今回の列車旅ポイント
「絶対温感」をもつ温泉専門家!! 北出恭子です。泉質を五感でチェックする「利き湯」をしながら、年間300以上の国内外の温泉に入湯し、大学で温泉研究も行っています。
今回は、日本三大薬湯の1つ、新潟県にある松之山温泉に行ってきました。とても珍しい泉質の温泉と、里山の恵みをたっぷりと感じる癒やしの旅でした。
JR東京駅から上越新幹線「とき」に乗車し、JR越後湯沢駅を目指します。乗車時間はたったの1時間15分ほど。あっという間に到着するので楽々です♪ 「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を利用すれば、新幹線と宿をお得なセットで申込みできますよ。
上越新幹線「とき」
越後湯沢駅に着いたら、北越急行ほくほく線の列車に乗り換えます。
北越急行ほくほく線
ほくほく線はICカードが使えないので、きっぷを買うのを忘れずに。
まつだい駅
約50分でまつだい駅に到着! 駅舎は道の駅まつだいふるさと会館とつながっていて、列車の駅と道の駅が隣接する全国的にも珍しい駅です。
特急はくたか記念碑
まつだい駅の北側にある広場には、かつて大活躍し、北陸新幹線金沢駅延伸開業とともに運行を終えた「特急はくたか」の記念碑が建てられています(冬季は雪に埋もれて見られない場合もあります)。
駅の南側の小さな丘には、世界的に知られる十日町市・津南町で開催される国際芸術祭「大地の芸術祭」で制作された、草間彌生さんの野外彫刻『花咲ける妻有』が展示されています(冬期は積雪のため非公開。公開期間は作品HPを参照)。
まつだい駅から松之山温泉へは、宿の無料送迎バス(事前予約制)で向かいます。約15分乗車し、今晩のお宿「ひなの宿 ちとせ」に到着しました。
玄関脇にある足湯
玄関の脇には、足湯もありました。
エントランス
ひなの宿 ちとせは、全館が畳敷き。靴を脱いで、やわらかな畳の上を歩くとなんとも心が安らぎます。
宿泊した客室
宿泊したお部屋は、10畳に掘りごたつ付きで広々。冬は、雪見障子を開けると、掘りごたつに座りながら豪雪地帯の雪景色を眺められるそう。
ラウンジ「じょんのび」
客室以外にもゆっくりと過ごせる場所が。ラウンジでは、コーヒーや松之山産のホーリーバジルを使用したハーブティーなどが飲めます。湯上がりにもぴったり。
さぁ! それでは、旅の疲れを癒やしに温泉に入りましょう!!!
「ほんやらの湯」の内湯
こちらは、寝湯付きの男女別大浴場「ほんやらの湯」。
松之山温泉は、日本三大薬湯の1つに数えられ、開湯は約800年前と言い伝えられている歴史ある名湯です。療養効果のある温泉として認められる基準値の約16倍の成分が含まれている茶色透明な湯は、ミネラルたっぷりで薬理作用も高く、ポカポカに温まることができます。
源泉は「鷹の湯源泉」を使用
松之山温泉は、火山を熱源としていないのに、90℃を超える高温高圧力で湧き出す世界的にも珍しい温泉。約1200万年前の古代の海水が、閉じ込められた地層から湧出するため、なめると塩辛くまさに海水のよう。石油と薬品のような臭いに、海のミネラルが混じったような独特の香りがします。
「ほんやらの湯」の露天風呂
ほんやらの湯には、源泉かけ流しの露天風呂もあります。清浄な空気に包まれながらの湯浴みは最高!!
貸切風呂「山の湯」
プライベートで温泉を楽しみたい方には、予約制で利用できる2つの貸切風呂(有料※)もあります。こちらも源泉かけ流しです。
※編集部注:23:00〜翌7:30は空いていれば予約不要・無料で利用ができます
湯上がり処(写真提供:ひなの宿 ちとせ)
大浴場のすぐそばには、湯上がりにうれしい♡松之山の雪解け水を電気分解したおいしい「高濃度水素水」と、アイスキャンデーが無料でいただける「湯上がり処」があります。
地酒と湯治卵の振る舞い
さらに、新潟の地酒と「湯治卵」の振る舞いまで! 温泉で24時間をかけてつくられた湯治卵は、温泉成分が染み込んで燻製卵のような色と香り、塩味のある濃厚なお味でした。
少し部屋で休んだあとは、待ちに待った夕食タイム♪
里山の恵みたっぷりの「里山会席」
松之山に自生するクロモジを使った「クロモジウォーター」をはじめ、前菜は自家製の発酵豆腐、姫竹・むかご・木の子などの山の幸たっぷりの小鉢、魚沼美雪ますのお造り、山清水鯉の鯉こくなど、まさに里山の恵みがここぞとばかりに詰まったご馳走です。
湯治豚のカットサービス
メインディッシュは、妻有地方(十日町市、津南町)で生産されているブランド豚・妻有ポークの肩ロースを68℃の源泉の中で3時間かけてじっくりと真空低温調理した「湯治豚」。スタッフの方が、目の前でカットサービスしてくれる贅沢な演出です!
湯治豚
湯治豚は、松之山温泉水からつくられた塩と、醤油で和えた山葵につけていただきます♪
口に入れてビックリなのが、きめ細かな柔らかい肉質! しっとりとした食感で、旨みと甘みが強い感動のおいしさです!! 見た目には脂がたっぷりなお肉ですが、脂っぽくなくあっさりとしています。これは、脂身の融点が低いため口の中でサラッと溶けるからだそう。
棚田鍋
こちらは看板メニューの「棚田鍋」。松之山温泉には、立地や環境条件から棚田が多いため、それをイメージして開発されました。松之山温泉のご当地名物鍋料理です。
地元産魚沼コシヒカリの重湯を使ったやさしい味のスープに、野菜やきのこ、妻有ポークなどの旨みがギッシリ。南魚沼の伝統野菜・神楽南蛮(唐辛子の一種)と麹を塩漬けした「塩の子」を入れることで、さらにコクが加わり、良いアクセントになっておいしかったです。香ばしいカリカリのおこげをスープにくぐらせて、最後の一滴まで飲み干しました。
ぬか釜で炊くコシヒカリ
こちらは、松之山温泉でも今はほとんど目にすることがなくなったという「ぬか釜」。お米のもみ殻(ぬか)を燃料として使用する、昔ながらのかまどでお米を炊きます。火力が強いため、お米がとてもおいしく炊き上がるそう。
お米を炊いて炭になったもみ殻は捨てずに田んぼの残雪の上に撒くと、融雪になるだけでなく、土壌の質まで良くなり、またおいしいお米がつくられるそうです。自然の循環であり、雪国ならではの知恵と文化ですね。
塩むすび
ぬか釜で炊き上げられたコシヒカリは、日本海の海水と海藻を煮てつくったこだわりの藻塩と一緒に握って、塩むすびにしてくれます。ぬか釜で燻した香りがふんわりとする塩むすびは、一粒一粒が際立っていて、モチモチとした食感で、何個でも食べられそうなくらいのおいしさです(涙)。
ちとせ文庫
お腹いっぱいになったあとは、「ちとせ文庫」でまったり。松之山の自然に関する写真集や資料、伝記から漫画本までさまざまなジャンルの本が並びます。なんとこれらの書籍は、湯治で滞在していたお客さまから寄贈された本だそうです。
読書タイムを楽しんだあとは……。おやすみなさい★
こちらのお宿では、新潟県内の21の地域のお宿で実施しているプロジェクト「にいがた朝ごはん」の朝ごはんをいただくことができます。
朝食
ぬか釜炊きの十日町産コシヒカリに、十日町産自家栽培大豆「さといらず」を使い、昔からの製法でつくった納豆、妻有ポークの甘辛そぼろ、松之山温泉水を使った豆腐など、ここでしか味わえないごはんのお供が並びます。体が喜ぶ朝ごはんです。
きのこ朝まんま
「身土不二」をテーマにしたこの日のメインメニューは「きのこ朝まんま」(2025年10月取材時)。松之山産朝採りナメコなど、地元で採れるきのこと特製発酵合わせ味噌「まんまの味(み)」を合わせた焼き味噌は、香ばしさがあとを引くおいしさで、ごはんが進みました。
朝食のあとは、朝のお風呂へ。
露天風呂「月見の湯」
総ヒノキでつくられた露天風呂「月見の湯」は、約42℃のあつ湯と約40℃のぬる湯があり、自分好みの温度を選んで入れるのがうれしいところ。2024年7月にリニューアルされて、山清水の水風呂(写真奥)が新たにできていました。
温泉に入ってから水風呂に入るを繰り返す「温冷交互浴」で血行が促進され、全身ポカポカに。疲労回復やリラックスの効果が高まり心身ともに整います。泉質が弱アルカリ性のため、余分な角質や皮脂が取り除かれてツルツル肌に。さらに、温泉成分が肌に膜をつくることで保湿剤のようなはたらきがあり、保湿&保温効果も◎。
チェックアウト後に松之山温泉街を散策します。まず、立ち寄りたいのがひなの宿 ちとせの目の前にある「松之山温泉 里山ビジターセンター」。
松之山温泉 里山ビジターセンター
昼は、観光案内所&カフェ、コワーキングスペースとしても利用できます。レンタサイクル(※冬季除く)もあるので、樹齢約100年のブナの木々が広がる絶景スポット「美人林」に足を延ばすのもおすすめです。片道30分ほどのサイクリングで到着できます。
また、夜は「湯治BAR」(ひなの宿 ちとせの直営)として営業。地元クラフトビールや松之山ボタニカルフレーバージンや、薪窯で焼きあげる山菜ピザなど、地元食材を使用したお酒と料理を楽しめるそうです。
鷹の湯源泉
温泉街の坂をのぼって行くと、川沿いに鷹が発見したとされる松之山温泉の「鷹の湯源泉」が。白い噴気を上げながら温泉が勢いよく湧き出していました。
不動滝
さらに登って行くと、「不動滝」という美しい滝を発見。雪解けのころには、水量が増えてさらに迫力があるそう。
その先の高台に現れたのは、大地の芸術祭で作家・サンディエゴ・シエラが制作した『ブラックシンボル』。真っ黒で巨大な雄牛の像は、スペインのシェリー酒メーカー・オズボーン社のシンボルマークで、越後妻有とスペインをつなぐ架け橋として、鎮座しています。
そろそろ戻りましょう。松之山温泉からまつだい駅までは路線バス「東頸バス」で30分弱。時間があえば、宿の無料送迎バスを利用することもできます。まつだい駅からは、越後湯沢駅を経由して東京駅へ。
今回の温泉旅は、長い年月をかけて育まれた松之山温泉で、温泉はもちろん、雪国ならではの知恵や文化、里山の恵みなどの新しい学びとたくさんの感動をもらえました。最高の体験ができました。
行きたい 食べたい 日本海!新潟・北陸宿泊割引クーポン配布中!
北陸・新潟エリアには日本海の絶品海鮮料理が味わえるお宿がたくさんあります。今が旬の海の幸を味わいに旅へ出かけませんか?
今なら、枚数限定・先着順にて、新潟県および北陸方面への宿泊付き旅行商品に使用できるおトクな割引クーポンを配布中です♪ 詳しくはこちら
掲載情報は2025年12月4日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR越後湯沢駅→北越急行ほくほく線 まつだい駅/『花咲ける妻有』→ひなの宿 ちとせ
【2日目】ひなの宿 ちとせ→松之山温泉街散策/松之山温泉 里山ビジターセンター/『ブラックシンボル』→まつだい駅→JR越後湯沢駅-JR東京駅