒸溜所内は、甘酒のような香りがして、胸いっぱい吸い込みたくなる!
目玉は、ウイスキーを蒸溜するためのポットスチル(蒸溜釜)! 形や大きさがバラバラなのは、さまざまな味わいのウイスキー原酒を造るためなのだそう。「優等生ばかりではつまらない。個性が強い子もブレンドすることで、よりおいしく面白いウイスキーができる」という解説が印象的。素敵ねー。
そこからバスで5分ほど移動し、たどり着くのは貯蔵庫。中に入ると、ものすごい数の樽、樽、樽! ひゃー、壮観だなあ……。これまでとは全く違う熟成の香りで、ぐっとウイスキーっぽくなってきたのを感じます。
お待ちかねの試飲。原酒と白州の飲み比べ
熟成についての解説をしていただいたら、いよいよお楽しみの試飲へ。きゃっほう!
テーブルにズラリと並ぶのは4つのグラス。左から「ホワイトオーク樽の原酒」、ピートで香りをつけた「ライトリーピーテッド原酒」、シングルモルトウイスキー「白州」、ハイボール用のシングルモルトウイスキー「白州」となります。香りをかいだり、色を見たりしながら、いざ試飲!
もちろん原酒は非売品。商品となった「白州」と飲み比べてみると、原酒の個性が、完成品で調和されているのがよくわかりますなー。度数もかなり高いので、水と混ぜながら少しずつ飲むのがポイント!
そして、サントリーがオススメする「ハイボールの作り方」レクチャーも。氷の入れ方や、混ぜるタイミング、回数など、細かいテクがたっぷり……確かに、これでつくるとさらにおいしいー。自宅でもやってみようっと。
帰りは売店に寄ってお土産を購入。「白州」は大人気のため品薄状態だそうで、「棚に並んでいたらラッキー」くらいの気持ちで!
その後、無事に帰宅し、夜は自宅で「白州」のロックを。あー、楽しかった!
東京から3時間ほどで行けちゃうとは思えないほど充実な松本の旅。近いうちに再訪することを決めた晩酌なのでした。
【全5回 連載】ツレヅレハナコの酒とグルメ旅
第1回:絶対に外さない秋田の名店酒場へ
第2回:庄内野菜と旨い酒を、ツレヅレハナコがご案内!
第3回:金目鯛&地酒…ツレヅレハナコ流伊豆の楽しみ方
第4回:【群馬グルメ旅】下仁田ネギの洋食&豚肉すき焼きに大満足!
第5回:【松本グルメ旅】そば屋呑み&クラフトビール&ウイスキー蒸留所を満喫
今回の旅の行程
【1日目】JR新宿駅→JR松本駅→野麦(そば)→しんざん(居酒屋)→OLD ROCK(アイリッシュパブ)→松本ブルワリータップルーム 本町店
【2日目】JR松本駅→JR青柳駅→カントリーレストラン匠亭→JR小淵沢駅→サントリー白州蒸溜所→JR小淵沢駅→JR新宿駅