五箇山の冬景色&船で行く秘湯「大牧温泉」を求めて冬の富山へ
日本全国を旅しながら星景写真を撮影している宮坂雅博と小松由利江です。
今回は、世界遺産として有名な五箇山の合掌造り集落、秘湯・大牧温泉を中心に、富山の美味しい郷土料理や冬景色を満喫する旅をご紹介します!
【行程】
- 北陸新幹線&レンタカーで、ぐるっと富山県西部の旅
- 砺波の伝統家屋で、伝承料理をいただく
- 「世界遺産」五箇山の合掌造り集落を散策
- 船で行く秘湯の宿「大牧温泉」
- 北陸最大の寺院をめぐる
- 地域の技術を伝承。井波彫刻工房を見学
- 珍しい白色のそば
- 「クロスランドおやべ」から散居村を展望
- 伝統とモダンの融合! 薄氷本舗 五郎丸屋「T五」
北陸新幹線&レンタカーで、ぐるっと富山県西部の旅
JR東京駅から北陸新幹線に乗車して約2時間40分、JR新高岡駅に到着。「駅レンタカー」を使い、この駅を起点に富山県西部の名所をめぐります。
ここで、今回の旅路を説明しておきます。
能登半島の根本から内陸に広がる砺波(となみ)平野にある高岡市、砺波市、小矢部(おやべ)市および南砺(なんと)市の4市の位置を大まかに頭に入れておくと、旅路のイメージが容易になると思います。
砺波の伝統家屋で、伝承料理をいただく
JR新高岡駅からレンタカーで砺波平野を南に約20分走ると、築120年の伝統家屋「アズマダチ」の「農家レストラン大門(おおかど)」に到着します。
アズマダチとは、大きな三角の妻面に太い梁と束、貫がます目に組まれ、その間が白壁となっている家屋で、砺波地方にみられる伝統的家屋です。
また、周囲に植えられた杉などの屋敷林は「カイニョ」と呼ばれ、吹雪や夏の日差しを避ける役目が。広大な水田の間に民家が点在する「散居村(さんきょそん)」は日本の農村の原風景のひとつといわれています。
いよいよ、富山砺波地域の伝承料理を堪能します。
中央上にある三角形の「ゆべす」は、溶き卵とだし汁を寒天で固めたもの。私の住む長野県諏訪地方では、クルミを入れて甘く仕上げるので、地域の差が面白く感じられました。
その下にあるのが、三色くずきりで、中央にあるいり酒だし汁でいただきます(ただしアルコールに弱い人は要注意!)
右下は「大門素麺(おおかどそうめん)」。富山名産「赤巻かまぼこ」がのっています。この素麺の特徴は丸まった乾麺で、太めでコシがあり美味しいです。
伝承料理を美味しくいただき、お店を後にしました。
「世界遺産」五箇山の合掌造り集落を散策
東海北陸自動車道を経由して南に向かい、約50分で世界遺産「五箇山の合掌造り集落」に到着します。
同エリアは「五箇山の合掌造り集落」として、菅沼(すがぬま)集落と相倉(あいのくら)集落の2つの集落が世界遺産に登録されています。まずは、五箇山インターチェンジを降りてすぐの、「菅沼合掌造り集落」から散策を始めます。
合掌造り集落といえば岐阜県白川郷が有名ですが、五箇山の集落は小規模にまとまっており、周囲の山々と併せて静寂で美しい山間部の景観が楽しめます。
散策をしばらく楽しんでいると、赤い残り柿を見つけました。
白い雪に赤色が映え、集落の景観と相まって冬の風情を感じました。
「五箇山民俗館」で、合掌造りの内部も見学させていただきました。
急な階段なので少しドキドキしながら、「アマ」と呼ばれる屋根裏へ。
外見からはわからない、積雪の重みを逃がす、縄で縛られた「合掌(がっしょう)」部分、叉首(さす)とも呼ばれる屋根の骨組みがよくわかります。
また空間も広く、窓から明かりが差し込むため、冬場の作業場や食料保管庫として活用されているそう。
集落全体を眺めるために、展望駐車場へ移動します。ここは集落全体の美しい景観が撮れる撮影スポットです。
菅沼集落を後にし、庄川沿いに東北方向へ約15分移動すると「相倉合掌造り集落」があります。
少し高台にあるので、菅沼とは異なり、開けた空間に合掌造りの集落がたたずむ景観が美しいです。
船で行く秘湯の宿「大牧温泉」
相倉合掌造り集落から、険しい庄川沿いの道路を北に移動すること約30分。小牧ダムの脇にある遊覧船乗り場の駐車場に車を止めて、庄川峡遊覧船に乗り込みます。
宿泊先である、船でしか行けない秘湯「大牧温泉」まで約30分の船旅です。庄川峡を遡りながら眺める景観は、まるで水墨画のような世界で感動です。
大牧温泉が見えてきました。険しい峡谷に張り付くように建てられており、旅館へは船で行くことしかできないため、まさに秘境の湯。
携帯電話は、会社によってはつながらないので注意が必要です。(ロビーでのみWi-Fiが利用可能)
まずは露天風呂に入り、船旅で冷えた体を温めます。目の前には庄川峡の雪景色が広がり、絶景を楽しみながらゆったり。
大牧温泉の成分にはナトリウムが含まれ、口に含むとほのかな塩味があります。
部屋でひと休みし、おなかもちょうどすいてきたところで夕食。窓の外に水墨画をはめ込んだような、趣ある部屋で夕食をいただきます。
富山湾で獲れた紅ズワイガニや寒ブリなどの海鮮と、砺波平野で採れた野菜やサトイモが、柚子などで美味しく味付けされています。
辛口でコクがある、砺波の地酒「玄」、五箇山の地酒「三笑楽(純米生貯蔵酒)」と一緒に、美味しくいただきました。
美味しい料理を食べて部屋に戻り、窓の外を見ると、雪が降っていました。
北陸の風情ある雪景色をしばし眺めてから、ゆっくり眠りに就きました。
翌朝、再び庄川峡遊覧船に乗って、大牧温泉を後にしました。
船が岸から遠く離れるまで、従業員の方が手を振ってお見送りしてくれる姿に感動。
曇っていた前日とは一転した青空で、朝日がまぶしく庄川峡の雪山を照らし、爽快な船旅でした。
北陸最大の寺院をめぐる
庄川峡遊覧船から庄川峡を抜けて砺波平野に入り、車で約15分行くと、「真宗大谷派(東本願寺)井波別院瑞泉寺」の門前町「八日町通り」に到着します。
国の伝統的工芸品に指定されている「井波彫刻」の工房が軒を連ね、各工房から木を削る音が聞こえる心地よい通り。
まずは瑞泉寺に向かって歩きます。
お店の看板やバス停などにも、さりげなく木彫が使われています。かわいい木彫りの猫なども隠れているので、探しながら歩くのも楽しいかも。
ウサギやイノシシなど、干支にちなんだ表札がいくつもあり、どれも個性があって飽きません。
通りをしばらく歩くと、瑞泉寺に到着。
寺の周囲には、3度にわたる焼失と復興をへて防火楼壁が築かれ、立派な城郭並みの石垣が建てられています。
石垣を抜けると大きな山門(県指定重要文化財)があります。高さ17.4mの重厚な造りで、浄土真宗の建築様式で造られた、山門を代表する壮麗さのある山門。
山門の中に入り天井を見上げると、見事な唐狭間(からさま)彫刻に圧倒されます。
これらの井波彫刻には、匠の技を伝えるために、あえて華美な彩色は施されていません。
見物人に強い印象を与えられるよう、目線と距離を鑑みて、大胆かつ重層的な彫りで奥行き感を出し、全体構造も緻密に計算されています。
また、瑞泉寺が何度も火災で焼失し再建されたため、京都本山より御用大工、彫刻大工が派遣され、井波彫刻の伝承がなされたという一面もあるそうです。
山門を通り抜けると、国内で4番目の大きさといわれる巨大な本堂に驚かされます。季節柄、雪囲いが入り口にありました。
また左横には、聖徳太子2歳の尊像を安置する「太子堂」が並んで立っています。
なぜ、浄土真宗のお寺に、太子堂があるのでしょう。
案内の方に聞いたところ、浄土真宗の宗祖、親鸞聖人が「和国の教主(日本のお釈迦様)と敬い、また聖徳太子の願い(和をもって尊しとなす)に感化された井波彫刻の匠たちが建立したのだとか。
この建物で最も注目すべき井波彫刻は、4カ所ある向拝(こうはい)の「手挟(たばさみ)彫刻」。
鳳凰や龍など、それぞれを担当した工房の匠たちが技を競いつつも、全体として調和が取れた見事な出来栄えです。
地域の技術を伝承。井波彫刻工房を見学
瑞泉寺を後にして八日町通りに戻り、井波彫刻の工房を見学させていただきました。
通りに面した窓ガラスから差し込む日光を利用して、自然な陰影を付け彫刻を行う工夫が見られます。(彫刻の種類に応じて、照明もうまく利用しています)
彫刻刀も、彫りの部位や形状に合わせて、何十種類も使い分けされますが、熟練していくにつれ、使用する種類は次第に少なくなるそうです。
この辺りでは、約300人もの彫刻師が技を競い合っているそう。
協同組合を通して、名古屋城本丸御殿の欄間彫刻などの大規模な復元を受託することも多く、地域全体で、技術の伝承がうまく行われています。
珍しい白色のそば
彫刻工房を出ると、ちょうどお昼時。八日町通りにあるそばの名店「蕎麦懐石 松屋」に入りました。
そばの実の芯だけを使っている白色の珍しいそば。うどんに似た口当たりで、美味しく頂きました。
「クロスランドおやべ」から散居村を展望
八日町通りを後に車で約30分、小矢部市の「クロスランドおやべ」へ。
地上118mの高さを誇り、青空が外壁のガラス表面に反射して背景とうまく調和した、美しい展望タワーです。
エレベータで地上100mにある展望フロアに上がり、砺波平野に広がる散居村を一望。田んぼが広がる中に農家が点在する、日本最大の散居村といわれる景観です。
伝統とモダンの融合! 薄氷本舗 五郎丸屋「T五」
クロスランドおやべを後に、あいの風とやま鉄道石動(いするぎ)駅方向へ約5分、小矢部市役所の近くにある、創業1752年の和菓子の老舗「薄氷本舗 五郎丸屋」に到着。
伝統銘菓「薄氷」を現代風にアレンジし、国内外の評価が非常に高い有名な「T五(てぃーご)」をお土産に求めます。
砺波平野の田んぼに張った氷のごとく、極めて薄く作られており、その製法は秘伝だそう。
柚子や桜の優しい風味が和三盆の甘さと共に広がり、パリッとした食感ののち、口の中で溶けていきます。
260年以上、伝えられた製法を守りつつ、新しい風味や食感に挑戦するその姿勢は、伝承料理や五箇山集落、井波彫刻など、砺波地域全体にも共通するもの。
薄氷本舗 五郎丸屋を後に、車で約30分 、JR新高岡駅に戻ります。
富山県西部山側の砺波市、南砺市、小矢部市の旅を満喫しましたが、伝統ある独自の食文化や芸術を育んだ豊かな土地柄を実感しました。よく知られた国宝瑞龍寺、ひみ寒ブリや白エビなどの海の幸といった富山県のイメージに、新たな印象が加わり、非常に楽しく有意義な旅でした。
星景写真家・宮坂雅博に師事。写真店を営んでいた父親の影響もあり、中学生の頃から一眼レフカメラを使い撮影を始める、女性の繊細な感性を生かし、宮坂氏と共に幻想的な写真を撮り続ける。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR新高岡駅→農家レストラン大門→五箇山の合掌造り集落(菅沼集落・相倉集落)→庄川峡遊覧船→大牧温泉
【2日目】大牧温泉→庄川峡湖上遊覧船→真宗大谷派(東本願寺)井波別院瑞泉寺→八日町通り(井波彫刻野村清宝工房・蕎麦懐石 松屋)→クロスランドおやべ→薄氷本舗 五郎丸屋→JR新高岡駅→JR東京駅