静岡・天竜浜名湖鉄道(天浜線)の旅。転車台など鉄道文化財を巡る
今回の列車旅ポイント
- 国の有形文化財に登録された設備が多数ある天竜二俣駅
- 西気賀駅に併設された洋食屋さんでみっかび牛を使ったランチを
- 天浜線の車窓に広がる浜名湖
はじめまして! 列車に乗ることと食べることが大好きな、食べ鉄のマサテツです。よろしくお願いします!
今回旅してきたのは、静岡県を走るローカル線・天竜浜名湖鉄道、略して「天浜線」。歴史ある鉄道施設を見学したり、駅構内にある洋食屋さんでみっかび牛に舌鼓を打ったり。食べ鉄らしく、食べて、乗って、天浜線を満喫してきました!
東京駅
東海道新幹線で掛川駅へ
静岡県のJR掛川駅までは、JR東京駅からだと東海道新幹線で約1時間40分。天浜線は、ここ掛川から出発します。
天浜線は、静岡県掛川市の天浜線・掛川駅と湖西市の天浜線・新所原駅を結ぶ、全長67.7kmの路線。沿線には駅舎や橋梁など36もの国の登録有形文化財が点在し、まるで博物館のような路線なのです。
掛川駅
天浜線に乗車
ホームに止まっていたのは、天浜線の前身である「国鉄二俣線」を走った「キハ20」という気動車の塗装を施した車両。2020年に国鉄二俣線の全線開通から満80年を迎えるにあたり、国鉄時代のカラーリングが復刻されました。
「ゴォーッ」とディーゼルエンジンの音を響かせながら走る列車。先ほどまでの新幹線とは違った音とエンジンの匂いが、旅情を感じさせますね。
車窓に田んぼだけでなく茶畑も見えたのは、お茶どころ静岡らしい風景です。
天竜二俣駅
天竜二俣駅でおみやげを購入
掛川駅から約50分で、天浜線・天竜二俣駅に到着。
天竜二俣駅には、天竜浜名湖鉄道の本社もあり、天浜線の中心的な駅です。駅舎の中にはラーメン店「ホームラン軒」があり、地元の人たちに人気だといいます。売店では、天浜線グッズやおみやげが販売されています。
この「天浜線転車台ようかん」に惹かれました。なかには、「小豆・お茶・うめ」の3種類のようかんが入っています。
開けてみると、なかから出てきたのは天浜線の車両がデザインされたパッケージ。かわいい!
売店で販売されている鉄印帳と鉄印。鉄印とは、一言で表すと「御朱印の鉄道版」。指定の鉄印帳に、全国40社の第三セクター鉄道で鉄印をもらいます。鉄印をもらうには、各社指定の窓口で乗車券を提示し、鉄印帳と記帳料が必要です。
鉄印の記帳をお願いすると、なんと天浜線の社長さんが直筆で書いて下さいました。社長さんが在社されている時は、目の前で書き込んで下さるのです。とてもありがたい鉄印になりました。
全40の鉄印をコンプリートすると、シリアルナンバー入りの「鉄印帳マイスターカード」が発行されます。この機会に、皆さんもぜひ鉄印を集めてみては。
天竜二俣駅
転車台・鉄道歴史館見学ツアーに参加
続いては、天竜二俣駅で毎日開催されている「転車台・鉄道歴史館見学ツアー」に参加します。平日は13:50〜の1回、土日祝日は10:50〜と13:50〜の2回開催されます(2022年7月現在)。窓口で受付をすると、見学記念の硬券をいただきました。それではツアーへ出発!
天竜二俣駅は、1940年の国鉄二俣線開通とともに開設。遠江二俣機関区を併設した、二俣線の中心駅でした。当時は戦時中で鉄製品が使えなかったために、ホームの屋根は木で造られたのだそう。
1940年の開設当時のまま残された駅本屋、ホームの上屋、プラットホーム、機関車転車台、機関車扇形車庫などは、国の登録有形文化財に登録されており、今なお現役で使われています。
線路沿いを歩いていると、コンクリート製の大きなタンクが見えてきました。これは高架貯水槽で、蒸気機関車に給水する水を貯める貯水槽。この中になんと内容量約70トンもの水が入るのだとか。
運転区事務室も国の登録有形文化財に登録されています。つまり1940年当時のままなのです。
通路の向こうに転車台が見えてきました。蒸気機関車が活躍していた時代は、機関車を進行方向に向けるために使われていた転車台ですが、今は両方向に運転できる(進める)車両が一般的なため、転車台は不要。全国的にも稼働する転車台はごくわずかです。
転車台は鉄製で、直径は約18m。現在は電動で回転しますが、建設当時は手動で回転させていました。転車台の構造を間近で観察できるのはとても貴重です。
ツアーでは、実際に転車台が可動する様子を見学することができます。
天浜線で今でも転車台が現役の理由は、この扇形車庫に車両を格納するため。転車台を中心に扇形に建設された機関車の格納庫なので、扇形車庫と呼ばれています。木造の扇形車庫が現役で使用されているのは、非常に珍しいのだそう。
最後に、扇形車庫の一角にある「鉄道歴史館」を見学します。ここには、国鉄二俣線時代に使われていた鉄道設備や、昔懐かしい写真などが展示されています。
貴重な鉄道の歴史遺産を見学できる、転車台・鉄道歴史館見学ツアー。天浜線を訪れたらぜひ参加してみてください!
これで1日目の旅は終了。今夜は浜松で宿をとり、明日の旅に備えます。
新浜松駅
遠州鉄道と天浜線を乗り継いで西気賀駅へ
2日目は遠州鉄道・新浜松駅からスタート。終点の遠州鉄道・西鹿島駅で天浜線に乗り換えることができます。
窓口で購入したのは、遠州鉄道と天浜線共通の1日フリーきっぷ。遠州鉄道の鉄道全線と天浜線の西区間(天竜二俣~西鹿島〜新所原)または、東区間(西鹿島〜掛川)が乗り放題。さらにデザインがエヴァンゲリオンになっています。かっこいいですね!(※)
※編集部注:エヴァンゲリオンデザインは枚数限定。詳しくは天竜浜名湖鉄道までお問合せください(詳しくはこちら)
西気賀駅
駅舎に併設された洋食屋さんでランチ
新浜松駅から約35分で西鹿島駅。そこから天浜線に乗り換えて約35分で天浜線・西気賀駅に到着。1938年に造られた西気賀駅の本屋と待合所は、国の登録有形文化財に登録されています。
天浜線では、駅舎を活用したグルメ店が数多く存在します。ここ西気賀駅の駅構内にあるのは、洋食「グリル八雲」です。元々は名古屋にお店を構えていたのだそう。名古屋にあったお店の屋号と味を引き継いで、現在のグリル八雲があります。
※編集部注:「グリル八雲」は2024年8月に閉店しました
いただいたのは、多くのお客さんがオーダーするという「ビーフシチューセット」。
「ポタージュコーンスープ」は、ご主人によると美空ひばりさんがお気に入りだったそう。小麦粉の代わりに米が使われていて、とろりとした喉越し。優しい味わいが口の中に広がります。米を使っているので「病気の時に食べても栄養満点だよ」とご主人。
ビーフシチューは2日間かけてつくられているそう。なかには、三ヶ日町で育った「みっかび牛」がたっぷり。肉と野菜にソースを絡めながらいただきます。
みっかび牛は、歯でスッと噛み切れるほどの柔らかさ。濃厚なシチューの旨みが口の中に広がり、食欲をそそります。
プリンス岬
浜名湖を望むプリンス岬
お腹もいっぱいになったので、西気賀駅周辺を散歩。西気賀駅から徒歩約10分。やってきたのは「プリンス岬」。浜名湖に突出した五味半島という小さな岬で、当時の天皇御一家が半島にある別荘で静養されたことから、プリンス岬と呼ばれているのだそうです。岬にある石碑には作詞家・清水みのり氏の詩が刻まれています。
プリンス岬からは浜名湖が一望できます。穏やかな波の音だけが聞こえる静かな岬。しばしその景色に見惚れていました。
西気賀駅
車窓に広がる浜名湖
再び天浜線に乗車します。西気賀駅を発車するとすぐ、車窓には浜名湖が広がります。
浜名湖の湖畔にある天浜線・浜名湖佐久米駅は、冬になるとカモメがやってくることで有名です。
西気賀駅から約40分で終点の新所原駅に到着。これで天浜線の全67.7kmを乗りつぶしました。
帰りは浜松駅から東海道新幹線に乗車し、東京へ戻ります。
歴史、景色、食で天浜線を堪能した2日間はとても楽しい旅でした。特に、重要な文化財を見学できる天竜二俣駅のツアーは貴重な経験になりました。皆さんにもぜひ天浜線の魅力に触れてみてほしいです。
東京駅
掲載情報は2022年8月16日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR掛川駅→掛川駅→天竜二俣駅(転車台・鉄道歴史館見学ツアー)→西鹿島駅→新浜松駅→ホテル
【2日目】ホテル→新浜松駅→西鹿島駅→西気賀駅/グリル八雲→プリンス岬→西気賀駅→新所原駅→JR浜松駅→JR東京駅
静岡・浜松市内JR+宿泊 EN HOTEL Hamamatsu
1泊2日/東京駅⇒掛川駅・浜松駅⇒東京駅
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