県外不出の日本酒を求めて…ツレヅレハナコの秋田グルメ旅 東北

【ツレヅレハナコの酒&グルメ旅】絶対に外さない秋田の名店酒場へ

2018.09.28 東北秋田

寝ても覚めても、おいしい料理とお酒のことばかり考えている編集者・ツレヅレハナコさんによる「東日本のおいしいお酒と食べ物探しの旅」全5回の連載がスタート! 初回は、きりたんぽや稲庭うどんなど、人気の名物料理で知られる秋田県へ。国内有数の日本酒消費量を誇る一大酒どころエリアでもあります。秋田が大好きで何度も訪れているというツレヅレハナコさんいわく、「秋田は角館や大館が有名だけれど、実は秋田市内にもおいしい店がたくさんあるんですよ!」。ハナコさんイチ押しの「秋田駅周辺で楽しめる、飲みだおれ・食いだおれツアー」へゴー!


【行程】


秋田駅から5分!買った魚介と酒で市場飲み

JR東京駅から秋田新幹線こまちに乗って約4時間。秋田県の入り口、JR秋田駅に到着! 駅を出て5分ほどのところに、秋田市民の台所「秋田市民市場」があります。

秋田市民市場

大きな看板が目印です!

私は毎年秋田に来ていますが、必ず立ち寄る必須スポット。なぜなら魚介、野菜、果物など秋田の豊かな食材が並び、見ているだけで楽しい! 季節ごとに品ぞろえも変わるので、「今はこの食材が旬なんだなあ」と、目で見て実感できるのです。

秋田市民市場

広々とした場内に、お店がびっしり!

昔は風情のある板張りの床だったそうで、その時代も見てみたかったなあと思いつつ、場内をうろうろ……。知らない食材があったら、お店の人に聞くと、親切に教えてくれますよ!

秋田市民市場 場内

男鹿産の鯛もあがってますねー!

新鮮な食材を見ていれば、食べたくなるのは当然のこと。この市場には無料のイートインスペースがいくつもあり、場内で買った食材を持ち込んでOKなのです。きゃー、そりゃもう買うしかない! 

火を通さなくてはいけないものは難しいけれど、刺し身や海藻などはその場でイケる! 量り売りのものは、少量でも購入できるのがうれしいですなー。刺し身のサク(切り身)を「この場で食べるので、刺し身にしてください」とお願いすれば、快く引き受けてくれます。お店によっては、箸やしょうゆ、ワサビまでつけてくれることも……。

秋田市民市場 日本酒

地元ならではの品ぞろえがさすが!

そして、忘れてならないのは日本酒! 場内には酒屋さんもあるのです。いぇーい! 県内でしか流通していない酒なども含めて、よりどりみどり……。私は「まんさくの花」の純米酒を買ってみました。

秋田市民市場 イートインスペース

ザ・宴会! プラカップも酒屋でいただきました!

さー、ひとり宴会スタート! つまみは、旬の生白魚、男鹿産の鯛の刺し身、海藻好きな秋田県民が愛するクロモ……ねばねばしていて、なんだか肝臓にも良さそう(?)。お酒はキリッと辛口で、海の幸との相性は抜群です。はー、こりゃ昼間っから最高だ……。

高清水醸造元で、昔ながらの酒造り道具を拝見!

高清水 蔵

おいでませ、高清水!

ほろ酔いになったところで、秋田駅からタクシーで約15分、今度はお酒の蔵見学へ。多くの蔵がある秋田ですが、今回は市内に蔵を構える「高清水醸造元」におじゃましました。

高清水醸造元

素材は変われど、用途は変わっていないものが多いそう

事前に予約した、指定の時間に伺うと、担当者が蔵内を案内してくれます。古い蔵の梁や柱を残して改築した「仙人蔵」には、歴代の酒造りの道具なども展示してあって楽しい! 

高清水醸造元は、1944年に秋田県内の24の蔵が合併してできた酒蔵。そのうち、最も古い蔵は1656年からあったというから驚き……。高清水というネーミングは、合併後に公募で募集して決まったブランド名なのだそう。

もちろん、お楽しみの試飲スペースも! 売店を兼ねた建物へ移動し、さっそくいただきまーす。

高清水醸造元  試飲機器

きゃー。家に一台欲しいぞ…

カウンターに並ぶのは、ハイテクな試飲機器。ボタンを押せば好きなだけ出てくるとか、なんですかその飲んべえにとって夢のマシーンは……(もちろん試飲は適量でね!)。いまはやりのフルーティーな飲み口のものも人気ですが、昔ながらのどっしりしたお酒も、年配の方には好評なのだそう。確かに秋田の人と話していると、根っからのお酒好きが多そうだもんなあ。

カウンター

私が気に入ったのは、「高清水」の蔵付き酵母仕込みの純米大吟醸。さすが大吟醸は迫力のある飲み口で、華やかな香りがすっと鼻に抜けていきます。「これおいしいですね~」と、カウンター担当のお酒好き女性社員と盛り上がることしばし……。ちなみに、こちらの蔵には秋田独自の「山内杜氏組合」で、杜氏資格の試験に女性初で合格された方もいらっしゃるので、運が良ければお話を聞けるかも?

秋田屈指の名酒場・永楽食堂

日も暮れてきたので、いよいよ本格的に飲んでもいい時間! こちらも秋田に来たなら必ず伺う「永楽食堂」へ向かいます。秋田駅から徒歩5分ほどの立地にあるので、新幹線に乗る前なんかもおすすめ。

永楽食堂

この赤い看板に吸い寄せられます……

店名に「食堂」と付いてはいますが、都内にも名をとどろかせる有名店。その理由は、店に入ればすぐにわかるはず。見よ、この壁一面の魅惑のラインナップ!

永楽食堂 メニュー

携帯の待ち受けにしたいほどすばらしい…

日本酒好きの人なら、「マジでメニューをつまみに飲める」というほど充実した品ぞろえがすばらしい……。私はいつもひとり飲みなので、もちろんうっとり眺めながら飲んでおります。ちなみに真ん中から右半分(秋田弁で「おらえ」)は秋田の蔵で、左半分(秋田弁で「あだえ」)は全国の蔵。

永楽食堂

手作りのお総菜がズラリ壮観!

そして、さらにすばらしいのが自家製のおつまみたち! このカウンターの上の大皿、ビジュアルがもうたまらん……。涎
お通しは、とろろ昆布と薬味がのった温やっこに、わかめと白魚刺し。すでに日本酒に合う予感しかない! 迷った末に1杯目は「雪の茅舎」の「美酒の設計」を。これ大好きなのですが、なかなか東京で飲めないのですよ……。芳醇でフレッシュな香りに、テンション上がるわー!

永楽食堂 メニュー

「おいしそうな字」ってあるんだよな~。

カウンターの上のおつまみを直接見に行ってもいいけれど、黒板メニューには生ものなども書いてあるのでチェックを忘れずに。余談ですが、見るたびに「堂々とした、いい字だなあ」と思っちゃう。

納豆ちくわ揚げ

ちくわの磯辺揚げを超える名作!

お願いしたのは「納豆ちくわ揚げ」! 意外な組み合わせですが、これ本当においしいのです。プリプリのちくわの穴にぎっしりと納豆を詰め、海苔で巻いてからサクサクの天ぷらに。たっぷりの長ねぎと大根おろしを添えていただくと、日本酒も進むわー。

永楽食堂 女将さん

何でも答えてくれる女将さん!

店の誰よりも日本酒に詳しい女将さんが登場! おすすめを聞くと、愛のある解説でやさしく教えてくれるので、ビギナーさんでもご安心を。今日は「阿櫻(あざくら)の生詰め原酒はどう? 等級規格外のお米だから純米だとかの特定名称は名乗れないけど、そのぶんお値段も1杯500円とお手ごろ。なにより本当においしいから飲んでみて!」ええ、もちろん飲みますとも……そして、ホントだー! しっかりとした飲み口で、香りもバッチリ! 普通酒扱いでも、こんなお酒があるのねえ。

ワタリガニ

ちゃんと食べやすい状態で出てきます

気になっていた「ワタリガニ」。一杯950円と、この店では高級なおつまみですが、カニを独り占めの夢……ここなら叶います! 甘い身がぎっしり詰まっていて、ひたすらホジホジしつつ、お酒をごくり。あー、楽しすぎる。

やまとしずく

激レアの日本酒だらけでマヒしてくる品ぞろえ!

「うちにあるのも、これで最後の一本! 一杯分ないんだけど、飲んでみる?」と勧められた「やまとしずく」の純米吟醸生原酒「ヤマトルネード」。わー、これも東京では全然お目にかかれないやつ! やや甘口で、このタイミングにぴったりのお酒だなあ。はー、やはり日本酒は現地に来なくちゃだわー!

繁華街・川反で郷土料理を堪能!

すでに結構飲んではいるのですが、ここまで来たなら、秋田が誇る繁華街・川反(かわばた)へ行かねばなりません(誰も強要してないけど)。駅からは少し離れていて、川に架かった橋を渡れば、そこはめくるめく飲み屋の数々!

秋田の食材が大好きなので、季節ごとのおつまみを楽しみに伺っているのが郷土料理「ちゃわん屋」。通り一遍の郷土料理ではなくて、本当においしいものを食べさせたいという気持ちが伝わってくる、家庭的なお店です。

ちゃわん屋 メニュー

こちらのメニューも、文字がすばらしい!

ちゃわん屋 お通し

秋田の食材がふんだんに使われる、お通しのお豆腐と一品料理のじゅんさい

お通しは、プチプチとした食感のとんぶりがのったお豆腐。夏は冷や冬は温めて出していただけるそう。そして、秋田といえば旬のじゅんさい!

日本酒

秋田人は淡麗辛口がお好みみたいです!

やっぱり秋田のお酒をまだまだ飲みたい! というわけで、「飛良泉(ひらいずみ)」の山廃純米から。きりりと淡麗辛口で、快い酸味が効いている。これは魚にも肉にも合いそう……。

きりたんぽ&だまこ餅鍋

真冬にも食べたい、アツアツのきりたんぽ&だまこ餅鍋!

ちょっと肌寒くなってきたので、季節は早めですが鍋ものを。きりたんぽorだまこ餅かで迷っていたら「半々もできますよー」とのことなので、ミックスにしてもらいました。ちなみにだまこ餅とは、きりたんぽと同じように、ごはんをついて丸めたものですが、こちらのだまこ餅はエビのすり身が入ったオリジナル!きりたんぽと違ってあぶらないので真っ白です。

比内地鶏のしょうゆ味スープに、鶏肉ときのことセリ。そして、うまみを吸ったモチモチのきりたんぽとだまこ餅。あー、これぞ秋田の味だ! この時間だし、今夜のシメごはんにモリモリいただいちゃうぞー。

ぶりこ

プチプチのぶりこだけで酒の肴に!

秋田を代表する魚といえばハタハタ。こちらでは、旬の時季の一瞬しか出回らないぶりこ(卵)がたっぷり詰まったハタハタを冷凍保存しておき、しょうゆ漬けにして焼いているとのこと。むー、このプチプチが、くせになるのよね~。

ハタハタ寿司

名人が作ったハタハタ寿司が絶品!

うまいうまいと食べていると、「ハタハタの子持ち寿司は食べたことある?」と女将さん。お寿司といってもにぎり寿司などではなく、昔ながらのこうじ漬け。「名人が、うちのために作ってくれているのよ。一尾丸ごと漬けているのは珍しいから、食べてみて」って、根が素直な人間なので、すぐ食べます!

なるほど、これがハタハタ寿司! こうじで作った「飯(いい)」がねっとりとのせられ、これだけでもお酒が飲めそう……。こうじの力でうまみを増した身にまろやかな酸味が加わり、ぶりこもねっとり。確かにこれは食べるべき!

はー、飲んだ食べた。気づけば夜もかなり更けていて、夜風にあたりながら散歩気分で今夜の宿へ。定宿のホテル「ドーミーイン秋田」に戻ったころには眠気もマックスで、ベッドに即ダイブしたのでした。

酒、味噌、醤油。小玉醸造で地元の味を知る

2日目は秋田駅から奥羽本線に約23分乗車し、JR羽後飯塚駅へ。そこから7分ほど歩いて「小玉醸造」を目指します。

小玉醸造

秋田でもかなり有名なキャッチコピー!

秋田っ子なら誰もが知っているキャッチコピー「酒は天下の太平山」の「太平山」を扱う老舗蔵。蔵案内があるそうなので、午前11時の回を予約しておきました。

案内が始まり、最初の蔵へ。私はすっかり「日本酒の蔵」と思い込んでいたのですが、なんだか別のいい香りがするような? すると、担当者が「こちらは味噌蔵です」。えー!

なんと秋田県内のシェア5割を誇る、明治12年創業の味噌メーカー。「もとは味噌と醤油を造っていた蔵だったんですよ。日本酒は、そのあとです」。そうだったのか……。

醤油蔵

まだ醤油の気配はないビジュアルですが、いい香り~!

さらに、醤油蔵を見せていただいた。桶の中の黒くてどろどろしたものが、熟成中のお醤油! 「この蔵はとても古いのですが、ここにしかいない、特別な蔵付きの菌がすみついています。だから、同じ材料をほかの蔵で熟成させても、同じ味にはなりません。秋田杉の桶も、もう職人さんがいないので大切に扱っています」。なんとも歴史を感じさせるお話!

工場の地図

地図を見ながら工場の説明をしてもらうと、広大な面積のうち半分が味噌と醤油。残りの半分が日本酒。それぞれデリケートな菌なので、太い道路で分けてあるのだそう。へー、なるほど面白い。

日本酒 蔵

一升瓶5500本分のお酒か~とニヤニヤ…

日本酒の仕込み時期ではなかったので、タンクだけを見せていただくことに。このタンクひとつで、一升瓶5500本分! 仕込み水は地元の井戸水のほか、白神山地や男鹿など秋田の名水と呼ばれる水を使っています。

試飲売店では、お酒はもちろん、味噌を使った味噌汁の試飲も! 昨日飲みすぎた五臓六腑に染み渡るわ……。

市場で食べる、昔ながらの絶品中華そば

羽後飯塚駅

真新しくて、かわいい駅だな~

味噌汁を飲んでいたらおなかがすいてきたので、秋田駅まで戻ることに。お昼ごはんにぴったりのお店があるのです。
戻ってきたのは、初日に行った秋田市民市場。この場内にあるのが、「支那そば 伊藤」!

支那そば 伊藤 ラーメン

丼の底が見えそうな透明度!

昔ながらのシンプルな中華そばで、こちらも秋田に来たなら絶対に食べるべき一品。煮干しやかつおの濃厚なうまみたっぷりの澄み切った魚介スープは、全部飲み干してしまいそうなほど。かんすいを使わずに練り上げて低温熟成させる自家製細麺も、最高においしい! チャーシューやメンマも自家製だそうで、しみじみ丁寧な作りだなあと毎回感動します。なぜか麩がのっているのも好き。

新幹線に乗る前に、駅ビルでお土産を調達!

駅まではすぐですが、そのまま新幹線に乗ってはいけません。駅ビル「トピコ」の1階では、秋田食材が買えるのです!

トピコ 野菜

新鮮な野菜もモリモリあります

ここでは地元野菜や漬物、そして稲庭うどんをたんまり仕入れて帰京。自宅に帰ってからも、秋田の余韻にひたるのが私の定番です。今回は買ってきたなすを揚げびたしにして、そうめんといただきました。とろける口当たりで最高!

そうめん

みょうがも秋田で買ったもの!

秋田駅は秋田の玄関口なので素通りしがちですが、見どころ食べどころも盛りだくさん! ぜひ胃腸と肝臓を準備万端にして、秋田市内の魅力をめぐってみてくださいねー。

【全5回 連載】ツレヅレハナコの酒とグルメ旅

第1回:絶対に外さない秋田の名店酒場へ
第2回:庄内野菜と旨い酒を、ツレヅレハナコがご案内!
第3回:金目鯛&地酒…ツレヅレハナコ流伊豆の楽しみ方
第4回:【群馬グルメ旅】下仁田ネギの洋食&豚肉すき焼きに大満足!
第5回:【松本グルメ旅】そば屋呑み&クラフトビール&ウイスキー蒸留所を満喫

スポット情報

永楽食堂

住所:秋田県秋田市中通4‐11‐10
営業時間:17:00~24:00
定休日:日・祝

今回の旅の行程

【1日目】JR東京駅→JR秋田駅→秋田市民市場→高清水醸造元→永楽食堂→ちゃわん屋→ドーミーイン秋田

【2日目】JR秋田駅→JR羽後飯塚駅→小玉醸造→支那そば 伊藤→トピコ→JR秋田駅→JR東京駅

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この記事を書いた人

ツレヅレハナコ

寝てもさめても、おいしいものとお酒のことばかり考えている編集者。著書『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)、『ツレヅレハナコのじぶん弁当』(小学館)、『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』(PHP研究所)。
Instagram:https://www.instagram.com/turehana1/
ツレヅレハナコ blog ver.:http://turehana.exblog.jp/ 

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