今回の列車旅ポイント
初めまして。「旅とスパイス料理」を愛する写真家・山本まりこと申します。25歳の時に勤めていた会社を辞めて写真家になると、バックパックを背負って日本と世界の放浪旅へ。旅は、青春18きっぷを片手に列車で日本を南下するところから始まり、世界へと広がっていきました。この記事を書くにあたり、そんな若い日の旅を思い出しました。
さあ。今回は、神奈川県のノスタルジックな港町・真鶴へ。背戸道を散歩しつつ、真鶴港、貴船神社などの観光スポットを巡りながらリフレッシュできるモデルコースをご紹介します。
真鶴までは、JR東京駅から踊り子号でJR湯河原駅へ約1時間15分。JR湯河原駅で上野東京ラインに乗り換えてJR真鶴駅まで約5分。トータル約1時間半、あっという間に到着です。
「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を利用すると、列車と宿をお得なセットで申込みできます。
真鶴町は相模湾に突き出るようにぐっと伸びた真鶴半島を含み、町の半分は三方を海に囲まれています。都心にアクセスしやすいことから、近年は移住者が増加。移住者によるカフェや本屋など、趣のあるスポットが増えていることで注目されています。
真鶴駅からは「背戸道(せとみち)」と呼ばれる道を、真鶴港に向かってのんびりと歩いていきます。背戸道は、人が一人通るのがやっとくらいの細い道のこと。真鶴町には、家と家の間の路地、坂の斜面に沿った階段など、あっちこっちに背戸道があります。
どこを歩いていても懐かしさが漂い、ほっとする居心地の良さを感じる真鶴の町。そんな真鶴の町並みが保たれているのは、「美の基準(※)」が町民によって守られているからです。
美の基準を体現しているモデルハウスであり、町民活動の支援拠点でもある「コミュニティ真鶴」へ向かいます。真鶴駅から徒歩10分ほどで到着。
※編集部注:美の基準とは、真鶴町で1993年に制定されたまちづくり条例の中でまとめられた、昔から引き継がれてきた懐かしい港町の生活風景を保全するためのデザインコードのこと
コミュニティ真鶴の壁面の装飾に使われているのは、地元で採れる小松石。小松石を加工する際に出る端材が使用されています。
のんびりと背戸道を歩きながら、徒歩10分ほど。磯の香りがふわりと強くなってきたなと思ったら、「真鶴港」に到着。
漁船や石材運搬船が行き交い、その日に水揚げされたお魚の販売所もある真鶴港。真鶴の地場産業の拠点となっています。また、貴船神社の例大祭「貴船まつり」(※)で、海上渡御が行われる場所でもあります。
※編集部注:貴船まつりは、毎年7月最終土曜日及びその前日の両日に開催。詳しくはこちら
周辺には、干物屋さんが、あちらこちらに。トンビやウミネコも、あっちこっちに。
真鶴港沿いの道を歩くこと徒歩5分ほど。かわいらしい外観の「honohono」へ。真鶴で水揚げされた魚介や、地元の野菜をふんだんに使用した地中海料理が大人気のお店です。
真鶴港が見える窓際の席にご案内いただき、魚のランチ(メインのお魚料理、前菜の盛り合わせ、パンとドリンク付き)を注文。メインのお魚料理は白鯛のポワレ春菊のソースを、ドリンクはアイスティーを選びました。
メニューには、真鶴の漁師さん直送のお魚を多く使用していること、真鶴の研究熱心な農家さんのお野菜を使用していることなどが店主の温かな言葉で綴られていました。
わくわく待つこと数分。
この日の前菜は、ほうれん草とベーコンのスペイン風オムレツ、ポークリエット、ピクルスの盛り合わせ。グリーンサラダも添えられていました。
まずは、グリーンサラダ、やさしいお味のピクルスをいただき、スペイン風オムレツをぱくり。
んんん。すごくおいしい。生地にお出汁がしっかり利いていて旨みがガツン。小さいのにパンチ力を感じる一品。
そして、メインのお魚料理、白鯛のポワレ春菊ソースを。
周囲に春菊ソースが彩られ、白鯛のポワレの下は、焼きズッキーニ、ひよこ豆とトウモロコシのトマト煮、焼きサツマイモなど、その日の食材で彩られています。
白鯛にナイフを入れると、皮はパリッと音がするくらいのパリパリさ、そして、その下の身はふわりとやわらかい。たまに春菊ソースや、ひよこ豆とトウモロコシのトマト煮と交えたりして味変を楽しみながらいただきました。
トロリとしたズッキーニ、ねっとりとしたサツマイモの焼き具合も最高。最高って、文字にすると2文字と短いですが、気持ちを込めて書くと、さいっこう!
店内には、真鶴や湯河原、箱根などの作家さんの商品を集めたお土産コーナーもありました。
「真鶴に移住してもう15年以上経ちます。すっかり長くなりました」と、ソムリエでもある店主の入江さん。
ああ、また来よう。そんなことを思う素敵なお店に出会いました。
honohonoから徒歩3分ほど。「真鶴貴船神社」へ。
貴船神社の例大祭「貴船まつり」は、重要無形民俗文化財などに指定されている日本三大船祭りの一つでもあります。
大石段を上ってお参りへ。貴船まつりでは、この急な階段を神輿を担いで降りるそう。
お参りの後は、社務所に寄ってお守り「貴船まつり守」を購入しました。家内安全・身体健全を祈願したお守りです。
10分ほど歩き、「琴ヶ浜」へ。
日本のダイビング発祥の地と言われ、海岸沿いにはごつごつとした岩場が続いています。夏には稀に夜光虫が発生する海岸として知られていて、夜光虫が発生する夜は、波打ち際が青白く輝き、幻想的な世界が広がるのだとか。
ああ、よく歩いた1日でした。この日は、真鶴駅から湯河原駅へ。駅近くのお宿に宿泊。
おやすみなさい。
青い空が広がる真鶴旅2日目。真鶴駅から徒歩5分ほどの「道草書店」さんへ。2022年にOPENした、ご夫婦で営むお店です。
店内奥には畳の間やこども図書館などがあり、ドリンクを飲みながら本を読むこともできます。
2020年に東京から真鶴に移住した店主の中村さんご夫妻。真鶴で実際に暮らすなかで「町に本屋がなかったことから自分たちで本屋をつくろう」と、移動本屋からスタートし、2022年に店舗をOPENしたのだとか。
随所に中村さんご夫妻の温かなお人柄が表れているような、そんな空間のなかでお気に入りの本を探すのはなんて気持ちのいい時間なのでしょう。
「地元の方に喜んでいただけているのはとてもうれしいです。学校帰りの子どもが寄っていくことも多いです。最近は、WEB記事や口コミで知って、来てくださる方も多いです」と、中村さん。
温かい真鶴時間がそこにありました。
背戸道を歩きながら駅の方へ10分ほど。真鶴駅前にある「真鶴ピザ食堂KENNY」。真鶴の干物屋さんの干物入りピザなどが人気のピザ屋さんです。
魅惑的な食材が入ったメニューがズラリ。トマトベースとチーズベースから選ぶピザ、パスタ、ホットサンド、デザートピザなどなど。
全部おいしそうで選べない……悩むこと数分。「あじとうずわのマリナーラ&しらすと卵と青海苔のピザ」のハーフ&ハーフ、ドリンクセットでチャイ風アイスティー(現在は提供終了)をオーダー。「うずわ」とは、宗太鰹(ソウダガツオ)のこと。
運ばれてきました。磯の香りがぷうんと香ります。
ぐぐっと寄ってみます。
しらすと卵と青海苔のピザを、ぱくり。しらす、青海苔がまろやかにチーズにくるまり、さらには、卵の甘みも広がります。そして、もっちりとした香ばしい生地がしっかりと全体をまとめます。
あじとうずわのマリナーラは、トマトベースのソースに真鶴の干物屋さんで仕入れているあじの干物とうずわ入りのピザ。あじの香りと、その奥にさらにうずわの旨みと香りが広がります。KENNYでは、塩漬けにしたうずわをピザに入れているのだそう。まるでアンチョビのように。
あっという間に完食。ああ幸せなる真鶴時間。
「真鶴を地元にしようと移住してきました。商工会の青年部部長を拝命し、どっぷり真鶴に浸かっています」と、笑顔いっぱいの店主の向井さん。パワフルな店主による真鶴をたっぷり感じることができるピザ、お試しあれ。
人の温もりが漂う道が巡るノスタルジックな港町真鶴。駅から歩いて巡ることができるのもうれしい。
歩く、撮る、食べる、浸るの大満足な2日間でした。
さあ、帰ろう。東京駅へ。列車の中で、道草書店で購入した小説『真鶴』を読もう。
ありがとう、真鶴。またね、真鶴。
掲載情報は2025年8月20日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR湯河原駅→JR真鶴駅→背戸道→コミュニティ真鶴→真鶴港→honohono→真鶴貴船神社→琴ヶ浜→JR真鶴駅
【2日目】JR真鶴駅→道草書店→真鶴ピザ食堂KENNY→JR真鶴駅→JR東京駅