今回の列車旅ポイント
こんにちは。東京大学2年の藤田創世です。「東京大学クイズ研究会」に所属し、クイズの早押しボタンを押しながら楽しい学生生活を送っています。ちゃんと勉強もしていますよ。
いつからか、クイズで得た知識を実際に現地で見て、感じてみたいと思うようになりました。というわけで、歴史と文化の詰まった信州の大糸線沿線に旅立つことに。長野県を訪ねるのは生まれてはじめて。新しい発見がたくさんありそうです。
朝のJR新宿駅にやってきました。あいにくの曇り空の下、特急あずさがその車体を駅のホームに滑り込ませてきます。
JR松本駅までおよそ2時間30分の列車旅。見慣れた中央線の駅が窓の外をあっという間に過ぎ去って、山梨に入ってからは次第に山々が連なる、非日常の風景が現れてきます。
頬杖をついて外を眺めていると、頭がのんびりモードに切り替わっていきます。
松本駅に着いたら、大糸線の「リゾートビューふるさと」に乗り換えます。
乗り換えに時間の余裕があったので、駅を出て、黒い姿が目を引く松本城を見に行きました。
そろそろ発車時間、駅のホームへ向かいます。
取材時に乗車したリゾートビューふるさとは長野県のPRキャラクター「アルクマ」をラッピングした車両でした。
松本駅から南小谷(みなみおたり)駅までは途中停車も含めて約2時間20分。広い窓から、左手に広がる北アルプスの山並みが楽しめるんです。
出発して約23分、穂高駅に到着。30分ほど途中停車するため、この時間に、駅から徒歩約3分の「穂髙神社」へ向かいます。陽光で輝く荘厳なたたずまい。境内にはニワトリが、偉そうな顔で歩いていてびっくり。
参拝をしたら、再び穂高駅から南小谷駅を目指します。
リゾートビューふるさとは、客室からの眺めがとってもいいんですが、より贅沢な景色を堪能したい時には先頭車両の展望室へ。
南小谷行では絶景スポットである仁科三湖(木崎湖、中綱湖、青木湖)付近で減速してくれます。眼前に広がるのは、最も南にある木崎湖!
すごい。
そろそろ最初のクイズの時間とします。
<1問目>
リゾートビューふるさとが走る大糸線。その大糸線の名前の由来、気になりますよね。
大糸線の「糸」の由来は、次のうちどれ?
A:JR糸魚川駅が終点だから
B:沿線で糸の生産が盛んだから
C:山あいを糸のように細くぬって進むから
D:座席を糸で何度もつくろって綺麗にしたから
※答えは記事の最後に
終点、南小谷駅に着きました。
おいしいお蕎麦を求めて、「おたり名産館」へ。
駅からまっすぐ続く国道を歩きます。時々車が通ると、近づいてくる音から遠ざかる音まで、ごおお……とずっと聞こえてきます。普段は滅多に聞こえない音。祖父母の住む田舎を思い出します。徒歩約10分で到着。
「山菜そば」をオーダー。小谷村でとれた山菜が使われています。山菜はほんのり青くて、しっかり甘い。蕎麦は蕎麦殻まで一緒に挽いているとのこと。育った土の味わいまでしみているような、いい香りが広がります。
ここで、お蕎麦に関するクイズを出題します。
<2問目>
かつて江戸の町民を苦しめた病気、脚気(かっけ)。足のしびれや心臓への悪影響があったそうですが、なんと、蕎麦を食べると防止できたというんです。効果的だったのは、蕎麦に含まれるどんな成分?
A:ビタミンA
B:ビタミンB1
C:ビタミンC
D:ビタミンD
※答えは記事の最後に
かつて、海のない長野に塩や海産物を届けた塩の道が通る小谷村に別れを告げて、再びリゾートビューふるさとに乗って、穂高駅に向かいます。
所要およそ1時間半、夕空の穂高駅にやってきました。しめ縄がついて、神社みたいな門構えの駅舎です。
穂高駅から送迎バス(要予約)に乗って15分、本日の宿泊先、「安曇野穂高ビューホテル」に向かいます。
丁重に出迎えてくださって、なんだか恐縮です。
到着早々、疲れた体を露天風呂で癒します。虫の声が聞こえます。透明なお湯は、ほんの少しだけぬめりがあるようです。
お湯から上がると、夕食の時間。
上の写真に加えて、ご飯と味噌汁、牛の焼肉、酢の物、漬物にデザートがつきます。
気になったのは信州サーモン。信州は内陸なのに、どこから捕ってきたんでしょう? 実は、養殖品種なんです。マスといえばやや淡白な味を予想しますが、信州サーモンは果たして?
……旨みを含んだ脂がとっても美味。なかなか噛み応えがあって、ゆっくり咀嚼して味わえます。これは満足。好きなものは最初と最後に半分ずつ食べるのが自分流なのですが、幸い三切れあったので食事の間にも一切れいただけます。ありがとう。
大満足の夕食を終え、また温泉に入ってから、部屋に戻っておやすみなさい。
朝食はバイキング。新型コロナウイルス感染症予防のため、料理を選ぶ時はマスクとビニール手袋の着用必須です。
写真右上の皿はわさびのおかず三種盛り。やっぱりつんときます。そのまま食べると口の中がわさび100%になって、ちょっと涙ぐんでしまうのですが、素材の味が楽しめておすすめです。
ここで、わさびに関するクイズです。
<3問目>
日本人なら知って損はない、ことわざ。わさびに関するものもあります。
わさびの品質(と、日本の伝統芸能「浄瑠璃」)を称賛するこのことわざ、空欄に当てはまるのは?
「わさびと浄瑠璃は、◯◯◯ほめる」
A:叫んで
B:笑って
C:泣いて
D:怒って
※答えは記事の最後に
またまた温泉を堪能して、ホテルをチェックアウト。お世話になりました。
2日目は安曇野をサイクリングする予定。ホテルの前の「安曇野シェアサイクル」で自転車を借り、出発。快調な1日の始まりです!
……と思ったら、この旅イチの驚きが!
道路脇のガードレールの下から、サルが這い出てきました。普段は動物園で遠巻きに眺めるだけのサルですが、こうして見るとでかい。かわいくはない。威厳ある感じです。突如近づいてきた人間に、あちらも驚いたのかそそくさと逃げていきました。いや、大自然すぎるでしょ。
サルを見送り、長い坂道を下ります。マスクを外すと、朝の冷気が顔全体を覆います。マスクをしていると気づかなかったけれど、湿った空気と葉っぱのいい匂いがずっと広がっているんですね。口を開けていっぱいに吸い込みます。
ここ安曇野の道に点在するのが、道祖神。道端に設置され、地域にご利益をもたらす存在として昔から大事にされてきました。特にこの辺りは数が多く、種類もいろいろあるらしい。ちょっと探してみます。
ホテルでもらった道祖神マップと、スマホの地図を見比べながら、道を行ったり来たり。最初に見つかった道祖神はこちら。そこそこ苦労したので、見つけた時は軽くガッツポーズです。
ここで、道祖神に関するクイズ。
<4問目>
道祖神の中でも、安曇野で特に多く見られるデザインは、次のうちどれ?
A:幸福がにじみ出る「握手」のもの
B:シンプルイズベストな「文字」だけのもの
C:悪霊を退散させる「七福神」のもの
D:歴史を感じさせる「昔の偉人」のもの
※答えは記事の最後に
見通しの良い田園地帯に出ると、雲間から差す日光に山が照らされて、雄大な眺めが広がります。写真では伝わりにくい光の色合いや風を切る爽快感、匂いや音。ぜひ現地で味わって欲しいです。
穂高駅前で自転車を返し、徒歩7分ほどの「碌山(ろくざん)美術館」に向かいます。
ここ安曇野に生まれ、20世紀初頭にフランスで彫刻を学び、30歳で夭折するまでに日本近代彫刻史に名を残す数々の作品を生み出した、荻原守衛(おぎはらもりえ/碌山の本名)の作品と資料などを保存・展示しています。
れんが造りの荘重な建物は、地元の学生などおよそ30万人の支援のもとに建てられました。
「絶望」を意味するこの作品。女性の背中の流線形やポージングに見とれてしまいます。光沢や質感も美しい。
こちらは最も有名な作品『女』。重要文化財に指定されています。後ろ手に縛られた不自由なポーズと、上を向いてどこか安らかな表情をしている姿が対比的です。
ここで、碌山に関するクイズです。
<5問目>
碌山の芸術に、インスピレーションを与え続けた女性がいます。彼女の名は相馬黒光(そうま こっこう)。自身の夫・相馬愛蔵(そうま あいぞう)とともに碌山などの文化人に理解を示していたのですが、実は今でも続くある老舗の創業者なんです。碌山は夫ある身の彼女に恋し、その感情を名作へと昇華させたともいわれています。
さて、相馬夫婦が創業したその老舗とは?
A:文明堂
B:石屋製菓
C:舟和
D:新宿中村屋
※答えは記事の最後に
このお店は創業当時、東大の近くにあったそうで、なんだか縁を感じます。
そろそろ帰途に着く時間になりました。安曇野、ありがとう。
穂高駅から松本駅までは、大糸線各駅列車の旅です。地元の人たちが乗り降りするローカル線。北アルプスを横目に、地元の人たちの話し声や、線路と車輪の触れる音、どこからともなく聞こえる自然のざわめきに耳をかたむけて。
松本駅に着いて、再び、特急あずさで新宿駅へ。
牧歌的な風景に、歴史と自然と人々の暮らしが重なる安曇野。きれいな空気を吸うだけでも、訪れる価値ありです。
<クイズの答え>
1問目:A(JR糸魚川駅が終点だから)
2問目:B(ビタミンB1)
3問目:C(泣いて)
4問目:A(幸福がにじみ出る「握手」のもの)
5問目:D(新宿中村屋)
掲載情報は2020年11月27日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】新宿駅→松本駅→松本城→松本駅→穂高駅→穂髙神社→南小谷駅→おたり名産館→穂高駅→安曇野穂高ビューホテル
【2日目】安曇野穂高ビューホテル→安曇野散策(サイクリング)→碌山美術館→JR穂高駅→JR松本駅→JR新宿駅