青森・八戸酒造の蔵見学へ。世界一に選ばれた酒造の新しい試み
今回の列車旅ポイント
- 海が見えるローカル線、八戸線
- 列車旅だからお酒も楽しめる
- 八戸線に描かれた、海をイメージさせるような水色のデザインに注目
人生で1番使ったお金が飲み代で、好きを仕事にするために、お酒のなかでも1番好きな「日本酒」を若い世代に広める活動をしています、卯月りんです。普段は20代〜30代限定の日本酒コミュニティの運営と酒蔵さんのPRをしています。
さて、今回は世界酒蔵ランキングで1位をとったこともある青森県の八戸酒造さんへ。老舗の酒蔵さんですが、新しいことにも挑戦されています。試飲付きの蔵見学はもちろん、海がみえる八戸線に揺られながら絶景に癒やされたり、飲み屋横丁を楽しんだりしてきました!
JR東京駅
東京駅から東北新幹線で八戸駅へ
JR東京駅から東北新幹線でJR八戸駅へ向かいます。鮮やかな「ときわグリーン」が目印の「はやぶさ」に乗り、約2時間50分で到着! 東京から新幹線で行きやすいのはうれしい!
八戸駅からは八戸線で約15分、JR陸奥湊駅を目指します。
陸奥湊駅前では「イサバのカッチャ」の像がお出迎え。魚を扱う業種の人々を「五十集(いさば)」と呼んでいたようで、八戸の朝市を元気に行き交うおばちゃんを、愛着を込めてイサバのカッチャと呼んでいるそうです。
八戸酒造
世界一の八戸酒造で試飲付き蔵見学
陸奥湊駅から歩いて約5分、「男山」と書かれた白い蔵が見えてきます。「八戸酒造」に到着です。
八戸酒造は、1775年に駒井庄三郎氏が創業。江戸時代から続く老舗の酒造です。2021年には世界酒蔵ランキングで1位を獲得しています。
煉瓦蔵にも「男山」の文字が!
八戸酒造では、試飲付きの蔵見学が楽しめます。見学は5杯試飲が付いて税込500円という破格! 今回は列車旅なので、お酒が飲めるのもありがたい。
※編集部注:蔵見学について詳しくはこちら
見学ガイドのさっちゃんこと、分枝幸子さんに案内いただきました。
最初は酒蔵の外に出て蔵の紹介。レトロさが感じられる煉瓦蔵へ。煉瓦蔵は大正時代にイギリスの職人によって建てられました。モダンなつくりに異国情緒を感じます。
煉瓦蔵を含む八戸酒造の建造物6つは、「文化庁登録有形文化財」「八戸市景観重要建造物」に指定されています。
応接室を通り工場内へ。主屋は伝統的な木造軸組工法でつくられています。状態は良好で、代表であり八代目蔵元の駒井庄三郎さんは、今もこの主屋に住んでいるんだとか……!
八戸酒造の日本酒銘柄には、港町の男酒といわれ1910年に商標登録された「陸奥男山」と、東京などでも流通している1998年に八代目蔵元が立ち上げた「陸奥八仙」の2つがあります。
工場でまず迎えてくれたのは、日本酒ではなく樽に入った焼酎。八戸酒造では2017年から日本酒を造った際にできる「酒粕」で、焼酎やスピリッツなどの蒸留酒も造っているんです。
「蒸留酒は木樽で寝かせるとおいしくなる!」とのことで、工場には、バーボンやシェリー酒などの醸造に使われていた木樽や、青森の名産でもあるヒバ材でつくられたオリジナルの木樽があります。焼酎やスピリッツを寝かせているんだそう。
この扉の奥で、日本酒が造られています。
工場を抜けて、シンボルにもなっている白い壁の西蔵へ。6つの建造物が細い道でつながっていて、まるで忍者屋敷のようです!
お酒や酒米が保管されている蔵へ。
「一度生産が中止になった青森県産のお米『レイメイ』を蘇らせたのが八戸酒造の代表だったのよ、すごい情熱よね」と説明してくれるさっちゃん。
北蔵のなかも見学。普段は昔使用していた道具類や資料などを置いている屋根裏部屋があって、地元の人に貸し出すこともあり、アート作品を飾ったりライブ会場になったりします。
明治時代の帳簿もそのまま残っています。
蔵の見学を終えたら、待ちに待った試飲タイム! 八戸酒造のお酒の飲みくらべができます!
今回は以下の5種類のお酒を飲ませていただきました。試飲できるお酒は、季節や見学者の雰囲気に合わせて選んでいるといいます。
まず紹介いただいたのが、写真左から1本目の「陸奥八仙 純米大吟醸 蔵限定ver」。蔵見学にきた人のために造られたお酒だそう! ここでしか飲めない貴重な日本酒です。
2本目の「陸奥八仙 赤ラベル 特別純米 無濾過生原酒」は、生酒のピリッとしたガス感のある味わいが際立ちました。同じ「八仙」銘柄でも、こんなに口当たりが違うのかと驚きました。
八戸酒造には、ユニークな着眼点が光るお酒もあります。3本目は、お洒落なラベルが目をひく「URARA 〜hassen for spring〜」。お花見で飲む日本酒として造られたとのこと! ほどよい酸味と甘味は、春にぴったり。
4本目の「陸奥八仙 blanc」は、ブイヤベースに合わせるために造られました。思わず「酸っぱい!」と口にしてしまうほど、酸味のあるフレッシュなお酒でした。どのお酒もおいしすぎる!!
「このお酒、りんちゃんにぴったりだと思う!」と、最後にすすめていただいたのは「陸奥八仙 貴醸酒」。日本酒の仕込みの最終段階で、水の代わりに日本酒を使用して醸しているそう! 気品が漂い、深みのある贅沢な味わいでした。
たくさん素敵な日本酒をご紹介してくれたさっちゃん。ありがとうございました! どれもおいしかったです!
最後に、八戸酒造の売店でお酒を購入して帰りました。今回購入したのは「陸奥八仙 純米大吟醸 蔵限定ver」。
売店にはお酒のほかにも、酒粕を使用した「酒粕ドーナツ」にホワイトチョコレートの「酒粕クーベル」、それに、酒粕をつかったバスボム「酒粕バスボム八仙美人の湯」といった商品も。老舗酒造の新しい取り組みに驚きました。
バスボムは、日本酒が苦手な人にも、日本酒の文化を感じてほしいという思いから開発された商品。「新東北みやげコンテスト」で優秀賞を受賞しています。日本酒「八仙」の酒粕を主原料に、原材料は「Mede in 東北」にこだわったそう。美肌効果が期待できる酒粕、帰ってから使うのが楽しみ!
今回は購入できなかったのですが、八戸酒造には、若手の蔵人さんたちがそれぞれコンセプトを考え挑戦しながらつくる「Mixseed(ミクシード)」というお酒もあります。2022年は、4人の蔵人がアレンジした4種が造られました。蔵見学で歴史を知ったからこそ、伝統を守りながら新しいことにも挑戦を続けるすごさを感じます。
Mixseed は2023年も夏ごろから販売を予定しているそう。次回はぜひ飲みたいです!
もっと日本酒を味わいたい! まだまだ旅は続きます。
みろく横丁
みろく横丁で青森ならではの日本酒と食を楽しむ
八戸酒造を後にして、陸奥湊駅から八戸線で約5分のJR本八戸駅に移動。本八戸駅から徒歩10分ほどで「みろく横丁」に到着します。ここは、25店舗の屋台が連なり、はしご酒にはもってこいのスポットです!
まずは、みろく横丁のスタート地点にある「ととや烏賊煎」へ。
先ほど訪れた八戸酒造の「陸奥男山 超辛純米」を注文。キレ味抜群ですっきりとした味わいは、お酒好きにはたまりません!
青森の名産品と言えばイカ! ということで、イカ刺しをペアリング。新鮮でさっぱりしたイカの旨みが「陸奥男山」と相性抜群でした。
次は、青森ならではの料理が食べられるお店「鳥将」へ。お店に入ると、おかみと地元の常連さんが迎えてくれました。
ボリューミーなお通しに合わせて、八戸酒造の「陸奥八仙 赤ラベル 特別純米 生原酒」をチョイス。こちらのお店は、瓶に入ったお酒を自分で好きなだけついでOK! 日本酒好きにはとてもうれしいスタイルです! グラスとその下のお皿ギリギリまで注ぎました。
青森の地元料理であるせんべい汁も注文。せんべいに野菜やきのこの旨みがしみ込み、やさしい味わいが口の中にじんわり広がりました。
カウンターには、大きなしいたけが。こんな大きさのしいたけは見たことがありません!
せっかくなので、しいたけを焼いてもらうことに。弾力があり歯応え抜群で、さらに日本酒がすすみました!
たくさん飲んで、幸せな気分で1日目を終えました。
種差海岸
多種多様で壮大な自然が溢れる名勝地
本八戸駅近くのホテルをチェックアウトし、旅の2日目がスタート!
本八戸駅から、海や港町をイメージさせる水色のデザインが描かれた八戸線で、JR種差海岸駅へ。自然に触れられる「種差海岸」へ向かいます。
八戸線の推しポイントは、車窓から海が見えるところ! 移動中だということをつい忘れそう。
本八戸駅から約25分で種差海岸駅に到着です。
種差海岸駅から、海が見える一本道を約3分歩きます。
種差海岸は三陸復興国立公園内にあり、国の名勝地にも指定されています。
一面に広がる海はとにかく広い!! スケールの大きさに圧倒されました!
種差海岸の見どころの一つが、天然芝生地です。波打ち際まで天然芝生が広がる場所は、日本国内でも珍しく、壮大な海を目の前にすると、外国に訪れたような気分に!
訪れたタイミング(4月上旬)は、芝生が徐々に緑になる途中でした。青々とするのは、例年5月から10月とのこと。季節によってうつろいゆく姿を見られるのも楽しい!
本当に広い!
高台からの眺めも最高!
海カフェたねさし
海と天然芝生地が見渡せる絶景カフェ
ちょっとひと息。種差海岸駅から徒歩5分ほどの「海カフェたねさし」へ立ち寄ります。種差海岸インフォメーションセンターに隣接している休憩所内のカフェで、天然芝生地を見渡すことができます!
絶景を見ながらご飯が食べられるなんて最高すぎる……!
店員さんおすすめのランチは、青森で有名なサバをつかった「さばサンド」。熱々にあぶられたサバ・玉ねぎ・レタス・トマトがぎっしりと詰まっています。
サバから溢れる脂とみずみずしい野菜がこれまた合う!
レモンを搾ると酸味がぐんと増し、味の変化が楽しめます。
デザートに「たねさしサンデー」を。種差の灯台をクッキー、ウミネコをホワイトチョコであらわしているとのこと。海や芝生などを連想させる色合いがかわいい。
ソーダ味のゼリーとバニラアイス、ピスタチオが添えてあります。さっぱりしていて食べやすく、とてもおいしい!
名残惜しいですが、そろそろ帰る時間。種差海岸駅へ戻り八戸線で八戸駅へ。東北新幹線に乗り換えて帰京です。
おいしい日本酒を飲んで、自然に触れて、思い切りリフレッシュができた旅でした! 列車旅は思いのままお酒を堪能できるのもうれしいですよね。お酒好きの方やお酒を楽しみたい方、おすすめですよ!
東京駅
掲載情報は2023年5月25日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR八戸駅→JR陸奥湊駅→八戸酒造→JR陸奥湊駅→JR本八戸駅→みろく横丁(ととや烏賊煎/鳥将)→JR本八戸駅(ホテル)
【2日目】JR本八戸駅→JR種差海岸駅→種差海岸/海カフェたねさし→JR種差海岸駅→JR八戸駅→JR東京駅