今回の列車旅ポイント
料理家、写真家のminokamoです。各地に赴き、郷土料理の調査や地域の食を活かした料理提案などをしています。
今回は、岩手県の一関へ! 豊かなもち食文化が育まれた地とは知っていましたが、訪問は初。「パンよりもちの方が気軽に食べられる」と言う方がいるほどで、もち料理のレパートリーもたくさんありました。おいしく楽しい、もちワールドへご案内します!
JR東京駅で東北新幹線「やまびこ」に乗車。もち旅のはじまりです!
新幹線の車内で一関のもちについて予習しました。江戸時代から続く、一関の「もち食文化」。300種類以上のもち料理が存在し、冠婚葬祭、田植えなどの節目、季節ごとと一年を通してもち料理が食べられるそう。正式な場で提供され、作法も定められた「もち本膳」なる料理があることも知りました。
一関もち食文化の歴史、もち料理を食べられる飲食店を紹介した「一関・平泉『もち』MAP」を一関市公式観光サイト「いち旅!」のトップページにある「観光パンフレット」からダウンロードできます。もちについて予習するのにもおすすめです。
頭の中がもちでいっぱいになったところでJR一ノ関駅に到着。東京駅から2時間40分ほどでした。東北新幹線「はやぶさ」を利用すると、2時間ほどで到着できるそう。長年伺いたかった一関ですが、思った以上に気軽に来れるんですね。
一関への旅は「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を利用するのがおすすめ。新幹線と宿のセットがお得に予約できます。
新幹線を降りてすぐ、改札口の手前におもちの説明コーナーがあり「もち暦」パネルなどがあります。
一ノ関駅西口から徒歩3分ほどの「三彩館ふじせい」へ。
「元祖ひと口もち膳」を注文。もち米の最高峰でもある「こがねもち」を使ったもち料理とのこと。松花堂弁当箱に入った8種類のもち料理と「引き菜のお雑煮」が御盆に載ってきました。
「一関地方独特の多彩なもち料理を気軽に楽しんほしい」という思いから、おもちをひと口サイズにして、女性でも複数の種類を食べられるよう工夫したメニューなのだそう。
蓋を開けると、色とりどりのつきたてのおもち! 今朝まで東京にいたのに新幹線を降りてすぐもちワールドに入れるとは、うれしい!
松花堂弁当の中央にあるのは大根おろし。この大根おろしが重要で、おもちが喉につかえないよう、最初に食べるのだそう。甘酢味でさっぱりとしていておいしい。
喉を潤したところで、次は「あんこもち」をいただきます。つきたてのもちとこし餡がとろけるよう!
初めていただいた「ふすべもち」。おもちを包むそぼろのような見た目のものは、すりおろしたごぼうと人参、鶏ひき肉を、水分が飛ぶまで炒め、醤油やみりん、唐辛子で味付けしたもの。鶏肉の旨みにごぼうのコクが加わり、おもちと合う!
昔は、鶏肉でなく、キジ肉か焼いたドジョウを囲炉裏で干して粉にしたものと唐辛子を入れて、汁気も多く、温まる料理だったそう。冬の大切なタンパク源でもあったのでしょう。
「じゅうねもち」には、香ばしいコクがあるエゴマの実が使われています。昔は道端でもとれるほど身近な素材だったそうです。
さらに、「ずんだもち」「くるみもち」「ごまもち」「納豆もち」「ショウガもち」をいただき、最後は「引き菜のお雑煮」です。
お雑煮は、一関では「引き菜椀」とも言われ、千切り大根や人参など具だくさん。出汁が効いていて、とろりとしたおもちに野菜の歯応えのバランスが良いです。
フルコースのようなおもちを味わったあとは、一ノ関駅に戻り、今夜泊まる宿「山王山温泉 瑞泉郷」の送迎バス(事前予約制)に乗りました。
山沿いの美しい景色を楽しみながら、運転手さんともちトーク。「小さい頃に体調を崩しても、もちを食べるとすぐ元気になったんだ、だから今でももちが大好きでね」とうれしそうにお話ししていただきました。
駅から30分ほどで、瑞泉郷に到着。
部屋からは美しい庭園と磐井川を眺めることができました。
一息ついて、温泉へ。美人の湯と命名された温泉は、硫酸塩泉で、お肌をすべすべにしてくれるそう。
さて夕食時間。
小鉢が並び、メインはエビや蛤、そして大きなフカヒレが入った「フカヒレ海鮮鍋」! 加熱すると良い香りが漂います。プルっとしたフカヒレのおいしさはもちろん、エビや蛤の効いた出汁が良い。フカヒレは一年を通して提供されているそう。
お膳のほかに、フリーフードコーナーもあり、この日は、舞茸天、鶏フライ、鶏だし麺などが並びました。大人はもちろん、子どもも喜びそうです。
翌朝は宿の敷地を軽く散策してから、朝ごはんの会場へ。
「芋の子汁」は、たくさんの小さな里芋と牛肉が入った東北の郷土料理。とろけるような里芋です。
おもちは、一関の定番もち料理のひとつでもある「生姜もち」。とろりとした生姜のあんをまとったおもちで、冬は体を温め、夏は発汗を促してくれます。
チェックアウトし、送迎バスで再び一ノ関駅へ。
一関出身の方と隣席になり、「昔はね、結婚式場などもなかったでしょう。冠婚葬祭があるたびに、近所の人や親戚が集まって、みんなで料理をつくっていたのよ。煮物や色んなご馳走が並んでね、最後に出るのがおもちなの」と。当時は、割烹着を着たお母さまたちが、わいわい準備をされていたそうです。
一ノ関駅から徒歩15分ほど、酒蔵「世嬉の一」に併設された「蔵元レストラン せきのいち」へ。もち料理や小麦粉を練って薄く伸ばした生地を煮込んで食べる「はっと」など、地元食材を使用した郷土料理が味わえるレストランです。
「一関もち膳」を注文。一関の代表的なおもちである「あんこもち」「ずんだもち」「ごまもち」「沼えびもち」の4種と、お雑煮、大根おろし。
「沼えびもち」は沼えびの香ばしい風味がもちとよく合います。米と麹のみでつくられた自然な甘さの「甘酒」付きなのが酒蔵ならでは。
一ノ関駅に戻り、新幹線まで時間があったので、駅構内にある「Caffé ComeSta」へ。
ここでももちメニューを発見! 「大林製菓のもちメンチカツバーガー」を注文しました(もち膳の後に食べ過ぎです。笑)。
なんと、メンチカツの中にもちが入っていてびっくり! 意外な組み合わせですが、とろりとしたもちとメンチがよく合いおいしい!
これにて、一関のもち旅終了! 2日間でたくさんのつきたてのおもちを味わえました。
昔は、お客さんをお腹一杯にすることが精一杯のおもてなしでもあったそう。何種類ものもち料理を準備するのは大変なこと。そのもち料理を食べるお客さんが、おもちの美しさに感激し、おいしさに舌を打つのは、今も昔も同じ。
出会った方たちと話をしながら、おもちに「おもてなし」の気持ちを感じました。たくさんのおもちをごちそうさまでした! また、おもちのおかわりをしに伺いたいです。
掲載情報は2025年1月28日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR一ノ関駅→三彩館ふじせい→JR一ノ関駅→山王山温泉 瑞泉郷
【2日目】山王山温泉 瑞泉郷→JR一ノ関駅→蔵元レストラン せきのいち→Caffé ComeSta/JR一ノ関駅→JR東京駅