今回の列車旅ポイント
遠出すると必ずスマホの地図アプリを使ってGPSログをとる、(一応)IT系ライターの荻窪圭です。今回の旅先は、個性的で見ても乗っても楽しい栃木県のローカル線、「真岡(もおか)鐵道」と「烏山線」。さらに、列車の歴史好きにはたまらない保存車両の宝庫へも行ってきました。もちろんGPSログをとったり地図アプリを見たりしながらの列車旅。
初日最大の目的は真岡鐵道の「SLもおか」。SLもおかは土日祝日に1日1往復していて、JR下館駅を10時35分発。じっくり写真を撮るには、約30分前に下館駅に到着したい。JR東京駅8時28分発の東北新幹線「なすの253号」が良さそうだ。
東北新幹線に乗ってJR小山駅に着いたら水戸線に乗り換える。真岡鐵道の起点である下館駅には、東京駅から計約1時間半で到着。
下館駅は明治22年開業で、現在の駅舎は昭和12年竣工のもの。5つ並んだステンドグラスが旅情をそそる、実に落ち着く駅舎だ。
SLもおかに乗る人は整理券を購入しなければならない。現地で買うとSLの写真が入った専用のチケットをくれる。これは記念に欲しいではないか。というわけで、早めに行って現地で買うべし。
※編集部注:2024年現在、SLご乗車にあたっては、事前予約がおすすめです。当日券は、予約数に余裕がある際に販売されますが、定員に達し次第販売終了となります。
整理券と乗車記念証。乗車記念証は車内でもらえる
青空の下、SLもおか入線。SLは「C12」形。D51形やC61形といった有名な機関車に比べると小ぶりだが、それもそのはず、C12はもともと支線用(簡易線用)に開発された小型軽量機関車なのだ。
真岡鐵道を走る「C1266」は昭和8年製のもの。見た目もシンプルでなんか可愛くてよい。
SLもおかは下館駅から茂木駅まで走るが、今回は下館駅から約24分、途中の真岡駅で下車。ここで見送る。
真岡駅には「SLキューロク館」という鉄道ミュージアムがあるので降り立ったわけだが、駅から外に出てみてびっくり。駅舎がすごい。誰がどう見てもSL推しの駅舎だ。
駅舎の斜め前にあるSLキューロク館。駅と同じデザインコンセプトで作られた鉄道ミュージアムだ。
ここには古い車両がたくさん保存されていて、入場無料。
なかでも目玉は「キューロク館」の名前の元ネタである「SL 49671」。これは9600形といわれる機関車で、愛称は「キューロク」。だからキューロク館だ。
こちらの49671は大正9年製。引退後、静態保存されていたものを、キューロク館のために、動くように整備したのだ。ただ、館内で石炭を焚くわけにはいかないので、圧縮空気で動くように改造されている。
そして、1日に3回、館内から出てきてくれるのだ。ゆるゆると登場し、小さな車掌車と連結して敷地内に敷かれた線路を2往復してくれる。この車掌車へは300円で乗車可能で、家族連れで賑わっていた。
キューロク館には鉄道グッズを扱うショップや「キューロクカフェ」などがある。また、屋外にはSL D51(昭和13年製)なども展示されている。
※編集部注:キューロクカフェは2021年3月で閉店しました。
これで終わりではないのが真岡駅の凄さ。
キューロク館脇の駅構内にキハ20形(実際に真岡線を走っていたディーゼル車。昭和33年製)やDE10(ディーゼル機関車。製造年不明)がある。
さらに、真岡駅の4Fには「SLギャラリー」があって鉄道に関する展示がされているし、駅を反対側に渡って西口に出ると、こちらでも「真岡駅まるごとミュージアム」として、キハ20形(真岡線を走っていたディーゼル車。昭和33年製)などや転車台を間近に見ることができるのだ。
真岡駅は、改札口はあるものの、駅構内には出入り自由なのもよい。
SLもおかが茂木から折り返してきたときは、ホームから自由に撮影してくださいというアナウンスが流れるほどだ。それに乗って再び下館駅へ。
約25分で下館駅着。そのまま水戸線で約20分の小山駅に戻り、宇都宮線で約30分、宇都宮駅に向かった。
今夜の宿泊は宇都宮。宇都宮といえば餃子が有名だけれども、「かぶと揚げ」も宇都宮のソウルフードなのだそう。
がっつりいただくべく、元祖かぶと揚げの「みよしや シンボルロード店」さんにお邪魔した。宇都宮駅からは徒歩20分ほど。
かぶと揚げとは1963年に誕生した、豪快な鶏のから揚げ。ももを取り除いた鶏の左右に割った半身をまるごと揚げていて、左右並べると「かぶと」の形をしているから「かぶと揚げ」なのだ。
豪快に「手羽」部分を外して(あつあつなので注意)、まずは手羽からがぶり。味付けはシンプルで肉もやわらかいので実に旨い。そのあと、肉がたっぷりの胸あたりを食べる。
けっこうなボリュームで、ひとりだと、かぶと揚げプラス1〜2品でお腹いっぱいになるので頼みすぎに注意すべし。
再び宇都宮駅方面に向かい、明日に備え、ホテルにて就寝。
2日目は宇都宮駅から出発。宇都宮線で約12分、いったんJR宝積寺(ほうしゃくじ)駅に出て、烏山線で34分、終点のJR烏山駅へ向かう。宇都宮駅から烏山線直通列車は出ているけれども、宝積寺駅での乗り換えを選択。
2008年に竣工した宝積寺駅は、隈研吾建築都市設計事務所による設計で、シンプルな橋上駅舎なのだけど、ディテールがカッコいい。たとえば、天井はこんな感じだ。
宝積寺駅から烏山駅行きに乗車。烏山線は宝積寺駅から終点の烏山駅まで全部で8駅、約34分、全線非電化のローカル線。かつてはディーゼル車が走っていたが、2014年に蓄電池で動く車両「ACCUM」に切り替わったのだ。
車両にはパンタグラフがついており、宝積寺駅までの(宇都宮線内)電化区間はこれで走りながらバッテリーに充電する。宝積寺駅を出るとまもなく線路は宇都宮線から離れ「架線なし区間にはいります」とアナウンスが流れる。先頭車両から前を見ていると、架線が消えて視界が開ける。
終点の烏山駅に到着。烏山線は非電化区間だが、この駅にだけ架線が作られていて、パンタグラフを通して充電する。ホーム隅には「充電ゾーン」と書かれている。とても珍しいので要チェックだ。
烏山駅から、那珂川町コミュニティバスの馬頭烏山線で「那珂川清流鉄道保存会」へ向かう。約17分の「上大桶」停留所で下車。八溝会館という葬儀場の敷地にあるので戸惑わないこと。
入り口から奥へ入ると、古い車両がずらり。
新しいところでは、ACCUMが導入されるまで烏山線を走っていたディーゼル車両「キハ40」。
珍しいところでは、1948年にベルギーで造られた360号機や陸上自衛隊「第101建設隊」の教材として使われていた1946年製の蒸気機関車も。これはすごくレアなものらしい。
他にも珍しい車両がたくさん置かれているので、マニアな方にはたまらないはず。
バスで烏山駅に戻り、再び烏山線で約13分、JR大金(おおがね)駅へ。烏山線は宝積寺駅を除く7駅全てに七福神が関連付けられており、大金駅に割り当てられたのは打ち出の小槌を持つ大黒天。
大金駅から徒歩11分くらいの場所にある「TABI CAFE」でランチ。(※)
旅の途中にふらりと立ち寄って、ひと息ついてのんびりランチを食べたりお茶をしたりして疲れを取るにはすごくいい感じだ。
※編集部注:TABI CAFEは閉店しました。
頼んだのは「からすみと大粒あさりのボンゴレシチリア風」のパスタセット。前菜3種盛りとパスタとデザートとドリンクが付く。
このパスタが美味。からすみの塩味がすごくボンゴレにあっている。さらに前菜に出てきた「カニとアボカドのムースのタルタル」が絶品。蟹の風味とアボカドムースの滑らかさがすごくマッチしているのだ。
散策しながら大金駅へ戻り、再び烏山線。大金駅は無人駅なので、乗るときに整理券を取る。
宝積寺駅まで約20分、宇都宮線に乗り換えて約12分で宇都宮駅へ。宇都宮駅の新幹線の窓口でこの整理券を出し、精算。新幹線で東京に戻るのであった。
かくして、今回の旅はローカル線&鉄道ミュージアム三昧。SLに乗って車窓を楽しみ、保存された車両を楽しみ、最新の蓄電池駆動の列車まで乗れて……考えてみたら、鉄道の歴史を実走と展示で楽しめるすごく贅沢な旅ではないか。しかも、新幹線の駅を起点に訪問できるので実に行きやすい。ガチの鉄道好きはもちろんのこと、ライトな鉄道好き(わたしがそうなんだけど)でも存分に楽しめること請け合いである。
掲載情報は2021年7月6日更新時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今回の旅の行程
【1日目】東京駅→小山駅→下館駅→真岡鐵道 真岡駅→SLキューロク館→真岡鐵道 真岡駅→下館駅→宇都宮駅→みよしや シンボルロード店→宿
【2日目】宿→宇都宮駅→宝積寺駅→烏山駅→那珂川清流鉄道保存会→烏山駅→大金駅→TABI CAFE→大金駅→宝積寺駅→宇都宮駅→東京駅
1泊2日/東京駅⇒小山駅・宇都宮駅⇒東京駅
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