今回の列車旅ポイント
石畳の道に、格子戸の町家。どこを歩いても絵になる街・金沢には、歴史ある町家をリノベーションしたカフェがたくさんあります。
今回は、トラベルフォトライターの私、土屋香奈が、そんな金沢のおしゃれな古民家カフェを巡る、1泊2日の旅へ出かけてきました。
ひがし茶屋街で出会った甘味処、住宅街でひっそり営まれる豆のカフェ。旅の途中に立ち寄った古民家カフェでは、金沢ならではの、やさしい時間が流れていました。金沢で巡った3つの町家・古民家カフェと、女子旅にぴったりな駅チカホテルをご紹介します。
旅のスタートはJR金沢駅から。東京からだと、JR東京駅から金沢駅まで北陸新幹線「かがやき」で約2時間30分。乗り換えなしの快適な列車旅です。
金沢への旅は「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を利用すると、新幹線と宿をお得なセットで申込みできます。
金沢駅から「城下まち金沢周遊バス」の右回りルートに乗っておよそ15分、橋場町(ひがし・主計町茶屋街)3・4バス停で下車。足を運んだのは、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている「ひがし茶屋街」です。
石畳の路地に沿って、格子戸の町家が連なり、歩くだけでもタイムスリップしたような気分に。ひがし茶屋街には格式ある茶屋建築だけでなく、町家をリノベーションしたカフェや工芸品店が点在しており、観光とカフェ巡りを同時に楽しめます。
まず向かったのは、橋場町3・4バス停からは徒歩3分ほど、ひがし茶屋街の入り口に佇む「甘味カフェ 茶ゆ」。かつてこの場所には、江戸時代から続いていた銭湯「東湯」があったそう(※)。その資材置き場をリノベーションし、湯上がりのひと休み処として生まれ変わったのが、甘味カフェ 茶ゆです。
※編集部注:現在「東湯」は廃業されています
1階にもイートインスペースがありますが、階段を上がった先には、畳敷きのお座敷が広がっています。和のぬくもりに包まれながら、ほっとひと息つける空間です。
看板メニューは、石川県産の素材にこだわった自家製ジェラート。ひがし茶屋街にある老舗の素材や県内の名品を使ったフレーバーが揃い、ひとくちごとに「石川の味」がふんわり広がります。
この日は、好きなフレーバーを3つ選べる「茶ゆ特選和風ジェラートパフェ」を。味噌や醤油、棒茶など、ユニークなフレーバーが並び、選ぶ時間さえも楽しいひとときです。
私が選んだのは、「金沢大野醤油&焦がしキャラメル」「玉露抹茶」、そして「能登柳田ブルーベリーソルベ」。どれも素材の個性がしっかり感じられながら、やさしくとけ合う、濃厚で上品な味わいでした。
さらに惹かれたのが、数量限定の「東山絹糸モンブラン ジェラート」。0.8ミリという絹糸のような和栗ペーストの中に、好きなジェラートをひとつ忍ばせるという贅沢な一皿です。
選んだジェラートは、「能登珠洲天然しお&マスカルポーネチーズ」。塩気とミルキーなコク、そして和栗の芳醇な香りが重なりあって、ひとくちごとに静かに感動が広がります。
甘いものというよりも、丁寧に仕立てられた、ひと皿の作品に出会ったような時間でした。
甘味カフェ 茶ゆからひがし茶屋街を4分ほど歩いた先、観光客の姿もまばらになった住宅街のなかに、ひっそりと「豆月」はありました。
格子戸を開けると、築90年近い町家をリノベーションした静かな空間が広がります。
梁や天井板の風合いはそのままに、建築士である店主のご主人が手を加えた室内は、やわらかな光と風が通り抜ける心地よい雰囲気。どこか懐かしく、でも新しい、不思議な空気に包まれます。
案内されたのは、小さなお座敷。ほんのり温かな照明に包まれた町家特有の陰影が、自然と心を落ち着かせてくれます。
そんな空間でいただけるのは、豆を主役にした、週替わりの豆スープ、甘味などです。
いただいたのは、店の代名詞となっている「黒豆かん」。黒豆かんは、店主の北出美由紀さんがかつて過ごした北海道で、祖母につくってもらった黒豆煮の記憶から生まれたそう。ふっくら柔らかな黒豆とは違い、あえて少しかために炊かれた豆は、コリッとした歯ざわりで、寒天との相性も抜群でした。
また、夏限定の「自家製 青梅のスカッシュ」も印象的。まるごと1粒入った青梅を口に含むと、やさしい甘みとともに、初夏の記憶がふわっとよみがえるようでした。
北出さんはとても穏やかで、やさしさにあふれる方。旅人にそっと寄り添い、その人に合いそうな金沢の場所をさりげなく紹介してくれることもあるそうです。
にぎやかな観光地から、ほんの数分歩いただけで出会える、静かな時間。町家の陰影に包まれながら、豆のやさしさを味わうひとときは、旅の途中にそっと差し込む、心の休符のようでした。
ひがし茶屋街の奥にひっそりと佇む「宇多須神社」へ。豆月からは歩いて3分ほどです。
加賀藩初代藩主の祖・前田利家公をお祀りする宇多須神社は、金沢城の表鬼門にあたる場所に建てられ、古くから魔除けの役割を担ってきたといわれています。
参拝前、手水舎で手を清めようとしたとき、ふと背筋に視線を感じ、見上げると……こちらをじっと見つめる忍者の姿が。
実はこの忍者、境内に全部で3体いるそうですが、うち1体は見つからないのが正解なのだとか。どこかにこっそりと潜むその姿は、まさに本物の忍のようです。
授与所でふと目を引いたのは、ムカデがモチーフの魔除けのお守りでした。ちょこんとした姿には、どこかユーモラスな雰囲気と、くすっと笑みがこぼれるような愛らしさが宿っています。
宇多須神社から徒歩5分ほどの東山バス停から循環バス(西日本JRバス)に乗り、六枚町バス停で下車し、徒歩4分ほどの「ホテル・トリフィート金沢」にたどり着きました。
こちらのホテルは、金沢駅東口から徒歩5分ほどと、好立地にありながら、落ち着いた時間を過ごせるホテルです。荷物を預けたらすぐに街歩きを楽しめるのは便利ですね。
ロビーはモダンで洗練された雰囲気。加賀友禅や九谷焼など、若手作家による石川の伝統工芸がアートのように飾られ、旅の気分を高めてくれます。
お部屋はシンプルながらも、上質な雰囲気でリラックスできる空間。
特に印象的だったのは、石川県無形文化財でもある能登上布の帯地を使用したランプシェード。やわらかな光に浮かぶ模様が、旅の夜を静かに照らします。
ゆったりお湯に浸かれる大浴場「こっとりの湯」には、加賀友禅柄の灯籠がほのかに灯り、湯けむりのなかに幻想的な雰囲気が広がります。
大浴場には、ヘアアイロンなどのアメニティがそろっていて、女子旅にもうれしい心配りが感じられました。
そして、翌日。朝の楽しみはやっぱり朝ごはん。
朝食ビュッフェには、治部煮や金沢おでん、のどぐろの一夜干し、金沢カレーなど、地元の味がぎゅっと詰まったメニューがずらりと並びます。
九谷焼の豆皿に盛られたネタで楽しむ手巻き寿司コーナーも人気で、ブリや甘エビ、ホタルイカなど、新鮮な海の幸を自分好みに味わえる贅沢さ。
サラダコーナーには加賀野菜なども並びます。加賀棒茶を使ったオリジナルドレッシングは、ほんのり香ばしく、野菜の味が引き立ちます。
締めくくりは、自家製の加賀棒茶パンナコッタと、五郎島金時とココナッツミルクのお汁粉。
どちらもとろけるような食感とやさしい甘さがたまらなく、満腹なのに思わずおかわりしてしまうほど。
器も味も、まるごと金沢を楽しめる朝ごはん。「この朝ごはんのために、また泊まりたい」そう思わせてくれる、幸せな朝時間でした。
ホテルをチェックアウトして、歩いて10分ほど。
にぎやかな駅前を抜け、どこか懐かしさの漂う別院通りを進んでいくと、静かに佇む町家カフェ「安江町ジャルダン」にたどり着きます。金沢駅からも徒歩10分ほどです。
お店があるのは、明治時代に建てられた町家を改装した複合施設「Machiya5」の一番奥。
細長い廊下を奥へ奥へと進んでいくと、まるで秘密の場所にたどり着くような気分に。ひっそりと現れるガラス扉の向こうが、お店の入り口です。
店内は、波佐見焼のランプやカラフルな食器が並ぶ、センスのいいフレンチスタイル。高い天井と、昔の梁をそのまま活かした空間は、町家らしい趣を残しつつも、どこか洗練された雰囲気です。
気さくな店主の理恵さんが、やわらかな笑顔で迎えてくれるのもこのお店の魅力。お話ししていると、時間がゆっくりとほどけていくような、心地よいひとときに包まれます。
スイーツはドリンクとセットで注文するスタイル。
加賀藩御用達の能登名産「宝達葛(ほうだつくず)」を使ったミルクゼリーをいただきました。ぷるんとした食感に、ミルキーな甘さが広がって、まるで体の中からやさしく包まれるような味わいです。
ドリンクは、見た目も爽やかな二層仕立てのオレンジスカッシュを。思わずカメラを向けたくなる美しさでした。
観光地の華やかさとはまた違う、金沢の町家カフェには、暮らすように旅する楽しさがありました。古き良き建物と現代の感性が調和した空間で、五感をほどくひとときを。ぜひ次の金沢旅では、町家や古民家カフェを巡るルートを旅の中心にしてみてください。
掲載情報は2025年8月22日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR金沢駅→ひがし茶屋街→甘味カフェ 茶ゆ→豆月→宇多須神社→ホテル・トリフィート金沢
【2日目】ホテル・トリフィート金沢→安江町ジャルダン→JR金沢駅→JR東京駅