【SLレトロ碓氷編】ビギナーのための、SLを10倍楽しむ旅 北関東

【SLぐんまよこかわ編】ビギナーのための、SLを10倍楽しむ旅

2017.08.03 北関東群馬
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2日目はSLぐんまよこかわで横川へ

前日は、JR高崎駅からJR水上駅までを走る「SLぐんまみなかみ」を堪能した。
2日目は、信越本線を走る「SLぐんまよこかわ」の旧車両に乗車する。
高崎駅を9時47分に出発、終点のJR横川駅に10時49分着と所要時間は短いが、横川駅には「碓氷峠鉄道文化むら」をはじめとする観光スポットがたくさんある。
では早めにホームに入って、入線を待ち構えよう。

201810月以降「SLレトロ碓氷」は「SLぐんまよこかわ」に、「SLレトロみなかみ」は「SLぐんまみなかみ」に名称が変更されています。

JR高崎駅にて入線してくる「SLレトロ碓氷」

昨日と同じ「D51 498」だ

SLぐんまよこかわがユニークなのは、客車の後ろに、さらに一両つながっていること。電気機関車「EF64」である。

客車の最後尾につながっている電気機関車「EF64」

客車の最後尾にはEF64が。

なぜ前後に機関車がついているのか?
答えは簡単。水上駅のような転車台がないため、機関車の向きを変えられないのだ。だから行きはD51が引っぱり、帰りは「ELぐんまよこかわ」(ELとは電気機関車のこと)と名前を変えて、EF64が引っぱるのである。
なんともおもしろい。

晴れた日は妙義山を見逃すな

レトロ客車だが、昨日乗ったオハニ36よりちょっと新しい、戦後に製造された車両。窓際には小さなテーブルがついていて、そこに「センヌキ」が。
そう、今はペットボトルだけど、昔は瓶の飲料が主流で、しかも王冠で留められているので、栓抜きがないと開けられなかったのだ。瓶ビールでお馴染みのアレだ。
だから、車両のテーブルに栓抜きがついていたのである。ここに瓶を入れて、よいしょっと栓を抜いたのだ。せっかくだから、車内販売で瓶の飲料を扱ってもおもしろいのにと思う。

車両のテーブルに設置された、瓶の栓抜き

昔懐かしい「栓抜き」。いろんなところに栓抜きが用意されていたのだ

さて「SLぐんまよこかわ」は「SLぐんまみなかみ」に比べると乗車時間は短いのだが、車窓の見どころは負けていない。特にJR磯部駅からJR松井田駅あたりでは、左手に上毛三山のひとつ妙義山が見える。
上毛三山は赤城山、榛名山、妙義山という群馬県(群馬県は、かつて上野国(かみつけのくに)と呼ばれており、上野は昔「上毛野」と書いたので、上毛はその略だ)を代表する山で、どれも古くから信仰の対象となってきた。

妙義山

松井田駅を過ぎたあたりから見える妙義山

横川は古代からの交通の要衝だった

やがて横川駅に到着。信越本線の終点だ。
かつてはそのまま山(碓氷峠)を越えて軽井沢につながっていたが、北陸新幹線の開通によって横川と軽井沢の間が廃線になり、終点になったのだ。
ここがターミナルなので、やってきた列車は午後の折り返しまでホームにずっと停車している。
その間に横川を楽しもう。
汽車から降りると、安中総合学園高校和太鼓部が出迎えてくれた(不定期で実施)。和太鼓部が迫力の演奏を聴かせてくれるのだ。

SLと安中総合学園高校和太鼓部

SLを歓迎する安中総合学園高校和太鼓部。思わず聞き入ってしまう迫力と演奏が、SLとよく似合う

さて3時間半ほど余裕がある。その間の楽しみ方は3種類。
1つ目は「旧中山道」コース。
ここは古代からの交通の要衝で、江戸時代は中山道の関所(碓氷の関)や宿場(坂本宿)があった。街道好きなら、駅のすぐ近くにある関所跡から旧中山道を宿場町へ歩くのもよし。

碓氷関所跡と旧中山道

碓氷関所跡と旧中山道

2つ目は、遊歩道「アプトの道」で廃線跡散策。
横川駅から先にかつて延びていた信越本線の線路跡を、遊歩道にしたもの。上りと下りの2本あった線路の片方をトロッコ列車が使い、もう片方は遊歩道として整備されている。終点まで歩くと帰りの汽車に間に合わないが、途中までぶらぶらと散歩するにはいい。

「アプトの道」とトロッコ列車

「アプトの道」とトロッコ列車

3つ目は「碓氷峠鉄道文化むら」である。

碓氷峠鉄道文化むらは、鉄道好きでなくても楽しめる鉄道のテーマパーク

横川駅を出て5分ほど歩くと、大きな鉄道テーマパーク「碓氷峠鉄道文化むら(以下、文化むら)」がある。
もともと横川駅南にはJR東日本の車両基地があったが、1997年に横川-軽井沢間が廃線になって基地は不要となり、跡地が鉄道のテーマパークとなったのだ。
ここがおもしろいのは、車両基地を転用したため、当時の線路や建物を利用していること。つまりひとつひとつが実際に使われたものなのだ。
たとえばこれは文化むらの鉄道展示館だが、当時使っていた車庫をそのまま利用しているのでリアルなのである。

文化むらの鉄道展示館。

文化むらの鉄道展示館。手前の線路跡も当時のもの

文化むらの瀧川広さんによると、車両基地用の線路を使ってさまざまな展示車両を搬入したのだそう。今でも横川駅から文化むらへつながる線路跡をたどることができる。
文化むらにはトロッコ列車の駅や園内を走る蒸気機関車の「あぷとくん」、鉄道資料館もあるが、おすすめは少し奥にある鉄道車両展示コーナー。
山に囲まれた広場にずらりと古い車両が並んでいる姿は、一見の価値あり。

文化むらの展示車両

文化むらに展示されている国鉄当時の名車両たち

素晴らしいのは、その多くの車両の中に入れること。当時の寝台車に乗り込むことも、運転台に座ることもできる。

EF65の運転台

EF65の運転台を全天球カメラで撮影

鉄道マニアなら1日いても飽きないほど展示は豊富だし、子供と一緒ならミニSLや手こぎトロッコ、資料館では持ち込んだNゲージの鉄道模型を使ってジオラマの運転体験もできる。
子供よりお父さんの方が夢中になるかもしれない。
「文化むら」という名前からの想像を超える、ガチなエリアなのだ。

お昼は当然「峠の釜めし」

横川でのお昼ご飯は、やはり「峠の釜めし」。
1885年に横川で創業したおぎのやは、駅弁販売の老舗。1958年に発売を開始した「峠の釜めし」で有名だ。横川駅前にある本店をはじめ、横川駅の売店や文化むらでも売っている。
今回は文化むらの売店で売り切れていたので、駅前で購入。
駅前には、お弁当を食べるためのテーブルも用意されていて、たいへん助かる。

おぎのやの「峠の釜めし」

これが有名な、おぎのやの「峠の釜めし」。一度ここで食べてみたかった

「峠の釜めし」で問題になるのは、食べ終わったあとの釜。持ち帰って使ってもいいが、さすがにかさばるので持ち帰りづらい、あるいはすでに家にいっぱいあって、これ以上持って帰ると家族に白い目で見られる、というケースもままある(うちがそうです)。
でも大丈夫。ちゃんと釜の回収ボックスが用意されているから。

峠の釜めしの回収ボックス

食べ終わった釜は持ち帰ってもいいし、回収ボックスに返却してもよし

帰りはELぐんまよこかわで

横川駅15時15分発に乗り、高崎駅へ向かう。
早めに駅へ向かうと、改札越しにSLという、ちょっといい風景を発見。
Suica対応の自動改札の向こうにSLが待っているという、いったい自分がいつの時代にいるのだか混乱しそうな組み合わせがたまらない。

JR横川駅の自動改札とSL

Suica対応自動改札とSLの、不思議な取り合わせ

出発前、隣のホームに在来線がちょうど入ってきた。この信越本線の折り返しを待って、「ELぐんまよこかわ」は発車するのである。
もちろんここでも新旧そろい踏み写真を撮る。

JR横川駅で並んだ在来線とSL

左が在来線。右がSL。新旧を見比べて楽しみたい

ただし、帰りはこのD51ではなく、行きは最後尾だった電気機関車が客車を引っぱる。
EF64形という1964年に開発された電気機関車で、この「EF64 1001」は1980年に製造された車両だ。

JR横川駅ホームに止まっているEF64

引っぱるのは「EF64 1001」

そして1時間弱の旅を終え、高崎駅へと帰ったのであった。
D51もEF64も古い客車もお疲れさまでした、ありがとう。

いやあ予想以上に楽しい旅でした。
高崎から水上までは在来線で行ったことはあったけれども、楽しさが全然違う。
SL好きならSLがホームに入ってきて客車に連結する様子を見られたり、途中駅での整備の様子を楽しめたり、じっくり車両を間近で見られるというのもあるけれど、そうじゃなくても「窓を開けて風や匂いを感じながら、ほどよい速度で風景を楽しむ」感覚が、ものすごく気持ちいい。速すぎず遅すぎず、「これぞ旅」という時間の流れが、そこにあったのである。

さて、いくらなんでも「土日連続でSL旅というわけにはいかない」という人もあろう。
どちらかを選ぶとして、「SL旅を堪能する」ならSL三昧の「SLぐんまみなかみ」がおすすめ。乗車時間も長いし、今やなかなか見られない転車台も楽しめる。
SLのみならず、古い鉄道の歴史を堪能したいなら「SLぐんまよこかわ」がおすすめ。「碓氷峠鉄道文化むら」で遊んでもよし、廃線跡を散策してもよしだ。
なお、どちらも運行日が限られているので、ホームページのカレンダーをチェックしてから計画を立てること。大事なのはそこだ。

この記事の内容は2019年3月20日現在の情報です。

 

今回の旅の行程

【1日目】JR高崎駅→JR横川駅→碓氷峠鉄道文化むら→JR横川駅→JR高崎駅

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群馬・高崎JR+宿泊 ホテルメトロポリタン高崎

1泊2日/東京駅⇔高崎駅

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この記事を書いた人

荻窪圭

老舗のIT系ライター。今はスマートフォンやデジタルカメラがメイン。だが、自転車で各地を回りながら撮影するうちに旧道と古地図にはまり、『東京古道散歩』(中経の文庫)を刊行。なぜか古道研究家として『タモリ倶楽部』に出演し、その勢いで東京の歴史散歩本を手がける。最新刊は『古地図と地形図で発見!鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)。好物は街中に生き残る歴史の痕跡。旅行時は古地図にある道を歩き、道祖神や神社や城祉を見つけては悦ぶので、どこへ行っても楽しい。好きな交通手段は自転車と列車。スマートフォンで古地図を見ながら車窓を眺めていると飽きない。
Instagram:https://www.instagram.com/tokyokodosanpo/
混沌の屋形風呂: https://ogikubokei.blogspot.com/

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