今回の列車旅ポイント
みなさんこんにちは! 歴史旅大好きモデルの加治まやです。新しい年(2023年)にもようやく慣れてきた今日この頃。冬の情緒を感じたくて向かうのは、雪国・新潟の自然豊かな下田郷にある「越後長野温泉 嵐渓荘」。温泉にゆかりのあるランチや、湯守が守る温泉で楽しむ雪見風呂に雪見酒! めいっぱい冬の情緒を感じる癒やされ旅に出たいと思います。
今回旅した温泉宿は、「地・温泉」のお宿です。「地・温泉」とは、代々湯守が愛情を注ぎ守ってきた伝統的な秘湯・名湯を厳選したお宿。お湯の効能はさることながら、懐かしい景色と心のこもったおもてなし、地のものをいかしたお食事で、心身ともに癒やされる時間を過ごせます。詳しくはこちら
寒さはまだまだ続くようで、東京でも0度前後の日があったりなかったり。都会の寒さって芯から凍えますよね。雪は降ってもびちゃびちゃだし、冬らしい情緒的な景色が感じられないことが多くて悲しい。
今回はそんな悲しみを吹き飛ばすため雪国新潟で温泉!! 地酒に雪行燈!! というわけで、旅の始まりはいつだってJR東京駅♪ 上越新幹線「とき」に乗って新潟県のJR燕三条駅に向かいます。
JR高崎駅を過ぎたくらいからトンネルが多くなっていって、ある瞬間にぱっと雪景色が広がりました。テンション上がる〜!
約2時間の旅、あっという間に燕三条駅に着きました。
なんだか駅の雰囲気もレトロでいい感じ。
駅のなかには、金属製品や包丁など「ものづくりのまち」として有名な新潟県燕市の名産品が展示してありました。気が早いけど、帰りのお土産選びが楽しみになっちゃう。
お宿「越後長野温泉 嵐渓荘」までは、三条市のデマンド交通「ひめさゆり」を利用して向かいます。お宿の無料送迎バス(要予約)もありますが、今回は午前中に到着して、現地でランチも楽しみたいので。
デマンド交通は、市内全域に設置された停留所であれば好きな所で乗り降りができます。距離や人数によって料金も変わってくるサービスでお得に移動ができるんだとか。利用する1時間前までに電話で予約をすればいいのも便利。新幹線の時間が決まってから予約できますよ。(※)
※編集部注:今回利用した、三条市デマンド交通「ひめさゆり」について、詳しくはこちら
私が乗ったデマンド交通の運転手さんは地元の方で、「昔はここまで列車が通ってたんだ〜」なんて歴史案内もしてくださって、観光バス気分で楽しかったです。
道すがら一番の注目は、川のほとりの白鳥飛来スポット「白鳥の郷公苑」!
こんなにたくさんの白鳥を見たのは初めて。感動!
だんだん雪深くなってゆく山道を走って駅から40分ほど、嵐渓荘の駐車場にある停留所に着きました。
現地に着いたらまずは腹ごしらえ。ランチはお宿の方からおすすめされた「八木茶屋」でいただくことにしました。車で5分ほど。なにやら、嵐渓荘ともゆかりのあるお店なのだとか。
レトロな雰囲気の店内にドキドキしながら、お店のイチオシ、山塩ラーメンを頼みます。
素朴に見えるこのラーメン、実は嵐渓荘の温泉を使ってつくっているんだとか!
この辺りは遥か昔に海の底だったので、嵐渓荘の温泉には塩分が多く含まれており、煮詰めることで塩ダレができます。その塩ダレとお店オリジナルの鯛だしをブレンドして優しい味のスープをつくっていると、奥さまが教えてくれました。
自家製チャーシューの塩分と柚子の香りがいいアクセントになってとってもおいしい! 雪で冷えた身体に染みます。緑がかった麺にはクロレラが練りこまれていてヘルシーなのもうれしい。
優しい店主ご夫婦に見送られお店を後にします。来るときは気づかなかったけど、お店のすぐ近くには新潟県景勝100選にも選ばれている「八木ヶ鼻」と呼ばれる絶壁(約600万年前に形成された海底溶岩が露出してできたそう)が鎮座していました。
お腹も満たされ、絶景も見ることができて、得した気分になりながらお宿に戻ります。
本日のお宿である嵐渓荘では、地元で採れた食材を生かしたお料理をランチで楽しむこともできます。事前に予約をしておくのがおすすめです。
かき分けられた雪の道を進んでいくと見えてくる趣深い和風の建物。嵐渓荘の本館にあたる緑風館は、国の有形文化財に登録されています。
元々は昭和初期に弥彦線の燕駅前に料亭として建てられた建物。戦後になってこの地に移築したものなんだとか。正面からは見えませんが、和風建築の屋根の上には洋風の望楼(ぼうろう)と呼ばれる遠くを見渡すためのやぐらがのっています。
はからずも歴史を感じるものに出合えて、テンションがどんどん上がっていきます。
チェックインを済ませてまずはお部屋へ。
今回泊まったのは雪景色がすばらしい渓流館の和室。窓から見える川と一面真っ白の光景に脳が休まるのを感じます。何も考えず何時間でもぼーっとしてられる感じ。
こちらのお部屋以外にも2022年にリニューアルした翠悠館の和洋室もあって、部屋の雰囲気を選べるのもうれしい。
一息ついたところでさっそく今回の目的のひとつ、温泉を楽しむことに。
嵐渓荘さんには大浴場に加えて貸切風呂が2種類もあるので、夕食の前に2つは浸かっておきたい!!
まずは身体を洗うために大浴場へ。
泉質などには疎い私でも一歩浴場に足を踏み入れた瞬間、足の裏の感覚が変わったのが分かってびっくり。湯船に浸かるとぬるめのお湯が肌にまとわりつく感覚がありました。
ランチでいただいた山塩ラーメンからも分かるように、こちらの温泉は塩分が強いので肌の感覚が狂ってお湯がぬるく感じ、長く浸かっていられることにより身体が温まるんだとか。塩分が高いということは傷口に染みちゃったりするのかな〜と思っていたんだけど、痛くならなかったのも不思議でした。(なんと翌日には切り傷は癒えていた!!)
湯上りで渇いた喉は、ラウンジに置いてある温泉ほうじ茶で癒やされます。
塩辛い温泉と、日本北限の茶産地・新潟県村上市の茶葉を使用して淹れたほうじ茶は、飲むと昆布茶のような味がして、癖になってしまい3杯もいただいてしまいました。温泉を飲むととても身体にいいことをした気になるのは何故だろう……。
さて、暗くなる前にもうひとっ風呂浴びましょう。
「山の湯」と呼ばれる無料貸切風呂には「石湯」と「深湯」の2種類があって、まずは石湯に入ることにしました。
雪見風呂ー!! 普段の旅行では観光をし尽くしてから旅館に着くことが多いので、明るいうちから露天風呂に浸かることは中々ない私。日中に雪に囲まれてゆっくりお風呂に浸かれるってなんて贅沢なのでしょう……。
貸切で誰の目も気にせず、銀世界に囲まれた静寂のなかの温泉に浸かり、心も身体も癒やされていくのがわかります。
お風呂から上がって余韻に浸っているとすぐに夕食の時間です。
前菜はお宿の周辺で採れた山菜を中心に、ミズナの実や自家製干し柿バターなどの変わり種もおいしい。特に目を引いたのが、東京では見たことのない「ぜんまいの一本煮」。
私のなかではぜんまいってお料理の付け合わせというイメージだったのだけど、ぜんまい自体がこんなに主張している料理は初めて。口に入れてみると、えぐみがなくて食べやすい。
お話を聞いてみると、ぜんまいは採ってきてから揉んで、干して、置いて、また干してととても手間がかかる食材だそう。おいしいぜんまいに出合えたことで新しい知識を得られました!
お造りはなんと鯉のあらい。
泥臭さは全くなく、コリコリとした歯ごたえが独特で海の魚との違いを一枚、もう一枚と堪能しているうちにすぐになくなってしまいました。
もうひとつ珍しかったのが川魚のかじかを使ったかじか酒。まずは見た目に度肝を抜かれます。
じっくり焼き上げたかじかが入った熱燗は、ひれ酒よりもほんのり苦く大人な味。
お肉料理は牛の石焼きで、「八海山『別格雪室貯蔵にいがた和牛』A4等級」というすごい名前のA4ランクのお肉。熱された石を使って自分で焼くスタイルも楽しい。口に入れた瞬間お肉がとろけました。
最後の〆は鮭ご飯。新潟といえばコシヒカリが有名です。今回いただいたのは、嵐渓荘がある下田郷で栽培されたコシヒカリ。
鮭を食べ終わってもご飯だけをそのままがっついてしまう美味しさ……、お米が美味しいって幸せだ。デザートの下田産のさつま芋・紅はるかをつかったブリュレもとても美味でお代わりしたいくらいでした。
お腹いっぱいになっても、私にはまだしなければいけないことが残っている! そう、最後の温泉に浸かること。
フロントで、貸切風呂で地酒が飲める「露天で一杯セット」を用意してもらい、深湯へ向かいます。
深湯は、深さが130cmほどもあるお風呂で、立ったまま入浴するスタイルです。お風呂の底に転がっている石がいい具合に足の裏を刺激して気持ちいい。
昼とはまた違った雪の美しさと、物語のなかでしか見たことのなかった露天風呂でのお酒ですっかりいい気持ちになりました。
お風呂上がりに旅館の外に出てみるとそこに広がっていたのは雪行燈の灯された幻想的な銀世界。
非日常の空間にいるのだなぁ、とあらためて贅沢な気分になりました。
お部屋に帰る道すがら、ロビーの方から何やら楽しそうな声が。
この旅館の湯守である大竹さんが不定期で開けているバーがこの日はやっていたのです。
初めましてのお客さん同士の輪のなかに私も少しの間お邪魔しました。普段の生活のなかではなかなか出会わないであろう年代や職業の方とお喋りができて、旅の一期一会の尊さを再確認。そのままいい気分で布団に入ることができました。
2日目の朝。朝日に照らされた雪を見ながら朝食をいただきます。
ここでの注目はコシヒカリを温泉と湧き水だけで炊いたお粥。
優しくまろやかな塩味が寝起きの身体にしみます。今日も1日元気に過ごせちゃいそう。
チェックアウトをする前に湯守の大竹さんにお話を伺うことができました。
【湯守】大竹啓五さんに聞く
越後長野温泉 嵐渓荘の魅力
実は、ここは旅館になる前は曽祖父のつくった療養所のような場所だったんです。大正から昭和にかけてどんどん豊かになっていく社会とは反比例するように都会で疲れる人たちがでてきた。そんな人たちの心と身体のバランスを取り戻すための場所だったようです。
それが偶然にも現代でも同じように機能している。観光地などがない場所だからこそ、いろいろな経験をしてきた人たちこそが楽しめる場所なんじゃないかと思います。できれば2日以上休みを取って、ゆっくりと自分の好きなことをしてお風呂に入るという楽しみ方をして欲しいですね。
春や夏には雪景色とはまた違った風景が見れ、お料理も地元の山菜や鮎がでてくるようになるという嵐渓荘。絶対に他の季節にまたここに来るんだ! という決心をしてお宿を後にしました。
宿からデマンド交通を使い、30分ほどで着いたのは2022年にオープンした「ON THE UMAMI TSUBAME SANJO PORT」。
だしの専門店「on the umami」のフラッグシップショップ。お出汁の歴史が学べるミュージアムやワークショップなども開催している施設です。
施設内のカフェ「ごはん と だし umamito cafe」で、私がいただいたのは「お出汁のきいた とろける角煮御膳」です。お味噌汁は味噌よりも出汁が香るホッとする味付け。そしてなにより分厚い角煮が2枚も入っていてとても柔らかくて美味しかった。
ご馳走様でした!
またもやデマンド交通を利用して10分ほどの燕三条駅へ。あとは東京駅まで上越新幹線でひとっ飛び。
旅をする時って、どうせ来たならめいっぱい観光しなきゃ! と予定を詰め過ぎがちな私でしたが、今回の旅で何の予定も入れず旅館で身体と心をリラックスさせることを覚え、旅の新しい形に気づくことができました!
掲載情報は2023年3月29日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
八木茶屋
住所:新潟県三条市長野341-4
営業時間:11時30分~14時30分(お昼のみの営業)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
今回の旅の行程
【1日目】JR東京駅→JR燕三条駅→八木茶屋→越後長野温泉 嵐渓荘
【2日目】越後長野温泉 嵐渓荘→ON THE UMAMI TSUBAME SANJO PORT→JR燕三条駅→JR東京駅