今回の列車旅ポイント
お笑い芸人さんのラジオ番組へメールを送ることを趣味としている、ハガキ職人のチーズケーキ夫人と申します。
今回は「なんでやねん!」「もうええわ!」が当たり前に飛び交うお笑い発祥の地、大阪へ。日頃から笑いの文化に魅了されている私が、「お笑い観光」を目的に、なんばグランド花月やよしもと漫才劇場などを巡る、1泊2日の列車旅をして参りました。
お笑いの聖地へと向かう旅はJR東京駅から始まります。東海道新幹線「のぞみ」に乗り込み、約2時間30分でJR新大阪駅に到着です。
「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を利用すると、新幹線と宿をお得なセットで申込みできます。
新大阪駅に到着後、Osaka Metro御堂筋線に乗り換えて約15分でなんば駅へ。なんば駅から徒歩6分ほどで「NGK」の愛称でお馴染みの「なんばグランド花月」へ到着します。
1987年に開業し、大御所から若手まで出演するなんばグランド花月は、今や吉本興業を代表する劇場として人々に愛されています。
「NGKのトリを飾れたら一人前!」と芸人さんが仰られるのも納得の、伝統的な佇まいに圧倒されます。会場に入る前から東京では味わえない独特の活気が感じられました。
なんばグランド花月をはじめ、吉本興業が運営する劇場公演のチケットは専用サイトから購入ができます。当日券もありますが、人気の公演は満席で販売を終えていることもあるため、事前にサイトより購入しておく方が安心です。また、チケットは劇場の自動発券機やコンビニで簡単に発券することができます。
約900席あるなかで今回は運良く中央前方の席に。ここからであれば演者さんの表情を近くから見ることができ、心の機微が伝わりやすいので臨場感が増します。
※編集部注:全席指定席。チケット購入時に座席を選ぶことはできません
平日の午前中にもかかわらず、会場は2階まで満席!
この日のトップバッターは「囲碁将棋」さん。東京のしゃべくり漫才で、あっという間にNGKのお客さんを巻き込んでいきます。続いて、「天才ピアニスト」「トミーズ」「大木こだま・ひびき」さんと、大阪の漫才が続きます。
その場のノリと人情味を大切にする掛け合いは、関西の地域性が影響しているのかもしれません。
特に注目を集めていたのは吉本が誇る大道芸人「もりやすバンバンビガロ」さん! やさしい口調で繰り広げる魔法のようなパフォーマンスに子どもたちが歓声を上げておりました。
この日のトリを務めたのは上方落語界の第一人者「桂文枝」さん! 落語に馴染みのない世代にも分かりやすく、日常的なユーモアを交えて話を展開していく姿はさすがの一言。
10分の休憩を挟んだあとは、「すっちー」さんが座長を務める吉本新喜劇。この日のテーマはなんと「婚活バーベキュー」。令和という時代に合わせながらも、関西人のDNAに刷り込まれている伝統芸で巧みに笑いをとっていきます。
関西では定食屋、スポーツジム、サウナなど、いろいろな場所で吉本新喜劇が流れています。物心がついた頃から自然にお笑い文化に触れることができる関西人。ユーモアに求めるレベルが高くなるのは必然といえるでしょう。
新喜劇を観覧した後は、なんばグランド花月の1階にある「吉たこ produce by たこ焼きブ!」へ。
吉本興業所属芸人による「ブカツ!」プロジェクトの「たこ焼きブ」が提供している、たこ焼きのお店です。
たこ焼きは6個入り500円からの販売。メニューは吉本の芸人さんが考案されています。店頭に立たれていた芸人さんにオススメをお伺いしたところ、吉たこのオリジナルメニュー「塩こんぶマヨ」がおいしいとのことで、さっそく注文!
注文して3分も経たぬうちにたこ焼きが到着。お金と時間にシビアなイメージのある関西ですが、やはり「安くてはやい」を大事にされているのでしょうか。
塩こんぶとマヨネーズという、意外に食べたことがない組み合わせ。生地は柔らかくふわふわしていますが、個々が大きいため食べ応えがあり、口に入れると止まらなくなる味です。
ちなみに、2025年3月下旬から、冷凍食品「吉たこ 塩こんぶ&マヨネーズ風ソース」として全国で発売されたそう。東京でも食べられますよ。
一旦、本日宿泊予定のなんば駅近くのホテルへ。荷物を預けて一休みしたあとは、NGKの目の前にある「よしもと漫才劇場」へ。
よしもと漫才劇場には、総勢100組を超える若手芸人が所属しています。
私自身、神戸市に住んでいたころに頻繁に通っていた思い出の劇場でもあります。なんばグランド花月から徒歩10秒もかからないので、NGKからマンゲキへのハシゴという、お笑い好きにとって贅沢なプランもたやすく実現できます。
今回(2025年2月取材時)はオープン前のため行けませんでしたが、NGKから徒歩10分ほどにある「中座くいだおれビル」の6階に、吉本興業が新たに手掛ける「よしもと道頓堀シアター」が2025年3月にできたそうです。毎週金・土曜の夜には、世界中の人々が楽しめるノンバーバル(言葉を用いない)コメディショー「Yoshimoto Comedy Night OWARAI OSAKA」を開催するそうです。笑いに国境や言語は関係ないのかという視点も興味深いですね。
吉本興業のホームページによると「吉本興業所属の芸人・社員の自由な発想を表現する、大阪の新たな企画開発の場となり、休日には寄席公演も実施します」とのこと。NGK、マンゲキに加え、3箇所のハシゴも実現できるかもしれません。
お笑い観光を楽しんだこの日は、なんば駅近くのホテルに戻り宿泊。
2日目はOsaka Metro御堂筋線にて、なんば駅から約4分で動物園前駅へ。駅から約5分歩き、新世界の南に位置する阪神高速道路の阿倍野入口の下で突然現れたものは……高さ6mほどの大きな石碑!
金網で囲まれて近づけなくなっている空き地の中に、「てんのじ村」と刻まれた大きな記念碑があります。
「てんのじ村」は、戦前から多くの芸人が暮らしていた場所。最盛期には300人以上もの芸人が集住していたといわれています。つまりここは、関西の娯楽の聖地。
「ここが笑いの発祥地である」という歴史的な証拠が石碑として残されていることに驚きながら、ふたたび新世界エリアへと歩き出します。
通天閣に向かって新世界エリアへと歩き出すと、人々の楽しそうな声でにぎわってきました。
新世界周辺は歓楽街となっており、レトロな看板が並ぶ通りには飲食店だけでなく、射的や映画館などさまざまな娯楽が集まっています。
国籍を問わず、老若男女が行き交うカオスな商店街。中川家礼二さんの「新世界のオッサン」というモノマネを思い出し、ニヤニヤしながら進みます。
商店街を抜けると、大阪のシンボルである「通天閣」が現れます。
ドンッ! という効果音が聞こえてきそうな立派な佇まい。初代通天閣は1912年(明治45年)にパリのエッフェル塔と凱旋門を模して建設されました。当時は東洋一の高さを誇ったそうです。
せっかくなので展望台に登ってみたいと思います。
展望台に行くことができるチケットとは別に利用料金を支払うと、「タワースライダー」と呼ばれる全長60mの体感系滑り台を滑ることができます。なんと、展望台の3階(地上22メートル)から地下1階(地上マイナス4.5メートル)を約10秒で一気に滑るというアトラクション。
すみません、私は小心者なので断念しました……。
展望台のチケットを受け取ってからエレベーターに乗るまで約30分。エレベーターに並ぶ道中では、記念写真を撮るコーナーやお土産屋さんがあるだけでなく、通天閣の歴史をたどる展示物も見ることができました。
フロアの壁全体が黄金で装飾されている5階の展望台へ到着。地上約88メートルの高さから、大阪の街をぐるりと一望することができます。
京セラドームや遠くの六甲山も見渡せる展望台で、お笑いの街・大阪に歓迎された気分になりました。
さらに、展望台では通天閣の公式キャラクター「ビリケン」さんにもご対面!
幸福の神・ビリケンさんの銅像は現在3代目。足の裏を撫でると幸せになるといわれています。触らなくても幸せを分けてもらえそうなニコニコとした表情が印象的です。
ビリケンさんのお守りを購入し、浪速の魂を東京に持ち帰ります。
通天閣を降りて南東に徒歩5分ほど進むと、劇場「新世界ZAZA」に到着します。2024年6月に道頓堀から新世界に移転するかたちでオープンした劇場です。
「HOUSE」と「POCKETS」という2つの会場を擁する同劇場では、漫才・コント・トーク・コーナー企画などさまざまなイベントを実施しており、コンパクトなキャパシティで間近からお笑いを体感できます。お客さんを呼び込む芸人さんの声が新世界に響いておりました。
ちなみに、日没後の通天閣はライトアップされ、色とりどりに点灯します。2023年のリニューアル以降、全面LEDとなり見栄えが増しているので、時間に余裕がある方は夜の通天閣を眺めてもよいかもしれません。
大阪のお笑いと娯楽のパワーをしっかり浴びたあとは、再び新幹線に乗って東京に帰ります。今まで知らなかったお笑いの歴史を学べた貴重な旅でした!
掲載情報は2025年5月8日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR新大阪駅→なんば駅→なんばグランド花月/吉たこ→よしもと漫才劇場→なんば駅(ホテル)
【2日目】なんば駅→動物園前駅→てんのじ村記念碑→通天閣→新世界ZAZA→動物園前駅→JR新大阪駅→JR東京駅