日常に疲れたら、湯治はいかが? 酸ヶ湯温泉で心の平穏を取り戻す

湯治という言葉を聞いて、みなさんは何を想像しますか? 病気やケガをした人が行くところ、お年寄りが集まる温泉……自分とはあまり縁のないものという感覚でしょうか?

しかし、実際は違うんです! むしろ日々忙しく、心に余裕のない人にこそおすすめなのが湯治なんです。

青森県八甲田の名湯、酸ヶ湯(すかゆ)温泉を旅して知った、湯治のリアルな姿をご紹介します。

必ずお天気ニュースに登場する豪雪地帯へ

JR青森駅

東京駅から東北新幹線に乗り込み、新青森駅から乗り継いで青森駅にやってきました。現地の知り合いが“青森ナンバーワン温泉”と評する「酸ヶ湯温泉」に向かいます。

目的は青森の名湯ということで、今回も「マイ桶」持参で気合充分JR東日本のイメージカラーのグリーンに、イエローが映えますね。

宿送迎バス

青森駅から目的地である酸ヶ湯温泉へは12本の宿送迎バス、13本のJRバス、もしくはレンタカーでのアクセスになります。

今回は10:15発の宿送迎バスを利用することにしました。出発場所は駅向かいの複合施設「AUGA」の裏手です。

バスの中は、ほんのりと硫黄のにおいがしました。硫黄のにおいが浴室を飛び出してバスにまで染みつく温泉…ハンパじゃない湯力(ゆぢから)だと想像できます。

酸ヶ湯温泉入口

山道を登ること約1時間、酸ヶ湯温泉に到着です。軒下の木の板に彫られた「酸ヶ湯」の文字、そして建物の風格から歴史を感じますね。

温泉が見つかったのは1684年、鹿が湯に浸かって傷を癒しているのを狩人が目撃し、以降「鹿湯」と呼ばれました。お湯が酸性で酸っぱいことから「酢ヶ湯」、その後「酸ヶ湯」と表記が変わったのだそうです。

酸ヶ湯温泉入口正面

入口正面はこんな感じ。雪は10月末頃から積もり始め、3月にピークを迎え、5月末頃には解けてなくなります。

ちなみに酸ヶ湯という名前、お天気ニュースで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか? この辺りは、日本有数の豪雪地帯なのです。

取材したのは4月上旬。東京では桜が満開、青森市内にもほとんど積雪はないという天候で、この状態はびっくり。

酸ヶ湯温泉館内

館内は、湯治滞在者向け控えめ設備の「湯治棟」、一般的な旅館のアメニティ、設備がそろう「旅館棟」に分かれており、そこかしこでレトロな雰囲気が感じられます。

歩くと床がきしみ、部屋にいても、廊下を人が歩いているのがわかります。また、部屋に洗面台、トイレはなく共同です。

宿泊客に話を聞くと「その昔ながらの古さが落ち着く」とのこと。確かに、わが家でもないのに居心地のよさを感じます。

酸ヶ湯温泉の湯治文化って?

酸ヶ湯温泉の神髄は、「湯治文化」を今も受け継いでいる点にあります。

湯治とは、体調が悪い時に温泉地で療養すること。かつては、農業、漁業を営む人が、仕事ができない期間、温泉地で英気を養うことを指しました。昔ながらの湯治は、「滞在に必要なものは自分で持ち込み、食事は自炊する」スタイル。というのも、長期滞在のため、宿泊にかかる費用を抑える必要があったのです。

酸ヶ湯温泉の場合、湯治滞在期間は3日間の湯治コースを3回りする10日間を推奨しています。

湯治棟の一室 

酸ヶ湯温泉の、湯治向け設備をご紹介しましょう。

こちらは湯治棟の一室。設備は質素ですが、不便はなさそう。

かつて湯治宿泊が一般的だった頃、この8畳間は6人用の相部屋として使っていたそうです。1人あたりの面積は布団が1枚程度ですが、横になれるスペースさえあれば、湯治客にとっては充分だったということなのでしょう。

湯治棟調理室

自炊のために調理室も完備。ガスコンロに電子レンジ、野菜を冷やすのにぴったりな「冷し槽」に加え、洗濯乾燥機など日常生活に必要なものがひと通りそろっています。

食器類は無料で貸し出されており、日用品は売店で購入できます。

ちなみに食器類は「また来年も来るから、それまで他の人に使ってもらって」ということで、宿泊客が置いて帰ったものも多いそう。

温泉療養相談室

酸ヶ湯温泉には温泉療養相談室があり、看護師さんが常駐しています。

温泉に入りさえすれば、必ず体調が良くなる――とは限りません。環境の変化で、逆に調子が悪くなってしまうこともあるんです。

壁面に貼られているたくさんの紙は、滞在中にお世話になったお礼として、お客さんから贈られたもの。どれほど的確なアドバイスをしているのか、宿泊者との会話をちょっとだけ聞かせていただきました。

看護婦と相談

「昔は旦那とよく来てたんだけどね、今回は5年ぶりに酸ヶ湯に来たんだよ。息子や孫が車を出してくれると助かるんだけどね、全然帰ってこないからさ、なかなか来られなくなっちゃってね」

世間話!!! でもこれが一番大切で、そこから生活習慣を知り、症状を緩和させる方法を考えるそうです。

こちらのおばあちゃんは、15分近くおしゃべりをしていました。旅館従業員とお客さんの距離の近さ、この人間関係も湯治場ならではの光景です。

荘厳にして神秘的。名物ヒバ千人風呂

体の調子を整えて元気になれる湯治。それを可能にするのは、高い効能を持つ温泉があればこそ。その姿を拝みに行きましょう。

ヒバ千人風呂

ここが酸ヶ湯温泉名物、ヒバ千人風呂。おお……窓から差す光が、温泉の後光のようだ……! 湯船の縁に座るおっちゃんが天使に見える!

営業を開始したのはなんと1902年のこと。現在の姿は1971年に改築した時のものです。

注目していただきたいのは、これだけ広い浴室にもかかわらず、柱が一本もないこと。どんな構造で、長年豪雪に耐え続けているのか…。神秘的な力が働いているに違いない…!

冷の湯

ヒバ千人風呂に来たらまずはこちら、冷の湯です。八甲田の冷たい天然水100%の水風呂……ではなく、かけ湯ですね。入れません。

ヒバ千人風呂にはシャンプー、リンス、石鹸はおろか、シャワーやカランもありません。まずはここでかけ湯をしてから、温泉を楽しみましょう。

温泉に浸かるだけで身体がきれいになるのか、疑問ですよね。でも、pH2.0と極めて強い酸性の酸ヶ湯温泉には 高い殺菌力があるのです。

熱の湯

まずは手前の大きな湯船「熱の湯」へ。めちゃめちゃ熱そうな名前に反し、比較的ぬるめの41度。これは気持ちがいい!

白濁した温泉の泉質は酸性の硫黄泉、さらさらとした肌触りで、酸っぱい味がします。硫黄のにおいは強くないですね。

お客さんに話を聞くと、この温泉に浸かると慢性的な体の痛みがやわらいだ気がするとのことです

打たせ湯「湯瀧」

続いて、打たせ湯の「湯瀧(ゆたき)」。落ちてくる湯量は少なめで、痛みはまったくありません。目に入る飛沫の方が痛いくらいです。

宿おすすめの「打たせポイント」は、ツボが密集している足の裏と、第2の心臓といわれるふくらはぎ。

ちなみに、利用後は必ず椅子を片付けましょう。湯瀧が延々と椅子を打ちつけ、浴場中にビートを響かせることになります。

四分六分の湯

奥の大きな湯船が「四分六分(しぶろくぶ)の湯」。温度は43度と少し高めです。「四分六分」なのに「熱の湯」より温度が高いのはなぜ?

熱の湯は入浴後もポカポカが持続し、四分六分はその持続具合が46分くらいの温まり具合ということが名前の由来なのです。

ちなみにフロントの方は、四分六分の湯を「シブロク」と呼んでいました。「シブロクがね……」なんて常連ぶってみたいですね。

玉の湯

ヒバ千人風呂の女性専用時間は8:009:0020:0021:00で、それ以外は混浴です。販売している女性用の湯浴(ゆあ)み着でも入浴できますが、それでも混浴に抵抗がある方もいると思います。

でも、安心してください、男女別の浴場「玉の湯」があります。源泉はヒバ千人風呂の熱の湯とは異なりますが、ほぼ同様の、酸性の硫黄泉を楽しむことができます。

「山の素朴メシ」がうまい!

ひとしきり温泉を楽しんだあとは、温泉旅行のお楽しみ、夕食!

夕食

山の幸を中心に、青森の郷土料理が並びます。

よく見てみると、肉がほとんどない! サラダにのっている鶏肉、鍋の鶏肉、そして刺身……。若い人には物足りないのでは?

たらの芽の胡麻和え

そんな肉への思いを断ったのは、まったく対照的な味の山菜料理でした。実は私は山菜が苦手です。だって苦みがあるから。

でもここの山菜は、おいしい部分だけを感じられるように味付けされています。味が濃いわけではないのに、ご飯が進む……! うまい!

写真は、たらの芽の胡麻和え。ほかにも、わらびのしそ漬けをいただきました。山菜のイメージが、170度くらい変わった!

せんべい汁

そして鍋料理の「せんべい汁」。専用の南部煎餅を鍋に入れていただきます。

汁が少なめ(煮すぎた?)で煎餅の浸り具合にばらつきが出てしまいましたが、結果としてこれがよかった! 芯が残った煎餅も、完全にだしが染みた煎餅も、それぞれうまい。

これは鍋以外にも応用が利きそうだ……! お土産に購入しました。

広縁で晩酌

旅館の窓際スペース「広縁(ひろえん)」で一杯やるのが好きです。夕食後、本日2度目の風呂で温まった体には、ひんやりと涼しい広縁が最高に気持ちいいのです。

いただいたのは、刻一刻と風味、口触りが変わる、鳩正宗酒造「酸ヶ湯」の生貯蔵酒。そのお供に、自然な甘みの豆入り南部煎餅をチョイスしました。

窓の外は闇に包まれて何も見えない、しかしさらに目を凝らすと、自分の心の闇も見えてくるのだ……とかテキトーなことを考えながら酒を飲むわけですね。いい時間じゃあないですか! 東京では、そんな時間は持てないですよ!

朝食

翌日の朝食は6:458:30の間に、会場でのバイキング形式です。夕食と同様、山の味をうまく引き出した、ご飯のお供が並びます。

お粥

酸ヶ湯温泉に来てから、ずーっと感じていたことがあります。それは水がうまい! 山あいに流れる川を「清流」なんて呼びますよね。そんな清流をそのまま飲んでいるような、澄んだ水なんです。

その水で作ったお粥は、ぜひ食べていただきたい! 粘度が低く、すこしかみ応えを残したお米、その米の甘みが移った重湯がまたうまい! シンプルながら、非常にハイレベルなお粥でした。

酸ヶ湯温泉で学んだ、湯治に必要な4つのこと

宿の見送り

朝食を終え、8:50発の宿送迎バスに乗り込みます。

バスに乗り込むと、フロントの方に加え、看護師の畑田さんも見送ってくれている! みんなあったかい……! うう、帰りたくない!

あらためて思い返すと、良質な温泉が湧いていることに加えて、バランスのとれた健康的な食事、気持ちが落ち着く環境、そして人との出会いと交流。これらが湯治滞在には必須なのだなと感じました。

新幹線の中

そんなことを思いながら、帰りの新幹線でふと気づきました。服からほんのり硫黄のにおい、いや、酸ヶ湯温泉のにおいがする!

本当にいい時間だった! また行きたい! こうしてみなさんリピーターになっていくわけですね。

宿の廊下で

今回の滞在は、酸ヶ湯温泉のごくごく一部を体験したにすぎません。本来は33回り、長期滞在してこそ、体の変化を感じることができるはずなのです。

その神髄に身を委ねてみたい…。そんな思いに駆られた酸ヶ湯温泉の12日でした。

観光旅行とは違う「休む」温泉を酸ヶ湯温泉で体験してみてください!

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