今回の列車旅ポイント

  1. ダイナミックレールパックで週末近場旅
  2. 東京駅から新幹線を利用して1時間半の前橋
  3. 前橋駅から徒歩圏内の白井屋ホテル

アートに出会うために旅をする––そんな時間が好きで、美術館巡りをよくするkumikoです。

今回は、ホテルそのものが美術館のような群馬県前橋市にある「白井屋ホテル」へ。館内には多彩な現代アート作品が並び、建築は大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーも務め、世界的に注目を集める藤本壮介氏が手がけています。日常を離れ、アートに囲まれた特別な滞在を楽しみました。

東京駅から白井屋ホテルへ

思い立ったらすぐ行ける前橋アートステイ

前から気になっていた「白井屋ホテル」を、新幹線と宿をお得なセットで申込みできる「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」で見つけ、迷わず前橋へ出発。

北陸新幹線 東京から前橋へ

JR東京駅から北陸新幹線に乗って約50分のJR高崎駅で両毛線に乗り換え、JR前橋駅へ。前橋駅からは徒歩約15分で白井屋ホテルに到着します。都心から気軽に行ける距離の場所に、非日常のアート空間が待っています。

白井屋ホテル外観 白井屋ホテル到着

前橋の街並みに突如現れる、白井屋ホテルのモダンな外観。藤本壮介氏が手がけた建築は、緑が建物に覆いかぶさるように配置され、街と自然と建築が溶け合うような景観をつくり出しています。歴史ある建物をリノベーションした佇まいは、現代と過去が同居する「都市の庭」のよう。

エントランスにつながる通路 エントランスからロビーにつながる通路

白井屋ホテルの2つの棟のうち、まずはエントランスのある「ヘリテージタワー」へ。

エントランスからつながる通路を進み、建物に一歩足を踏み入れると、吹き抜けの開放感が心地よいロビーに到着。大きな窓から光が差し込み、まるでギャラリーに迷い込んだかのよう。世界的に活躍するアーティストの作品が点在し、チェックインの瞬間から「ホテルというより展示空間」という印象を受けます。

作品名《ライティング・パイプ》 作品名《ライティング・パイプ》

創業300年の歴史を誇る老舗旅館をリノベーションした白井屋ホテル。館内を巡ると、古い構造体をあえて残した梁や、そこに配管のような作品が張り巡らされた、アーティストのレアンドロ・エルリッヒ氏の作品《ライティング・パイプ》が姿を現します。

無骨な素材感にアート作品が溶け込み、建築そのものが展示の一部になっているよう。階段を上るたびに違った表情に出会えるのも、白井屋ホテルならではの体験です。館内のアート作品は、2日目に体験したホテルツアーで詳しくレポートします。

白井屋ホテルのサウナ

アートと自然に包まれる贅沢なととのい時間

荷物を部屋に置いたら、楽しみにしていたサウナへ。もう1つの棟「グリーンタワー」に向かいます。コンクリートむき出しの建物「ヘリテージタワー」と相反するような、緑あふれる「グリーンタワー」は、旧利根川の土手をイメージしているそう。

フィンランドサウナ外観 丘の上に建つ静寂のフィンランドサウナ

白井屋ホテルには、「フィンランドサウナ」「ベッドルームサウナ」「薬草ミストサウナ」の3つの貸し切りサウナが用意されており、プライベートな空間で特別なひとときを楽しめます(80分制、別料金・前日までに要予約)。私はその中で、フィンランドサウナを体験しました。

更衣室 フィンランドサウナの更衣室
アロマオイル ホテルオリジナルのアロマオイル
フィンランドサウナの内部 フィンランドサウナの内部

ここで楽しめるのが、ホテルオリジナルのアロマオイルを使った「セルフロウリュ」。蒸気とともに広がる香りは、ただ汗を流すだけではなく、心までほぐしてくれるような心地よさ。土地の自然やホテルの世界観を映し出すようにブレンドされた香りは、他では体験できないサウナ時間を演出します。

フィンランドサウナの水風呂 フィンランドサウナの水風呂
ウォーターセット 充分に用意されたミネラルウォーター
外気浴スペース ホテルの建物を眺めながら外気浴

サウナで温まった後は、澄んだ水風呂で体を冷まし、外気浴スペースでゆったり休憩。アート作品と共鳴するような独特の空気感の中でととのう体験は、ホテルで過ごす時間をさらに豊かなものにしてくれます。

宮島達男氏の作品 作品名《Life (le corps sans organes)- no.17 2013》《Life (le corps sans organes)- no.10 2014》

フィンランドサウナのあるグリーンタワー頂上の小屋の中には、アーティスト・宮島達男氏の、デジタル・カウンターを用いたインスタレーション作品《Life (le corps sans organes)- no.17 2013》《Life (le corps sans organes)- no.10 2014》が。

フィンランドサウナの予約時間内は、こちらの作品を貸し切りで鑑賞できるんです。光る数字が「生と死の循環」を映し出し、貸し切りの空間ならではの特別なアート体験を楽しめます。

白井屋ホテルの客室

客室ごとに異なるアート作品を展示

サウナですっかりととのったところで、客室に戻りゆっくりと過ごします。

客室

客室ごとに絵や写真、インスタレーションなど異なるアート作品が飾られ、ひとつとして同じデザインはありません。滞在そのものが美術鑑賞の延長のようで、ただ泊まるのではなく「作品とともに過ごす」感覚を楽しめる特別な空間です。

今回宿泊したのは、猪瀬直哉氏の作品が飾られている「デラックスルーム(ROOM 15)」。白を基調としたやさしい印象のインテリアに、ヘッドボードの上に飾られた《Almost home 2 Flat version》が映えます。プールを描いているこの作品は、白井屋ホテルのために描かれたそう。

客室 作品名《VHS Blue》 作品名《VHS Blue》

トイレに飾られた《VHS Blue》《VHS Yellow》の2点の絵画は、宿泊客に向けた謎解きになっていて、作品を見るのがより楽しくなる工夫も。各部屋のコンセプトや作品については、ホテルのHPで詳しい解説を読むことができます。ROOM 15についてはこちら

ソファ席

一人掛けのソファ席には、ホテルオリジナルのウェルカムスイーツが用意されていました。客室内に用意された無料のドリップコーヒーやドリンクなども、地元群馬にこだわったものばかり。

部屋着 上下セパレートタイプの部屋着
客室のバスアメニティ こだわりのあるバスアメニティ

シャンプーやスキンケアなどのアメニティは、群馬県発のオーガニックコスメブランド「OSAJI」。また、バンブー素材でつくられた歯ブラシなど、プラスチックは極力使用しないというこだわりも。環境にも配慮された空間に、心からリラックスできます。

アートラウンジ

幻想的な空間でくつろぐアートナイト

ホテル内の散策も白井屋ホテルの醍醐味。緑とアートに囲まれた4層の吹き抜けを楽しめる「the LOUNGE」は、17時からは「アートラウンジ」として営業。作品に囲まれながらくつろげる特別な空間を、宿泊者は無料で利用できます。

ラウンジスナック
ラウンジスナック

17時から23時は、ホテル内の「白井屋ザ・ベーカリー」で焼かれたパンやカヌレ、「白井屋ザ・パティスリー」の焼き菓子などのスナックに加え、コーヒーや紅茶はもちろん、梅酒、ウイスキー、ワイン、日本酒まで揃ったドリンクが飲み放題。思い思いにグラスを傾けながら、贅沢な時間を楽しめます。

作品名《ライティング・パイプ》 作品名《ライティング・パイプ》
作品名《ライティング・パイプ》 作品名《ライティング・パイプ》

21時から24時までは、吹き抜けを走る《ライティング・パイプ》が色を変え始め、空間全体が幻想的な雰囲気に包まれ昼間とは全く違う景色に。アートに浸る体験が、一日の終わりをドラマティックに彩ってくれます。

おきりこみ

さらに21時から22時半までは、群馬の郷土料理「おきりこみ」が無料でふるまわれ、1日の締めくくりに心も体も温まるひと椀をいただけます。

白井屋ホテルでは、こだわりのディナーやお酒を素敵な空間で楽しめます。

the RESTAURANT(写真提供:白井屋ホテル)©Shinya Kigure. the RESTAURANT(写真提供:白井屋ホテル)

「白井屋ザ・レストラン」の夕食では、群馬の食材をふんだんに取り入れた「おまかせコース」を楽しめます。土や木、鉄などの自然素材を使用した室内には、オープンキッチンを囲むように席が配置されています。世界的美食ガイド『ゴ・エ・ミヨ』に4年連続掲載されている実力派レストランです。

the BAR 真茶亭(写真提供:白井屋ホテル)©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of New Material Research Laboratory the BAR 真茶亭(写真提供:白井屋ホテル)

グリーンタワーにある「the BAR 真茶亭」は、現代美術作家・杉本博司氏と建築家・榊田倫之氏によりつくられた空間。シンガポールでバー開業に携わるなど、世界的に注目されるバーテンダー・⽊村堅氏が厳選するお酒やお茶をいただきながら、素敵な時間を過ごせます。


群馬・前橋市内
JR+宿泊 白井屋ホテル

1泊2日/東京駅⇔前橋駅/朝食付き

※商品が0件の場合は検索条件を変更いただき、
再検索をお願いします。

白井屋ホテルの朝食

地元の恵みが詰まった心ほどける朝食

朝は「群馬の朝ごはん」と題された木箱入りの朝食から始まります。

朝食

和食・洋食から選べる中、私は和食をいただきました。焼き魚や卵焼き、旬の野菜の小鉢に果物が添えられ、箱を開けた瞬間に展示を眺めるような高揚感に包まれます。

朝食

鶏肉は驚くほどやわらかく旨みがあり、納豆は豆の風味が濃く印象的。アートに囲まれた空間でいただく一膳は、ただの朝食以上に滞在の満足度を底上げする体験となりました。

アフタヌーンティー(写真提供:白井屋ホテル)©Shinya Kigure アフタヌーンティー(写真提供:白井屋ホテル)

白井屋ホテルではランチやティータイムも楽しむことができ、特にアフタヌーンティーは人気のメニューとして知られています。彩り豊かな旬のフルーツを使った白井屋ザ・パティスリーのスイーツやセイボリーが並ぶスタンドは、訪れる人を魅了する華やかさがあり、特別なひとときを演出してくれます(予約制・メニューは季節ごとに異なります)。

白井屋ホテルのデイリーホテルツアー

作品の背景を知る特別なアートツアー

毎日開催(1日2回・17時、10時)されている無料のホテルツアーも見逃せません。スタッフとともに館内を巡り、建築や作品の背景を知ることで理解が深まります。宮島達男氏、レアンドロ・エルリッヒ氏をはじめ、リアム・ギリック氏、ライアン・ガンダー氏、白川昌生氏、武田鉄平氏など国内外のアーティストの作品に出会えました。

ジャスパー・モリソン ルーム ジャスパー・モリソン ルーム
ライティング・パイプ 客室から見る《ライティング・パイプ》

特別に見学できたジャスパー・モリソン氏が手がけた客室からは、《ライティング・パイプ》を眺めることができ、贅沢な時間に。

※編集部注:客室は予約状況次第で見学できないこともあります

作品名《ガリラヤ湖、ゴラン》 作品名《ガリラヤ湖、ゴラン》

フロントには写真家・杉本博司氏による《海景》シリーズから《ガリラヤ湖、ゴラン》が展示されていて、海のない群馬に共鳴するよう淡水湖を被写体に選んだという意図が印象的でした。

作品名《By physical or cognitive means(Broken Window Theory 02 August)》 作品名《By physical or cognitive means
(Broken Window Theory 02 August)》

ロビーにはライアン・ガンダー氏の作品《By physical or cognitive means(Broken Window Theory 02 August)》があり、粉砕されたガラス板と隠されたフォーチュンクッキーの紙が、目に見えない物語の存在を示しています。

(ソファの奥右)作品名《Lightfalls》(左)作品名《The Demon of Jealousy》 (ソファの奥右)作品名《Lightfalls》
(左)作品名《The Demon of Jealousy》

さらにthe LOUNGEには安東陽子氏のテキスタイル《Lightfalls》が光を柔らかく導き、空間を包み込んでいました。並んで飾られているのは、五木田智央氏の《The Demon of Jealousy》。

ヘリテージタワーの外観 ヘリテージタワーの外観

ヘリテージタワーの外壁に設置されているのは、ローレンス・ウィナー氏の作品。建物は国道に面しており、前橋という土地柄との調和も考えられているそう。黄色をベースに、赤や緑、青が印象的。

アートツアーに参加することで、ホテル全体が美術館のように感じられ、泊まること自体が体験になることを改めて実感しました。

白井屋ホテルのパティスリー&ベーカリー

前橋の恵みを味わうここだけの焼き菓子

ホテルをチェックアウト後、お土産を探しに併設のパティスリーとベーカリーに立ち寄ってみました。

白井屋ザ・パティスリー外観
白井屋ザ・パティスリー 内観

白井屋ザ・パティスリー」は、旬のフルーツを使ったタルトが人気。種類も豊富です。

ねぎサブレフロマージュ

気になったのが「ねぎサブレフロマージュ」です。群馬産のねぎを練り込んだサブレという珍しいお菓子で、思わず手に取っていました。ひと口食べるとチーズのコクが広がり、そのあとにふわりとねぎの香ばしさが感じられて、意外な組み合わせながらクセになる味わいです。

甘さは控えめで、甘いものが苦手な方でも楽しめるのがうれしいところ。コーヒーやワインとの相性も良さそうで、大人にこそおすすめしたい一品だと思いました。ホテルでの滞在体験とあわせて、ここでしか出会えない特別なお菓子を味わえるのも魅力です。

白井屋ザ・ベーカリー外観
白井屋ザ・ベーカリー内観

続いて「白井屋ザ・ベーカリー」へ。国産小麦など厳選された素材でつくられているパンは、バケットやパン・ド・ミから惣菜パンまで種類が豊富。こちらのベーカリーでは、生地から焼き上がりまでのすべての工程を店舗併設の工房でパン職人が行っているそうです。

シナモンロール

私が気になったのは「シナモンロール」。少し変わった形ですが、北欧では定番の形なのだそう。シナモンとカルダモンの爽やかな香りが食欲をそそります。

白井屋ホテル階段 白井屋ホテル階段

白井屋ホテルは、建築・アート・食・癒やしの体験が一体となった特別な場所でした。美術館を訪れるように泊まり、作品と空間に浸る時間は、旅の記憶をより豊かにしてくれます。さらに、館内を歩くだけでアーティストの息遣いを感じられ、街とつながる開かれた雰囲気も印象的でした。

滞在そのものが学びであり発見であり、帰路についた後も心に残り続ける。そんな余韻を味わえるのが、白井屋ホテルならではの魅力だと思います。次に訪れるときには、まだ体験していないアフタヌーンティーや客室ごとの異なる表情にも触れてみたいです。

前橋駅から帰京

掲載情報は2025年11月13日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

今回の旅の行程

【1日目】JR東京駅→JR高崎駅→JR前橋駅→白井屋ホテル

【2日目】白井屋ホテル/白井屋ザ・パティスリー/白井屋ザ・ベーカリー→JR前橋駅→JR高崎駅→JR東京駅

群馬・前橋市内
JR+宿泊 白井屋ホテル

1泊2日/東京駅⇔前橋駅/朝食付き

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