今回の列車旅ポイント
年間300社にお参りに上がる、神社仏閣巡りと美術鑑賞が好きな元ツアコンで、旅好き神社巡拝家、さゆみと申します。大阪在住で、現在は大阪観光局「文化芸術観光ネットワーク 大阪」公認アンバサダーを拝命しております。
今回、大阪で唯一の路面電車に乗り、安倍晴明神社や住吉大社といった由緒ある神社を巡って素敵な御朱印をお授けいただきます。盛りだくさんの1泊2日の御朱印巡りの旅に、それでは出発です!
神社仏閣は16時頃には社務所が閉まってしまうところも多いので、出発は朝早めがいいでしょう。ちなみに、JR東京駅からJR新大阪駅までは東海道新幹線で約2時間半。新幹線とお宿がセットでお得に予約できる「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」がオススメです。
まずは新大阪駅から天王寺駅へ。隣接する天王寺駅前駅から「チン電」こと「阪堺電車」で御朱印巡りを開始します。
阪堺電車は、ほぼ旧紀州街道に沿って堺の街を走ります。沿線には神社仏閣などの観光スポットも多く、途中降車をしてお散歩するのもよし。お散歩するなら、スマホで買える1日フリー乗車券「トリップチケット」が断然お得です。
車窓からは、下町情緒あふれる景色と近代的なビル群を一度に眺めることができます。
東天下茶屋駅で下車して徒歩3分ほど。訪れたのは「あべの」の地名発祥の神社で、仁徳天皇が創建された「阿倍王子神社」。和歌山県の熊野に続く旧熊野街道沿いにあり、王子(※)ごとにお参りをしながら熊野へ向かう熊野九十九王子の一社に数えられています。古くから熊野詣の人々で賑わい、現在は地域の氏神様としても親しまれています。
※編集部注:王子とは王子社とも呼ばれ、熊野三山の御子神を祀った神社のこと。熊野詣の休憩所でもあったそう
鳥居をくぐると4本の御神木が立ち並び、心地よい風が吹き抜けていました。
極彩色の本殿は熊野の社を彷彿(ほうふつ)とさせるような色鮮やかなつくり。
本殿横には三本足の烏「八咫烏(やたがらす)」がお祀りされた「御烏社(みからすしゃ)」があります。
古事記等の日本神話に登場し、日本サッカー協会のシンボルにもなっている神の使い八咫烏のキュートなおみくじを引くことができます。
その横には、安倍晴明の母をお祀りする「葛之葉稲荷神社」があります。こちらの社殿は大阪安土町の別の神社様から移築され、戦火を免れた奇跡の社殿。美しい装飾を遠くからも見ることができました。安倍晴明の母は、白い霊狐だったという伝説も!?
写真右が阿倍王子神社の御朱印、左がこれから紹介する安倍晴明神社の通常御朱印です。
次に訪れたのは、徒歩1分ほどの距離にある、阿倍王子神社の末社である「安倍晴明神社」。その名の通り、有名な陰陽師の安倍晴明を祀る神社です。晴明の死後2年経った1007年に創建されました。
社務所の横では陰陽師にちなみ、毎日日替わりで占いもしていただけます。平安随一であったといわれる安倍晴明のパワーを感じられるかもしれません。
また、こちらの社紋の五芒星(星型)は珍しい二重五芒星で、厄除け、病気平癒(へいゆ)などのご神徳があり、御朱印や御守りにも記されています。
安倍晴明のかっこいい御朱印。龍が宝珠を持つ縁起の良い御朱印です。
こちらは、「七夕祭」(例年7月7日)に合わせて授与される特別御朱印(数量限定)。安倍晴明が織姫・彦星のために、カササギに天の川へ橋をかけるよう説いている絵柄だそう。
再び阪堺電車に乗って姫松駅で下車。閑静な住宅街を10分ほど歩くと「阿部野神社」が見えてきます。
明るい雰囲気の阿部野神社のご本殿。
こちらは知恵と勇気と学問の神として、北畠親房公と顕家公をお祀りする神社です。
こちらは阿吽(あうん)の狛犬、ならぬ阿吽の神馬像。鳥居の両側に向かい合って立っている姿は必見です。北畠顕家公が東北から京都まで馬で馳せ参じ、後醍醐天皇をお助けになったという逸話から、神の使いの馬として交通安全のご利益があるといわれています。
境内には精進努力し、成功を納めて一旗上げることを願う「旗上稲荷社」があります。ビジネスや個人の心願成就、あるいは成功の御礼参りとして、朱赤の鳥居や旗を奉納される方が多いそうです。奥の旗上芸能稲荷社まで並んだ鳥居は圧巻でした。
こちらの御朱印は、直書き特別御朱印、切り絵の御朱印、クリアタイプの花鳥風月御朱印など、コレクター心をくすぐるラインナップで、目移りしてしまいます。
北畠顕家公の勇猛果敢な功績から、人生における幾多の「勝負事」に勝てると評判の御守りです。
再び阪堺電車で天王寺駅前駅へ。明日に備えてホテルに戻ります。
2日目開始! 朝のお参りは、空気が澄んでいて最高です。本日も天王寺駅前駅から阪堺電車に乗り、住吉鳥居前駅で下車。目の前に「住吉大社」があります。地元では「住吉っさん」の名前で親しまれる住吉大社は、全国に約2300社ある住吉神社の総本社です。
住吉鳥居前駅を下車すると目の前に見える、朱塗りが美しいアーチ型の反橋(そりはし)、通称「太鼓橋」は象徴的存在。石造橋脚は、豊臣秀吉の側室であった淀殿(茶々)が寄進したもので、この橋を渡るだけで「お祓い」になるという信仰があるそうです。
太鼓橋を渡った先にある幸寿門前の鳥居は、足の部分が四角という珍しい形です。このことから、「角鳥居」とも呼ばれています。
住吉大社は御祭神ごとに本殿が4つあります。
一番奥にある第一本宮の本殿(国宝)。底筒男命(そこつつのおのみこと)が祀られています。
住吉大社の御朱印帳は素敵なデザイン! 十二支の土人形をあしらったかわいいもの。片面がキラキラなところが、ちょっと大阪っぽい。御朱印帳コレクターの私は即購入しました。
月替わりの刺繍御朱印。6月は御田植え祭、7月は夏越祓神事など、その時々の神事などが刺繍された御朱印です。
第一本宮の裏にある楠珺社(なんくんしゃ)は、御神木である樹齢約1000年の楠の根元に設けられた祠に宇迦魂命(うがのみたまのみこと)が祀られています。「初辰さん」と呼ばれ、商売繁盛のご利益を願って、毎月月初めの辰の日に多くの人がお参りに訪れます。
楠珺社の刺繍御朱印。招き猫ちゃんがかわいいです。
続いてお邪魔したのは、阪堺電車の神明町駅の目の前にある「茶寮 つぼ市製茶本舗 堺本館」です。堺は千利休が生まれ育ち、茶の湯文化が発展した街。つぼ市製茶本舗さんは、1850年(嘉永3年)に堺で創業した製茶問屋です。
たくさんの人に気軽においしいお茶を楽しんでいただけたら、と始められたこちらのお店は、町屋をリノベーションした温かみのある町屋カフェ。店内に入ると、焙煎されたほうじ茶の良い香りに包まれます。
千利休とも関連が深い「市中の山居」(街中に山の風情を感じる建物、住まいのこと)がコンセプトの店内は、差し込む柔らかな陽射しで、タイムスリップした感覚になります。
千利休ゆかりの地ならではの、お茶と季節の食材を使ったお料理4品と茶粥のランチコースをいただきました。やさしい味のお料理はどれもおいしく、ドリンクとデザートまでお茶づくしでした。
この日は暑かったので、抹茶の「利休かき氷」も追加でいただきました。刃物の産地としても有名な街・堺でつくられた刃物でスパッと削り取られ、エッジが利きつつもふんわりとした、重さを感じない口当たりの氷に、濃いけれど苦みの少ない、良い香りのする抹茶味でした。
阪堺電車に乗って御朱印を巡る旅。いかがでしたか? 大阪は古き良き文化と、最先端の技術が融合した、不思議な街です。ビル群の中に突如として神社が現れる風景は、大阪ならでは。秋には阿倍王子神社と阿部野神社の二社参りでいただけるコラボ御朱印もあるそうなので、また訪れてみたいです。
掲載情報は2024年8月14日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR新大阪駅→天王寺駅→阪堺電車 天王寺駅前駅→東天下茶屋駅→阿倍王子神社→安倍晴明神社→姫松駅→阿部野神社→天王寺駅前駅(ホテル)
【2日目】天王寺駅前駅→住吉鳥居前駅→住吉大社→神明町駅→茶寮 つぼ市製茶本舗 堺本店→天王寺駅前駅→天王寺駅→JR新大阪駅→JR東京駅