今回の列車旅ポイント
こんにちは。美味しいものと写真を撮ることが大好きな、写真家の大村祐里子です。
今回は、郷土料理を満喫しながらフォトジェニックなスポットをめぐりたい! と思い、世界遺産の白川郷や美しい飛騨の町並みを堪能してきました。
東京駅から北陸新幹線に乗って2時間10分。まずは富山駅へ向かいます。
富山駅で北陸新幹線を下車し、駅前のバスターミナルへ移動します。濃飛バスが運行する高速バスに乗り1時間20分で目的地である「白川郷」に到着!
白川郷バスターミナルから徒歩13分くらい、「荻町城跡(おぎまちしろあと)展望台」に着きます。まずは、断崖絶壁から合掌造りの集落を一望! これからあの中を歩くのだ……と、期待に胸が膨らみます。
荻町城跡展望台から歩いて合掌造り集落へ向かいます。集落の中心まで徒歩15分ほど。
「合掌造り」とは、木の梁を山形に組み合わせて建てられた日本独自の建築様式のこと。外から見たその形が、まるで掌を合わせたように見えることから「合掌」造りと呼ぶようになった等、諸説あるようです。厚みのある茅葺(かやぶ)き屋根が特徴的です。
白川村の荻町地区は、大小114棟の合掌造りが残っています。この合掌造り集落は1976年に国の重要伝統的建造物群保存地区として選定され、さらに1995年にはユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。
集落内ではいまも人々が生活しています。ゆえに、景観の中に、この土地の文化や暮らしが深く溶け込んでいるように感じられました。
たとえば、合掌造りはとても火に弱いので、集落内では万が一の火災に備えて常に消火訓練を行っており、水路や「放水銃」と呼ばれる消火施設を村の至る所で見ることができます。
お腹も空いてきたところで、白川郷バスターミナル方面に戻り、ターミナルの横にあるお食事処「いろり」で昼食をいただくことにしました。
「いろり」では、囲炉裏を囲みながら、飛騨・白川郷・五箇山で採れた新鮮な山菜、野菜などをふんだんに使ったお料理が堪能できます。
よくばりな私は、飛騨の食材が一気に楽しめる「いろり定食」を注文しました。
飛騨牛は柔らかくて霜降り具合も適度で、とっても食べやすくて美味しい! 心もお腹も最高に満たされました。
昼食後は、「いろり」から徒歩7分ほどのところにある合掌造り民芸館「神田家」の見学へ。
室内では囲炉裏に火がくべられており、炭の匂いに郷愁を感じます。静謐(せいひつ)な雰囲気の家屋内を歩き回っていると、思わず時間を忘れてしまいます。
合掌造りの二階と三階は、かつては養蚕の作業場として使われており、現在は当時の養蚕具などが展示されています。
二階、三階は、床がすのこ状になっているので、三階にも一階で炊かれた囲炉裏の煙が充満していました。調べてみると、囲炉裏の煙が上にのぼり、茅に煤(すす)が付着することで、湿気による腐敗や虫の発生を防止する効果があるそうです。
合掌造りは、周囲の自然と調和した造形美を保ちながらも、非常に合理的な構造をしているものなのだと知りました。
神田家から徒歩9分ほど、集落から少し外れたところに、「野外博物館 合掌造り民家園」があります。ここでは、岐阜県の重要文化財指定建造物9棟を含む全25棟の建造物が保存・公開されています。先ほどの集落と違い人々が生活しているわけではなく、テーマパークという位置づけです。
その合掌造り民家園の中にある「旧中野長治郎家住宅」は園内のお休み処となっており、「もち入りぜんざい」などをいただくことができます。
※もち入りぜんざいは例年11月〜3月までの販売です。
火のくべられた囲炉裏の前に正座していただく「もち入りぜんざい」は格別の美味しさ。
旧中野長治郎家住宅も二階より上を見学できます。二階では、室内に充満している煙のおかげで、窓から差し込む光の筋がはっきりと見え、なんともロマンティックでした。
そろそろ日没の時刻。白川郷バスターミナルから徒歩13分ほど、再び「荻町城跡展望台」へ。
合掌造り家屋の障子窓にぽつぽつと明かりが灯り、集落が、昼間とはまた違った幻想的な空気に包まれていました。
白川郷バスターミナルへ戻り、無料シャトルバスで10分ほどのところにある、2019年3月にオープンした「天然温泉 ゆるりの湯 御宿 結の庄」に宿泊します。
夜ごはんは、四季折々の旬を愉しめる和食会席料理です。飛騨牛や美濃古地鶏など飛騨の食材が使われ、「すったて汁」などの郷土料理、山の幸や海の幸をたらふくいただけます。
※食事内容は季節により異なります。
お腹いっぱい、幸せな気持ちで就寝します。
翌朝は5時に起床して、まずは貸し切り露天風呂「星雲の湯」へ。なんとも贅沢な一日の幕開けです。
支度が終わったら、結の庄で電動自転車をお借りして、白川郷までサイクリング! 宿から合掌造り集落までは15分ほどです。
自転車は車と違って、素敵な景色を見つけたらそこで一時停止できるので、写真を撮る人にはもってこいだなと思いました。
時刻は9時少し前。早朝の集落は観光客もまばらで、昨日と同じ場所とは思えぬほど静かです。観光客はだいたい10時すぎから増え始めるらしいので、落ち着いて静かな集落を楽しみたい方は、前日に白川郷に泊まって、早朝に集落を訪れるというプランがおすすめです。
編集部注:サイクリングは冬季休止(12月~4月半ば休止の予定 ※雪の状況により)
宿から自転車で15分ほど、「荻町公園」の真横にある、甘味処「いさなみ」でご当地グルメを堪能することにしました。
注文したお団子やお餅が焼き上がるまで、ご主人との会話が弾みました。混み合う時間帯だとお店の方と会話を楽しむことがなかなかできないので、これは朝の特権だなと思います。
「五平餅」が美味しすぎたので、調子に乗って「みたらし団子3本」も注文しました。お団子は甘さ控えめ、フワフワモチモチで、3本ペロリといただいてしまいました。
白川郷集落に別れを告げ、白川郷バスターミナルからJR高山駅行きの高速バスに乗ります。1時間ほどで高山濃飛バスセンターに。隣接するJR高山駅で高山本線に乗り換え、15分ほどで飛騨古川駅に到着。
飛騨古川駅は、大ヒットアニメ映画『君の名は。』のモデル地として有名で、いまでも聖地巡礼に訪れる方が多いそうです。駅前のロータリーは、瀧くんが三葉ちゃんを捜しに来たシーンに登場するあの場所! アニメの記憶と目の前の情景が一致することで急にテンションが上ります。
駅からぶらぶらと町を散策してみます。白壁土蔵の横を水路が走っていて、その水面に黄色く色づいた銀杏の木が映り込んでいる……なんと情緒豊かな光景なのでしょう。
こちらは老舗の酒蔵、「渡辺酒造店」。このように、建物が格子で覆われているのも、飛騨古川の家屋の特徴のひとつです。
飛騨古川駅から歩いて5分くらいのところにあるお土産処「飛騨古川さくら物産館」では、『君の名は。』に重要アイテムとして登場する組紐が展示され、体験も可能です。三葉と四葉とおばあちゃんのシーンに出てきたやつだ! とニヤニヤ。
昔から薬草を暮らしに取り入れてきた飛騨市は、薬草を地域資源として生かしたまちづくりに取り組んでいるそうです。
飛騨古川駅から歩いて5分ほどの「蕪水亭OHAKO」は、そんな薬草料理をいただけるカフェです。
薬草料理をふんだんに味わえる「薬草ランチプレート」を注文しました。8種類の薬草でつくられたスープ、メナモミのパウダーが練り込まれたハンバーグ、トウキやウイキョウが使われたドレッシング、メナモミを使ったシフォンケーキ……。お店の方に説明していただいたのですが、聞いたことのない名前の薬草ばかり。
※2020年現在メニューが変更になっています。
薬草と聞くと、どうしても「苦くてマズい」というイメージが先行しますが……この「薬草ランチプレート」はそんなイメージを完全に払拭してくれます!
ランチのあとは「蕪水亭OHAKO」から徒歩1分ほどの「ひだ森のめぐみ」へ。こちらでは、薬草の標本の常設展示や商品の販売、薬草を取り入れた各種ワークショップを開催しています。
店内には、瓶に入った薬草がたくさん展示され、薬草茶の試飲もできます。8種類の薬草をブレンドしたお茶をいただきましたが、アッサリとして癖がなく飲みやすかったです。
この町にいると、薬草のイメージがどんどん良い方向へ変わっていきます。
次は「ひだ森のめぐみ」から徒歩4分「MOTHER’S HOUSE」へ。
飛騨市出身の「マザー」こと小倉夕子さんが古民家を改築して始められたゲストハウスです。
広くてきれいなキッチンでは「ベーグル作り体験」ができるとのことで、参加させてもらうことにしました。
ホワイトボードに書かれた手順に従って、生地をこねたり、形をつくったりします。ベーグルの生地とトッピングは、いくつかの候補の中から好きなものを選べます。私はえごまの生地にくるみをトッピングすることにしました。マザーはほうれん草の生地に、チーズをトッピング。
生地を休ませるあいだ、マザーとおしゃべりしていた時間も、女子会のようでとっても楽しかったです。
1時間くらいで、焼き立てベーグルの出来上がり。手作り、というだけで愛おしさが倍増。帰りの新幹線の中でいただくオヤツに決定。
飛騨古川では、毎年1月15日に「三寺まいり」という行事が行われています。これは浄土真宗の宗祖・親鸞聖人を偲んで市内の3つのお寺に人々が詣でたことがはじまりです。
この「三寺まいり」を、年間いつでも参拝できるようにしたのが「三寺巡礼」です。
せっかくの機会なので、私も三寺巡礼をしてみることにしました。MOTHER’S HOUSEから徒歩5分ほどにある「飛騨市観光協会」で「三寺巡礼セット」を購入します。中には三寺巡りマップと、お守りがひとつ入っています。
各お寺にはスタンプが用意してあり、お参りが済んだら、セットの中に入っている「願いごと札」に、そのお寺のスタンプを押します。3つすべて揃ったら「願いごと札」の一番下にある「願いごと」欄に自分のお願いごとを記入し、そこだけ切り取ってお寺にあるポストに投函します。
スタンプを押した部分は折りたたんで、お守りの中に入れて大切に持っておきます。そうすると、お願いごとが叶うのだそうです。
「三寺巡礼」は、淡々とすすめれば1時間もあれば終わりますが、それだけでは勿体ない。その間にいろいろなお店へ寄り道しましょう!
巡礼の途中で、1月15日の三寺まいりで使われるろうそくを作るお店「三嶋和ろうそく店」を見つけました。恋愛成就などの願いを込めておまいりする時には白いろうそくを灯し、もしもその願いが叶ったら、次の年には赤いろうそくを灯すという風習があるそうです。赤いろうそくの数だけ幸せを感じることができるのですね。素敵。
日も暮れて、名残惜しいですがそろそろ旅も終わりに近づいてきました。
三嶋和ろうそく店から、5分くらい歩くと飛騨古川駅です。飛騨古川駅から高山本線に乗り、1時間20分ほどで富山駅へ、そこから再び北陸新幹線に乗って東京に戻ります。
本当に2日間しか経っていないのだろうか? と思うほど盛りだくさんの旅でした。美味しい郷土料理を満喫してお腹はいっぱい、フォトジェニックなスポットをたくさんめぐってカメラのメモリもいっぱいです!
掲載情報は2020年10月23日更新時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
いさなみ
住所:岐阜県大野郡白川村荻町177-1
営業時間:午前9時30分~午後4時30分
定休日:木曜定休
今回の旅の行程
【1日目】東京駅→富山駅→白川郷バスターミナル→荻町城跡展望台→荻町合掌造り集落→いろり→神田家→中野長治郎家→荻町城跡展望台→結の庄
【2日目】結の庄→荻町合掌造り集落→いさなみ→結の庄→白川郷バスターミナル→高山駅→飛騨古川駅→蕪水亭OHAKO→ひだ森のめぐみ→MOTHER'S HOUSE→三寺巡礼→飛騨古川駅→富山駅→東京駅