今回の列車旅ポイント
こんにちは、温泉ライターの泉よしかです。
日々の忙しさに疲れた心と体を癒やせる温泉に行きたい。湯めぐりしつつその土地ならではの心ときめく体験がしてみたい。そう思って1泊2日で山形県の蔵王温泉へお出かけしてきました。
北へ向かう旅はいつもわくわくします。今日は晴れの予報ですが昨日の蔵王は雪が降ったそう。思わず防水のブーツを準備しちゃいました。
JR東京駅からJR山形駅までは山形新幹線「つばさ」で3時間弱。途中、福島駅で「やまびこ」と切り離され、奥羽本線に入ります。
山形駅から山交バスの蔵王温泉行きに乗ります。本数は約1時間に1本。終点「蔵王温泉バスターミナル」までは37分と意外に近い!
蔵王温泉は私の大好きな温泉ですが、車以外で行くのは今回が初めてなのです。東京から新幹線とバスでこんなに簡単、かつ快適に行けるんだというのはまさに目から鱗でした。
今回泊まる「五感の湯®︎つるや」は、バスが到着する蔵王温泉バスターミナルのすぐ向かい側にあります。チェックインには早いですが、散策の前に荷物を預かってもらいましょう。
さらに「つるや」に宿泊すると、温泉街にある3つの共同浴場の入浴券(蔵王温泉共同浴場 入浴協賛券)が無料でいただけるという特典があるはず。えっ、それも今受け取りOKですか?
やったー。嬉しい! これでこころおきなく湯めぐりができます。
蔵王の温泉街に入るといきなり硫化水素のにおいが。そうですよ、これが山の温泉の醍醐味。でもまずは腹ごしらえから。
「つるや」から徒歩約1分。ランチは温泉街入口に建つ「食事処きくち」へ入りました。
とりあえずお店のご主人におすすめを伺ってみると、「うちは蕎麦屋だから蕎麦! なかでも冷たい肉そばが特におすすめ」とのこと。それでは冷たい肉そばをひとつお願いしまーす。
ご近所・山形県河北町のB級グルメとしても知られる「冷たい肉そば」。冷たいために麺が伸びにくく最後までコシを楽しめるのが特徴です。
山形県産そば粉「でわかおり」を使っているのがきくちのこだわり。鶏の出汁が効いたちょっと甘めのつゆが特徴です。
お腹がいっぱいになったらいよいよ湯めぐり。蔵王温泉には歩いて3~5分程度で回れる距離に3つも共同浴場があるんです。
「食事処きくち」から温泉街のメインストリート、高湯通りを上っていきます。徒歩約2分で「下湯共同浴場」に到着しました。湯けむりがそそりますね。
お風呂に入る前に隣にある足湯「下湯の足湯」へ。ちょっとぬる目。
蔵王温泉には他にも「ろばた前足湯」や「湯の花茶屋 新左衛門の湯足湯」といった足湯スポットがあり、散策途中の一休みにぴったりです。
さて共同浴場の利用料は1人1回200円(税込)ですが、私にはさっき宿でもらった強い味方の入浴券が!
さあこれこそが来たかった濁り湯の蔵王温泉だー! 掛け湯をしてはやる心を抑えて足からお湯に入ります。
硫黄成分たっぷりで強い酸性のお湯がちょっぴり刺激的。思わずハァーッともれるため息。ちょっと熱めの温度も素朴な木の浴室も、立ち上る温泉の香りも最高です。
下湯共同浴場からさらに高湯通りを上っていくと、徒歩2分ほどで次の「上湯共同浴場」に到着します。
蔵王温泉の源泉のひとつは、この「上湯共同浴場」周辺に湧出地があります。そんな場所に建っている共同浴場ですから、お湯が悪いわけがありませぬ! 鮮度もピチピチ、翡翠のような美しいお湯の色にもうっとりしてしまいます。
上湯共同浴場から徒歩約2分、最後に向かった「川原湯共同浴場」は高湯通りから少し入った穴場。
建物の裏手を見ると驚き! ここはなんとお湯が湧くその上に建っているのです。
つまりですね、浴槽の隙間からそのまま湧きたての温泉が入ってくるわけ。全国でもめずらしい足元湧出泉を楽しめるなんて、なんたる贅沢でしょう!
横にあるパイプから出るのは温度調節のための水です。触ってみて下さい、お湯じゃないんです、お湯じゃ。
たっぷり蔵王温泉街を楽しんで「五感の湯®️つるや」に戻ってきました。お部屋も広くて快適。思わず畳の上でごろんごろんしてしまいます。
蔵王温泉は夕日の綺麗なスポットでもあります。この日もよく晴れていたので泣きたくなるような美しい夕暮れが見られました。
夕食は山形の美味しいもの大集合! 前菜には「庄内柿の白和え」や「無花果のワイン煮」など。温かいうちにどうぞと供される「そばがき」は素朴な味わい。
蔵王牛の「蔵王牛フィレ鉄板焼き」がこれまた絶品。なにこの柔らかさ、そして味の深さ。つや姫のご飯ともめちゃめちゃ合います。会席料理の最後を締めくくる止め椀が「いも煮」なのも山形らしい。
編集部注:食事内容は季節によって異なります。
寝る前に大浴場へ。かけ流しなのはもちろんのこと、自噴する源泉に水を足さないのがこの宿のこだわり。入るとじわっと濃厚さが感じられます。ああ今日はいっぱい温泉に入ったなぁ。
こちらには4つの貸切風呂があり、宿泊すると1つ無料で入れます。私は、朝風呂として「北斗の寝湯」をお借りしました。
贅沢すぎる湯船を独占して朝から感激です。
いよいよ旅もクライマックス。「つるや」をチェックアウトして徒歩約6分、自分だけのこけしを作ろうと「田中こけし屋」へ。私にとって初めてのこけし絵付け体験です。
店内には所狭しとあどけない表情のこけしたちが。このあたりで制作される蔵王系のこけしは、遠刈田系のこけしの影響を受けているといわれています。
使う色は黒、緑、朱の3色です。
顔を描くのは正直とても緊張しました。指が震えます。でも失敗しても大丈夫。髪の毛で塗りつぶして反対側にも描くことができるので、チャンスはもう1回あるのです。
真剣にこけしの顔を描いていると、自分自身を見つめ直しているような不思議な気持ちになりました。なんだか自分に似て……いる……ような?
胴体模様は蔵王系こけしの伝統的な柄のひとつ「桜崩し」にチャレンジ。難しい柄でしたが自分で描くと愛着もひとしおですね。
再び山交バスに乗って山形駅に戻ります。もう帰路だと思うと寂しい。
山形駅直結の「S-PAL山形」は予想以上に山形土産が充実していました。新幹線の発車時刻までお土産を探すのが旅の最後のお楽しみです。
購入したのは、清川屋「ほわいとぱりろーる」、木村屋「古鏡」、酒田米菓「オランダせんべい(ずんだ味)」、羽根田酒造の「梅湧水」など。これでおうちに帰ってからもたっぷり山形が楽しめそうです。
新幹線を使って行く蔵王温泉が、こんなにも身近なのだと今回改めて気づきました。湯けむりが上がる蔵王温泉は、美白が期待できる強酸性の硫黄泉で、お肌がピカピカに生まれ変わったみたい!共同浴場や蔵王の伝統を感じるこけしの絵付けなど、温泉街をめぐりながらの散策にもおすすめです。
掲載情報は2020年12月23日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
食事処きくち
住所:山形県山形市蔵王温泉710
営業時間:10:30~14:00
定休日:不定休
田中こけし屋
住所:山形県山形市蔵王温泉875-12
営業時間:8:00頃~16:00頃(日照時間によっては17:00頃まで)
定休日:不定休
※こけしの絵付け体験は前日までに要予約
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR山形駅→蔵王温泉バスターミナル→食事処きくち→下湯共同浴場、下湯の足湯→上湯共同浴場→川原湯共同浴場→五感の湯®︎つるや
【2日目】五感の湯®︎つるや→田中こけし屋→蔵王温泉バスターミナル→JR山形駅、S-PAL山形→JR東京駅