箱に入って一人の世界に浸れる! 後生掛温泉の「箱サウナ」に潜入

箱に入って一人の世界に浸れる! 後生掛温泉の「箱サウナ」に潜入

他人にハダカを晒したくない

サウナが苦手である。サウナに入ると否が応でも素っ裸を人様に晒すことになるのが、どうにも抵抗があるのだ。そもそも、人と一緒にお風呂に入るのが苦手な私は、サウナどころか温泉に対しても暗澹たる思いを抱えている。修学旅行や合宿などで「一緒にお風呂に行こう」と言われるのも、とてつもなく嫌だった。なぜ、ただの友人相手に、究極のプライバシーであるハダカを見せなければならないのか。そんなお風呂に一緒に入るくらいいいじゃない、まじまじと見るわけじゃないわよ、とかそういう問題ではない。見られていようがいまいが、他人が近くにいる状態で服を脱がなければならないこと自体がもうダメなのだ。お風呂くらい一人で行きたまえ。

とはいえ、温泉はまだいい。お湯に浸かってしまえば、体はほとんど見えなくなるからだ。できれば、白濁した温泉や、ジャグジー系のお風呂であれば、より安心である。それに、人様にハダカを見られる抵抗感を補って余りある癒やし効果が温泉にはあるため、辛うじて温泉のことは好きでいられている。

けれど、どうしてもサウナのことは愛せない。狭い空間を、先客に遠慮しながら少し離れた場所に座るあの感じ。タオルで体全体を隠しきれず、背中を少し丸めながらコソコソと入るあの感じ。私にとって、いつだってサウナは緊張感と隣り合わせだ。サウナで浴びる蒸気そのものは好きなのに、緊張感が邪魔するせいで、サウナを手放しで楽しめたためしがない。こんな悲しいことはない。私だってサウナを愛したい。

箱の中に一人で入る「箱サウナ」なら楽しめるかも……

調べたところ、秋田県にある後生掛温泉の名物に「箱サウナ」というのがあるらしい。ホームページの写真を見てみると、筒状の箱のようなものの中から顔を出しているおじさんたちが並んでいた。

箱サウナ イメージ

「箱サウナ」。見た目はかなりシュール

……これは、最高ではないか。箱で覆われていて、ハダカを見られることなく、一人だけの空間でサウナの蒸気を浴びることができる。これこそが、私の求めていたサウナだ。究極の一人サウナをしに行こう。

後生掛温泉は、JR東京駅から東北新幹線でJR田沢湖駅まで行き、そこからさらにバスで1時間半以上行ったところにある秘湯。「馬で来て足駄で帰る後生掛(行きは馬に乗って来たけど、帰りは歩いて帰れる)」と言われるほど、あらゆる不調に効果があるらしい。

後生掛温泉旅館 館内

古き良きシンプルな旅館。今回はここに一泊する

宿の周辺には4月末の時点でまだ雪が積もっており、雪の上から湯気がもくもくと出ていた。この雪が解けると、地面がぐつぐつと煮立っている様子を見ることができるのだという。

後生掛温泉旅館 周辺

雪が解けると、宿の周辺はこうなる
(※残念ながら季節が合わず、見ることはかなわなかったが、宿の方からお借りした写真を掲載)

泥火山

宿周辺にある泥火山。ボコボコと泥水が噴出する
(※こちらも、宿の方からお借りした写真を掲載)

さて、いよいよ温泉に向かう。はたして、私はサウナを愛せるようになるのだろうか? ちなみに、後生掛温泉では「箱サウナ」(箱蒸し風呂)のほかにも、「サウナ風呂」(普通のサウナ)、「泥風呂」「打たせ湯」「神経痛の湯」「火山風呂」「露天風呂」と、7種類もの温泉が楽しめる。

女湯入り口

この向こうには7種類のお風呂が

後生掛温泉 内部

これが後生掛温泉だ!

中央にある大きなお風呂は「神経痛の湯」。その奥にある、ぶくぶくと気泡が出ている小さいお風呂が「火山風呂」。さらに奥に行くと「露天風呂」があり、その反対側の入り口近くには「泥風呂」や「打たせ湯」、そしてお目当ての「箱サウナ」もある。ついでに「箱サウナ」のそばには普通のサウナもあるが、冒頭で書いた理由により、普通のサウナには用はない。湯気で写真が見づらいため、宿の公式写真も載せておく。

後生掛温泉 内部全景

お風呂の全貌が非常に見やすい公式写真

ちなみに、後生掛温泉にはシャワーがない。2本のホースのようなものから水と熱湯を出し、ちょうどよい温度になるようにたらいの中で混ぜて使う。シャワーなしで頭や体を洗う難しさに面食らったが、こういうところがいかにも秘湯だ。

洗い場で体を洗い、サウナや温泉のあるゾーンへ向かった。どれから入るか迷うが、ここはもったいぶらずに「箱サウナ」からいこう。4つ並んだ箱のひとつを選び、パカッと開ける。戸棚のように、ふたが左右に開く作りになっている。中は段差になっていて、顔をすっぽり出した状態で段差の部分に座る。座ったら扉を閉めて、箱の中にこもれば準備完了。

箱サウナ

これは……素晴らしい。なんといっても安心感が桁違いである。いまだかつて、サウナに入ってこんなに安心できたことはあろうか。毛布で全身をくるんだときや、こたつの中にすっぽり埋まったときの、あの感じによく似ている。

箱サウナ

また、普通のサウナと比べて、顔の部分に蒸気があまりこないため、熱さを感じにくい。これなら、いくらでも入っていられそうだ。

箱サウナ

「火山風呂」や「泥風呂」も居心地最高

サウナを出た後は、大浴場のお湯に順番に入っていった。特によかったものをいくつか紹介しておきたい。まずは、「火山風呂」。ぶくぶくと出ている気泡が肌に心地よいお風呂だ。「火山風呂」といってもお湯の温度はやや低めに調整されていて、長時間入っていられる。気泡が肌に触れることで、皮膚の神経をよみがえらせ、新陳代謝のいい美肌にしてくれるらしい。あと、何より気泡のおかげでハダカが人から見えづらいのがいい。

火山風呂

「火山風呂」

次に「泥風呂」。「箱サウナ」と並ぶ「後生掛温泉」の名物である。神経痛やリューマチ、ケガの後遺症に効果があるのだという。一見、何が泥なのかわからないくらい普通のお湯に見えるが、底のほうに泥が沈殿しているようで、膝立ちをしたら膝やすねが黒くなっていた。傷があったり、敏感肌だったりする人の入浴は不可。あまり長く浸かっていたら刺激が強いからなのか、1回の入浴時間の目安も15分以内と書かれていた。

なお、入っている際にピリピリ感があるなどといった刺激はまったくない。むしろ、とろりとした泥湯が全身を包んでくれて、非常に優しい湯ざわりだった。

また、「泥風呂」は大浴場の端っこにあり、なおかつ、非常に小さいサイズの浴槽なのもいい。詰めれば2~3人まで入れそうだが、混んでいなければほかの人が入ってくることもあまりないため、ひっそりと一人だけのお湯を楽しめるのだ。

泥風呂

「泥風呂」

「泥風呂」に入ったあとは、隣の「打たせ湯」(あんまの湯滝)へ。滝のように上から落ちてくるお湯を浴びることで、肩や首、頭のマッサージになり、「泥風呂」でほんのり黒くなった全身を洗い流すこともできる。湯滝に打たれるときは、タオルも何もない完全に無防備な状態で浴びなければならないのがたまにキズである。

 打たせ湯

「打たせ湯」(あんまの湯滝)

湯滝

上から湯滝が流れ落ちてくる

こうして、箱サウナに入り、お湯に浸かり、お湯に打たれてまた箱サウナに入り、と繰り返した。箱サウナでふやけた体に、温泉や泥の成分がしっかり浸透したからか、滞在中ずっとポカポカした感覚が続いた。

後生掛温泉で、私は生まれて初めてサウナを愛せた。サウナがこんなに私を安心させてくれたのは初めてのことだった。苦手だったものに少し歩み寄れた瞬間は、いつだって尊い。

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