ローカル線「只見線」の車窓から紅葉を楽しむ 東北

ローカル線「只見線」の車窓から紅葉を楽しむ

2017.11.28 東北福島
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桜は暖かい地方から、紅葉は寒い(あるいは標高が高い)地方から順にやってくる。東京より一足早く紅葉を楽しむべく向かったのは、東北地方の福島県。往路は東北新幹線で郡山へ出て、そこからJR磐越西線で会津若松へ。会津若松からはJR只見線を使って山の中を新潟県側に抜けつつ、山の紅葉を楽しもうという寸法だ。
あいにく、予定していた日が思い切り台風の影響による悪天候にかぶってしまったが、雨の紅葉がもたらすしっとり感こそ日本の秋と信じて出発だ。

秋の会津は「そば」で決まり

只見線は山の中を横断する1日に6本しかないローカル線。日帰りでは間に合わないので、会津若松市内に前泊することに。
JR東京駅からJR郡山駅までは東北新幹線で約1時間20分。そこからJR磐越西線に乗り換えてさらに約1時間20分。2両編成の会津若松行きは満席で、ちょっと驚いた。

JR会津若松駅へ着いたら夕方。早めの晩ご飯にする。ソースカツ丼のようなB級グルメもあるが、秋から冬に訪れるなら、「そば」と「こづゆ」をおすすめしたい。
「こづゆ」は会津の郷土料理。雨交じりの秋の会津には、温かいつゆが似合う。

訪れたのは、会津若松駅からタクシーで7分の「桐屋・権現亭」という会津そばの名店。

桐屋・権現亭 外観

会津若松駅と鶴ヶ城(若松城)の間くらいにある「桐屋・権現亭」

まずは、温かく具だくさんのこづゆをいただく。

桐屋・権現亭 こづゆ

具だくさんのこづゆ。乾物のだしと山の幸が詰まっていておいしい

体が温まったらそばだ。会津頑固そば、飯豊権現そば、会津のかおりの3種類があり、悩んでいると、3種が少しずつ入った「こだわりそば三種盛り」をおすすめされた。

桐屋・権現亭 こだわりそば三種盛り

左から会津頑固そば(石臼挽きの十割そば)、飯豊権現そば(一番粉の白いそば)、会津のかおり(福島県オリジナルの品種)。自分で擦るわさびもうまかった

会津は全国有数のそばの産地。そば好きだった信州の高遠藩主保科正之が会津藩へ移封になって以来受け継がれてきた、歴史あるそばなのである。特に秋は「新そば」の季節なのだ。

満足したあとは、会津若松駅周辺のホテルに宿泊。明日の只見線の旅に備えて、早めに就寝する。

只見線は会津川口まで?

翌朝、7時37分発の只見線に乗車。只見線は、会津若松と新潟県魚沼市の小出(こいで)を結ぶ路線だ。路線名になっている只見は福島県の西の端、新潟県との県境にある町だ。

でも、乗り込む車両の終点は、只見より手前の「JR会津川口駅」。なぜか。

只見線

只見線は電化されてないので、やってきたのは電車ではなく気動車。行き先は「会津川口」

実は東日本大震災から4カ月ちょっとたった2011年7月、新潟県から福島県会津地方にかけて集中豪雨が襲い、只見線は大きな被害を受けたのだ。いまだに流された橋梁のうち3つが復旧しておらず、会津川口-只見間は代行バスでつながれているのである。

※編集部注:長らく不通となっていた只見駅~会津川口駅間は2022年10月1日に復旧工事が完了し、只見線は全線で運転が再開されました。

■荻窪圭さんによる全線復旧した只見線の取材記事はこちら

山間部へ入ったら車窓を見逃すな

会津若松駅を出た只見線は、会津盆地の農業地帯をぐるっと回ったのち、大きくカーブして山間部へと入っていく。
もしうとうとしかけていても、ここで目を覚ますこと。絶景は只見川の作った谷筋に現れるからだ。
JR会津桧原駅を過ぎるとやがて只見川を渡るのだが、川を渡る鉄橋は、すべて絶景ポイント。スマートフォンの地図アプリを開き、只見川を渡るタイミングをチェックして、窓に張り付くべし。急な谷筋なので、のんびりしていると見逃すのだ。

お、そろそろだ、と窓を開けてスタンバイ。立ち上がって、上部の窓を下ろす方が簡単だ。昔からの客車は窓が上下に分かれており、下の窓は上に、上の窓は下に開くようになっているのだが、下の窓を上に上げるには力がいるのである。
一部雲に隠れてはいるが、色づき始めた谷と川のコンビネーションがいい。

只見線 只見川

只見川を渡る只見線。雲に隠れた山と、色づき始めた谷に注目

緑と黄色と赤が混ざった様子が、なんともいえない。
JR会津宮下駅直前の、只見川の小さな支流もおすすめだ。

只見線 只見川支流

谷間を流れる小さな川と紅葉。真っ赤にはなっていないが、いろんな色が混ざっていてきれい

晴れていたら、奥の雲に隠れた山も色鮮やかに違いない。
この先はさらに谷が狭くなり、川のすぐ横を並走するので絶景続きである。JR早戸駅を過ぎたあたりで捉えた風景がこちら。

 只見線 只見川

広大な只見川と紅葉。ほぼ雲の中だったが、それが幽玄さを見せてくれた

只見川沿いの景色を楽しんでいると、まもなく終点の会津川口駅に着く。

会津川口駅は湖上の駅?

会津川口駅からは代行バスに乗り換える。
列車の到着は9時39分。代行バスが出るのは10時25分。少し時間があるので、しばしホームで楽しむべし。なぜならこのホーム、絶景が望めるのだ。
川といっても流れは穏やかで大きいので、まるで湖上に駅があるような風景なのである。

会津川口駅 ホーム

ホームのすぐ横に川が流れる。まるで湖上の駅のようだ

続いて、車両と川と山を一緒に捉えてみた。

会津川口駅 只見線、ホーム、只見川、紅葉

緑にペイントされた気動車とシンプルなホームと只見川と紅葉

この風景は押さえておきたい。もうちょっとあの辺からこう撮ったらもっとカッコいいのに、と思うかもしれないが、「撮影のため」といって、線路など鉄道用地には入らないこと。

やがて代行バスが到着。
思ったより小さなマイクロバスだったが、ここから只見方面へ向かう人は10名ほどで、このサイズでちょうどいいのだ。

只見線 代行バス

会津川口駅から只見駅までは、このマイクロバスでつながっている

豪雨で橋梁が流されたといわれても、ピンとこないだろう。
でもその様子は、代行バスの窓を開けさせてもらって外を見ると一目瞭然である。豪雨がどれほど激しいものだったか、言葉もない。
会津川口駅からしばらく進んだ右手に、第5只見川橋梁の残骸が突然現れる。
その様子がこちら。橋を支えていた会津川口側の土砂が流出して、橋が流されてしまったのである。

 只見線 第5只見川橋梁

途中から流されてしまった鉄橋の跡。急な流れが、橋を支えていた土砂ごと削ってしまったためだ

6年ちょっと前とはいえ、残った鉄橋が寂しげである。
途中で小学生の男の子が2人、母親に見送られて乗ってきた。只見に住むおばあちゃんの家に向かうのだそうだ。
「今日はお客さんが多いね」という。「いつもはもっと少ないの?」「うん、3〜4人くらい」客が多いので、子どもも楽しそうだ。
バスが走る国道は只見線の線路とつかず離れずで、時折線路が顔を出す。6年もたつと線路の上に草も生え、さびも浮き、廃線のように見えるが廃線ではない。そこが大事だ。

 只見線 代行バスからの風景

赤く染まり始めた山と黄金色の田んぼと線路

バスはやがて只見駅前に到着する。
さて、只見線の不通区間は、今後どうなるのか?
2017年6月19日、JR東日本と関連自治体が「上下分離方式による鉄道復旧」について合意し、復旧が決定した。運転再開時期などは不明だが、復旧決定は地元の人にも鉄道ファンにも朗報だ。

只見の見どころは?

代行バスが駅に着いたのが11時15分。ちょうどお昼前だ。
次のJR小出駅行きの列車は15時40分。只見を楽しむには十分な時間だ。

まずは腹ごしらえ。目指すは、味付マトンケバブの店。只見駅から少し歩き、沼田街道に出て左へ曲がったところにあるコンビニのヤマザキショップ店内の階段を上ると「味付マトンケバブcafé 」がある。駅からは徒歩4分ほど。

※編集部注:味付マトンケバブcafé は2021年8月現在閉店しています。

味付マトンケバブcafé 入り口

外に看板が出ていないので、入り口がわかりづらいかも。ヤマザキショップを目指そう

この周辺には珍しく、朝9時から開いているのもいい。只見線の始発で小出から只見へやってくるとだいたいその時間なので、すぐ食事ができる。

なぜマトンなのか? なぜ「味付」とついているのか?
只見地域では昔から羊肉を食べる習慣があり、肉といえば豚や牛ではなくマトンだったのだそうだ。肉屋さんはどこもオリジナルの「味付マトン」を売っており、それを生かすべく作られたのが「ケバブ」だったのである。

味付マトンケバブcafé 味付マトンケバブ

味付マトンケバブとコーヒー。ほかに、マトン丼や田子倉ダムカレーなどもある

さっそくかぶりつくと、マトンらしい歯ごたえがたまらない。肉好きなら、ぜひ食べるべし。2つ食べてもいいくらい。私は2つ目はやめて、デザートも頼むことに。
おすすめされたのは「かた雪渡りのクレームブリュレ」。
クレームブリュレのカラメルの上に粉砂糖を散らし、豪雪地帯の「硬い雪を踏んで割る」感覚を表現したそうな。

味付マトンケバブcafé かた雪渡りのクレームブリュレ

カラメルを固い雪に見立てたクレームブリュレ。せっかくなので、スプーンで割ったシーンを。確かに、固い雪を割る感じが出てる!

※メニューは取材当時の内容です。

さて、このあとどうしよう。
疲れた人は日帰り温泉、只見保養センター「ひとっぷろまち湯」に立ち寄るといいかも。
お店の人におすすめされたのは、田子倉湖と只見湖。
いずれも只見駅の少し上流にあるダム湖で、田子倉湖の方が高所にあって大きい。天気がよいと紅葉と湖のカップリングが絶景だそうな。駅からタクシーで15分くらい。

私は初めて訪れた街はぶらぶら散歩して味わうことにしているので、只見川まで散歩することに。
予想していたよりずっと大きな只見川へ出ると、対岸に美しい紅葉が。しかも雲の中から見え隠れするのである。雨の日ならではの幽玄さだが、晴れていれば赤と黄色と緑の鮮やかなコンビネーションを楽しめるはず。

只見駅 只見川

雲に隠れた山の向こうに紅葉、という雨ならではの光景もまた素晴らしい

このあたりは只見川と伊南川(いながわ)の合流地点でもある。川の近くには2011年の新潟・福島豪雨でここまで水が溢れたという説明板がある。こうして記憶にとどめておくのだ。

 只見駅 只見川

消火栓の下に、川から溢れた水がここまできたと示されている。消火栓が妙に高い位置にあるのは、冬に雪に埋もれるから

さて、鉄道を挟んだ反対側は山である。その山に縁結びの神で有名な三石(みついし)神社がある。晴れていたら、こちらを訪問するのもいい。

 三石神社

右が三石神社の鳥居。左奥に見える山は、冬に只見スキー場となる。山の中に、一の岩・泪岩・縁結びの岩の3つの石があり、「三石神社」なのである。平安時代末期創建という古社だ

そうこうしているうちに、乗るべき列車がやってくるのが見えた。

只見線

乗るべき2両編成の気動車がやってきた

一両は只見縁結び号※。縁結びはさっき覗いた三石神社のことだ。

只見駅 只見線縁結び号

赤いペイントが鮮やかな、只見縁結び号。このあたりは非電化区間なので、電線がない

※只見縁結び号の運行は平成29年3月まで。

只見から小出へ

只見駅を出発。
長い長いトンネルを抜けたら、そこはもう新潟県だ。
JR大白川駅あたりでは、渓流と紅葉を楽しめる。

只見駅 大白川駅 渓流

大白川駅あたり。標高が高いので、川というより渓流だ

16時半を回り、日が落ちて暗くなるので、紅葉を愛でられるのもこのあたりまで。
小出駅に着く16時53分には、すっかり夜だ。秋は日が短い のである。
ここでJR上越本線に乗り換え。北上してJR長岡駅、あるいは南下してJR浦佐駅から上越新幹線に乗って東京へ戻るのであった。

今回、紅葉をテーマに出かけたのだが、あいにくの雨。しっとりした写真ばかりになってしまったが、こればかりはしょうがない。台風が連続してきちゃったしね。
でも、わかったことは3つ。
1つ目は「只見線は面白い!」。福島県から新潟県へ山の中をガタゴトと走る只見線は、谷間を走るし、意外にトンネルも少ないので景色がいいのだ。只見川が織り成す複雑な渓谷を見ながら、ぼーっとするだけでも楽しい。
2つ目は自然の猛威。山の集落を豪雨が襲ったらどうなるか、6年間メンテナンスされなかった鉄路はどうなっちゃうのか。流失した橋梁の姿は衝撃的で、いろいろと考えさせられる。
3つ目は「雨の紅葉は幽玄である」ってこと。幽玄って言葉しか思いつかないのだが、雨ならではのしっとりした景色は、晴れた日の真っ赤に染まった鮮やかな紅葉とは、また別の味がある。

ああ、再訪したくなってきた。次はダムにも行かねば。

この記事の内容は2019年9月16日現在の情報です。

 

今回の旅の行程

【1日目】JR東京駅→JR郡山駅→JR会津若松駅→桐屋・権現亭

【2日目】JR会津若松駅→JR会津川口駅→JR只見駅→味付マトンケバブcafé→三石神社→JR小出駅→JR長岡駅→JR東京駅

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この記事を書いた人

荻窪圭

老舗のIT系ライター。今はスマートフォンやデジタルカメラがメイン。だが、自転車で各地を回りながら撮影するうちに旧道と古地図にはまり、『東京古道散歩』(中経の文庫)を刊行。なぜか古道研究家として『タモリ倶楽部』に出演し、その勢いで東京の歴史散歩本を手がける。最新刊は『古地図と地形図で発見!鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)。好物は街中に生き残る歴史の痕跡。旅行時は古地図にある道を歩き、道祖神や神社や城祉を見つけては悦ぶので、どこへ行っても楽しい。好きな交通手段は自転車と列車。スマートフォンで古地図を見ながら車窓を眺めていると飽きない。
Instagram:https://www.instagram.com/tokyokodosanpo/
混沌の屋形風呂: https://ogikubokei.blogspot.com/

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